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コンセプチュアルスキルの高め方とは? 構成要素一覧も紹介

2024年4月 4日更新

コンセプチュアルスキルの高め方とは? 構成要素一覧も紹介

コンセプチュアルスキルは、論理的思考や水平思考などの能力であり、ビジネスの世界で必要不可欠なすべての従業員が磨くべきスキルです。本記事では、コンセプチュアルスキルの効果的な高め方、高い人の特徴、構成する要素の一覧についてご紹介します。

INDEX

コンセプチュアルスキルとは?

何が正しく何が間違っているのかを見極めたり、複数ある選択肢の中から最適なものを見抜いたり、あるいは複雑な問題の中から真の解決策を導き出したりする能力のことを、コンセプチュアルスキルといいます。これは、ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・カッツ教授が提唱したカッツモデル(※1)を構成する要素の一つであり、特に管理職に求められるビジネススキルとされています。私たち日本人には「目利き力」と表現したほうが馴染みやすいかもしれません。

管理職の仕事において考えてみると、ビジョンを策定し、それと現状とのギャップを分析して、ビジョン実現のためにどのような課題があり、どう解決するのかを考える――そんな場面で特に必要になります。コンセプチュアルスキルがあれば、答えのない問題に直面しても理論的・創造的に考え、周りが納得する答えを導き出せます。変化の激しい経営環境のなかで組織が生き残っていくために、特に重要性が増しているスキルといえるでしょう。

※1 ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・カッツ教授が提唱している「組織内の職務遂行において重要なビジネススキル」のことで、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルを図式化したもの

カッツモデルと3つのビジネススキル

コンセプチュアルスキルはカッツモデルを構成する要素の一つです。そこで、まず、カッツモデルの各要素、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルをご紹介しましょう。

カッツモデル

テクニカルスキル

業務遂行能力といわれるテクニカルスキルは、業務を遂行する上で必要な専門知識や業務を処理する能力のことです。業界や業種によって求められる知識や業務はそれぞれ異なります。
ただ共通して必要なものとして、商品知識・市場理解・情報収集力・分析力・文書作成能力・マネジメント能力などが挙げられるでしょう。管理職には、こうした汎用スキルに加え、担当分野の専門的なスキルを身につけて、正確で合理的な業務処理を行うことが求められます。

ヒューマンスキル

対人関係能力といわれるヒューマンスキル。組織の目標達成のために周囲と良好な関係を築き、円滑にコミュニケーションをとる能力のことをいいます。
具体的には、交渉術・共感力・プレゼンテーション力・論理的思考などが挙げられます。経営層や管理職だけでなく、ビジネスパーソン全体に求められる能力といえるでしょう。

コンセプチュアルスキル

概念化能力といわれるコンセプチュアルスキル。これまで培った知識や経験、習得した情報を組み合わせ、物事の本質を把握・分析する能力です。先天的な要素も強く、地頭の良さと考えられることもあります。
組織の中で上位階層に上がるほど重要性が増し、特に会社経営の舵を取る経営層には欠かせない能力であるといわれます。リーダーが組織を間違った方向へ導かないためにコンセプチュアルスキルを高める必要に迫られていることは、至極当然のことと言えるでしょう。訓練をしてすぐに身につけられるものではないことから、入社年度の浅い段階で、自らのコンセプチュアルスキルを把握し、鍛えることが重要ともいえます。

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コンセプチュアルスキルを構成する要素一覧

物事の本質を見極めるコンセプチュアルスキルは、管理職にとって欠かせない能力です。しかし、自分にコンセプチュアルスキルがどの程度身についているのか、見極めるのは簡単ではありません。そこで、コンセプチュアルスキルを構成する要素を一覧でご紹介します。まずは、具体的な構成要素の内容を把握し、社員のレベルを一つひとつ確認していくといいでしょう。

コンセプチュアルスキルを構成する要素一覧

1.論理的思考(ロジカルシンキング)

論理的思考(ロジカルシンキング)とは、物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法のことです。ビジネスでは一つの案件に多くの人が関わっているため、複雑な要因が絡まって問題が発生することも少なくありません。論理的思考を身につけていると、筋道だった合理的な考え方で原因を追究し、解決に向けて動き出すことができます。毎日が課題解決の連続である管理職には、欠かせない能力の一つといえるでしょう。

2.水平思考(ラテラルシンキング)

既成の論理や概念にとらわれずに、視点を変えて自由にアイデアを生み出す方法を、水平思考(ラテラルシンキング)といいます。社会全体が絶えず変化していくなかにあって、前例や既成概念にとらわれてしまうと、新たな商品やサービスを生み出すのは困難です。現状を打破するためには、ラテラルシンキングを使った斬新なアイデアが必要になってくるのです。ラテラルシンキングと ロジカルシンキングは相互補完の関係にあります。

3.批判的思考(クリティカルシンキング)

自分の考えや意見に客観性を持たせ、感情や主観に流されずに物事を判断しようする思考プロセスです。消費者の価値観が多様化するなか、たとえば物づくりにおいても、これまで正しいと考えられてきた価値基準が時代に適合しなくなっているという事例は数えきれません。だからこそ「なぜこうなっているのか」「これは本当に正しいのか」といった疑問を持ち、課題解決に取り組んでいくことが求められているのです。

4.多面的視野

多面的視野とは、物事を一つの角度からではなく、さまざまな角度から捉える能力を指します。この能力を高めるためには、一つの問題に対して、異なる視点や考え方を適用し、多角的に分析することが重要です。

多面的視野を持つことで、問題の本質を見抜き、創造的な解決策を生み出せます。また、多様な意見を取り入れ、柔軟な思考を持つことで、幅広い視野で変化する環境にも適応しやすくなるでしょう。

リーダーには、狭い視野にとらわれず、広い視野を持ち、物事を多面的に捉える能力が求められます。この能力は、変化し続ける現代のビジネス環境においてとくに重要です。

5.柔軟性

柔軟性は、変化する状況や予期せぬ問題に適応し、迅速かつ効果的に対応する能力を指します。リーダーは、固定観念にとらわれず、柔軟な思考を持つことが重要です。

創造的な解決策を見出せるリーダーは、状況に応じて方針を変更したり、チームメンバーの意見に耳を傾けて異なる視点から物事を見たりすることで、組織の成功に大きく貢献します。また、柔軟性を持つリーダーは、変化の激しい環境下でも適応力が高く、チームを適切に導くことが可能です。柔軟性は、リーダーにとって必要不可欠なスキルの一つであるといえるでしょう。

6.受容性

受容性とは、他者の意見や提案に対してオープンマインドで耳を傾け、柔軟に受け入れる能力です。このスキルは、チーム内の多様性を尊重し、異なるバックグラウンドや考え方を持つ人々と効果的に協働するために不可欠といえるでしょう。

多様な視点や考え方を受け入れることで、問題解決やアイデア創出の幅が広がります。また、受容性の高さは、チームメンバーとの信頼関係の構築にも役立つでしょう。このスキルを高めることで、リーダーやチームメンバーとしての効果が向上し、より包括的で協力的な環境を促進できます。

7.知的好奇心

知的好奇心とは、未知のものや新しい情報に対して興味を持ち、探求しようとする能力のことです。この特性は、問題解決や意思決定において重要な役割を果たします。

知的好奇心が高い人は、常に新しい知識を吸収し、自らの視野を広げようとするでしょう。また、複雑な問題に直面した際にも、粘り強く解決策を模索し、創造的なアプローチを試みます。

知的好奇心は、変化に適応し、イノベーションを生み出すための原動力です。コンセプチュアルスキルを高めるためには、知的好奇心を持ち続け、自己学習を継続することが不可欠といえるでしょう。

8.探究心

探究心とは、物事の本質を探り、深く理解しようとする能力のことです。このスキルは、問題解決やイノベーションを推進する上で不可欠であり、既存の枠組みにとらわれず、常に新しい知識や洞察を探求しようとする姿勢が求められます。常に疑問を持ち、それに対する答えを求めて行動することが重要です。

また、探究心は、自己の成長につながるだけでなく、組織全体のイノベーションを促進する原動力にもなります。リーダーは、自らの探究心を示すとともに、部下の探究心を引き出し、支援することが求められるでしょう。

9.応用力

応用力とは、習得した知識やスキルを新しい状況や問題で活用し、問題解決に役立てる能力です。物事の本質を捉え、状況に合わせて柔軟に対応することが求められます。異なる分野の知見を結びつけ、新たな価値を生み出すことも応用力の一つです。

変化の激しい現代社会において、応用力は欠かせないスキルといえるでしょう。課題に直面した際、既存の枠組みにとらわれず、創造的な思考を働かせることが重要です。過去の経験や学びを積極的に活用し、ユニークな解決策を導き出す姿勢が応用力を高めます。

10.直感力

直感力とは、論理的思考だけでは得られない洞察を瞬時に得る能力です。直感力は、論理的思考だけでは解決できない複雑な問題に対処する際にとくに価値があります。

直感のある人は、経験や知識に基づいて、一見関連性のない事柄からパターンや関連性を認識し、突発的なアイデアを生み出すことが可能です。ただし、直感だけに頼るのではなく、論理的思考とのバランスを保つようにしましょう。直感力を磨くには、多様な経験を積み、異なる分野の知識を吸収し、柔軟な思考を心がける必要があります。

11.洞察力

洞察力とは、物事の本質を見抜く能力のことを指します。また、将来起こりうる事態を予測し、先を見据えた判断を下すことも洞察力の一つです。

複雑な問題に直面した際、さまざまな角度から分析し、根本的な課題を特定する力が求められます。表面的な現象だけでなく、背景にある原因や関連性を理解することが重要です。

洞察力の高い人は、複雑な問題を解決する際に、隠れた要因や将来の可能性を予測できます。また、新しいアイデアや革新的な解決策を生み出す際にも、この能力は極めて重要です。洞察力を磨くには、幅広い知識の習得、多角的な思考、そして経験からの学びが大切だといえるでしょう。

12.俯瞰力

俯瞰力とは、物事を広い視野で捉え、全体像を理解する能力のことを指します。個々の要素だけでなく、全体像を把握し、関連性や因果関係を理解することが重要です。

俯瞰力を持つことで、問題の本質を見抜き、適切な意思決定を下せます。また、複雑な状況下でも冷静に状況を分析し、優先順位を判断することが可能です。

俯瞰力を持つ人は、細部にとらわれず、大局的な視点から物事を考察できるため、効率的な意思決定や問題解決もできます。リーダーには、俯瞰力を持ち、チームをまとめ、目標に向かって導くことが求められるでしょう。

13.チャレンジ精神

チャレンジ精神とは、困難な課題や道の状況に対して、恐れずに立ち向かう能力を指します。チャレンジ精神を身につけるには、未知の領域に踏み込み、リスクを恐れずに新たな可能性に挑戦することが重要です。失敗を恐れず、困難な状況をポジティブに捉え、創造的な解決策を見出す姿勢が求められます。

また、自己の限界を押し広げ、常に成長と学びを求める姿勢も不可欠です。チャレンジ精神を発揮することで、イノベーションを生み出し、自己実現を図れるでしょう。また、チャレンジ精神は、困難に直面した際の回復力や柔軟性を高め、成功への道を切り開く力となります。

14.先見性

先見性とは、将来起こりうる変化や機会を予測し、それに備えて適切な戦略を立てる能力です。先見性のあるリーダーは、業界の動向や技術の進歩、社会情勢の変化などを注意深く観察し、自社の強みを生かして将来の脅威に対処するための計画を立てます。

また、新たな市場やビジネスチャンスを見出し、イノベーションを促進することで、組織の長期的な成長と発展を導くことも可能です。先見性は、不確実性の高い現代のビジネス環境において、リーダーに求められる重要なスキルの一つといえるでしょう。

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コンセプチュアルスキルがある人の特徴

部下とリーダー

コンセプチュアルスキルがある人には、共通点があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

良好な人間関係を構築できる

コンセプチュアルスキルがある人は、周囲と良好な人間関係を築けます。なぜなら、コミュニケーションにおいて、相手の言葉を表面的に受け取るのではなく、相手の立場や心理をよみとり、その意味するところを正しく受け取ることができるからです。相手は「正しく理解してもらえた」と感じることができます。たとえば相手が部下であれば信頼関係を深めることにつながり、チームの結束を高めることができます。

簡潔に分かりやすく伝えられる

コンセプチュアルスキルがある人は、相手が理解しやすいように要点を簡潔にまとめて話します。ロジカルシンキングができることから、順序だててわかりやすく説明することも得意です。会議などでは、一目置かれる存在になることが珍しくありません。

生産性の高い仕事ができる

たとえば、上司から仕事の指示があった場合、なぜこの仕事が必要なのか、どういうふうにすれば上司の役に立つのか、仕事の意味や目的を自ら考えて対処する特徴があります。上司の意図を理解して業務を進めるので、期待される以上の成果を出せることが多いといえます。また、仕事のやり方について、自分なりの改善を加えられる人も多いです。その結果、生産性の高い仕事ができて、大きな成果を挙げられます。

自由な発想でアイデアを思いつける

コンセプチュアルスキルがある人は、固定概念にとらわれず自由な発想ができます。また、多様な視点から物事を考えることができます。異なる価値観や考え方、意見を受け入れる器があるので、それらを組み合わせて新しいアイデアを生み出せるでしょう。
チャレンジ精神が旺盛なことから、早く行動を起こせます。探究心をもって前向きに試行錯誤を繰り返し、今までにない商品やサービスを生み出すことにも長けているでしょう。こうした能力から企業の業容拡大に大きく貢献できます。

管理職のコンセプチュアルスキル向上で得られる効果

コンセプチュアルスキルがある人が管理職やプロジェクトリーダーになることで、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。得られる効果を見てみましょう。

全体像を捉え、進むべき方向性を示せる

コンセプチュアルスキルを身につけると、業務における全体像を把握できるようになります。目標を達成するために進むべき方向性も定まるので、リーダーシップを発揮できるでしょう。また、仕事全体を俯瞰的に把握し、体系的にとらえることができるので、業務指示も的確に出すことができます。
ビジョンを策定してチームの方向性を示したり、組織に浸透させたりといったプロセスは、管理職やプロジェクトリーダーに欠かせません。コンセプチュアルスキルを高めることが、チーム力の向上にもつながっていきます。

課題解決ができるようになる

仕事は問題解決の連続といっても間違いないでしょう。一つひとつの課題を解決しなければ、前に進むことはできません。コンセプチュアルスキルが低いと、問題の本質をとらえることが難しく、本質的な課題解決ができないため、負のループから抜け出せなくなるケースもあります。
逆にコンセプチュアルスキルを高められると、課題解決を繰り返しながら、組織として成果を出し続けることができます。そういう意味で、プロジェクトリーダーには必須の要素であるといえるでしょう。

部下のパフォーマンス向上が図れる

部下のパフォーマンス向上には、上司のコンセプチュアルスキルが必要不可欠といえるでしょう。コンセプチュアルスキルが高まると、チームのミッションやビジョンを、部下のレベルにあわせて分かりやすく伝えることができます。部下一人ひとりが目的意識を持ち、高い意欲で業務に取り組むことで、高いパフォーマンスが発揮できるため、組織としての成果も高まります。また、そうしてチーム力が向上すると、メンバー間での認識のずれや、ミスの軽減にもつながります。

新しいビジネスモデルを構築できる

コンセプチュアルスキルが低い人は、昔の成功や考え方に固執してしまうことも少なくありません。しかし、今の時代、昔成功した事例が、そのまま通用するとは限らず、守りの姿勢になると、新しいビジネスも生まれません。
既成概念を捨てて、広い視野で物を考え、周りの新しいアイデアを受け入れられる能力を養うことで、新しいビジネスモデルを構築できる可能性が高まります。

コンセプチュアルスキルの高め方・鍛え方

リーダー

コンセプチュアルスキルは、組織の中で上位のマネジメント層になるほど求められるスキルとされます。しかし、社会の変化が速い時代にあっては、ローワーマネジメントである係長や課長クラスにも、現場からのアイデア立案や実行力が強く求められます。組織全体の底上げを図り、生産性を向上させるためにも、早い段階でコンセプチュアルスキルを高めておくことが求められているのです。
では、どうすればコンセプチュアルスキルを高めることができるでしょうか。先天的な要素(地頭の良さ)が強く、短期的に伸ばすのは難しいという点には注意が必要ですが、逆に、日々の取り組みや習慣で少しずつ鍛え、高めていくことができることを念頭においておきましょう。

物事の本質を考える習慣をつける

繰り返しになりますが、コンセプチュアルスキルは、一言で言うと「物事の本質を見極める力」です。これは、目的を考えることを習慣づけることで鍛えられます。
若手社員であれば、まずは「上司に指示された業務の目的は?」「なぜ今、この作業が必要なのか?」など、日常業務について目的を考える癖を身につけさせるといいでしょう。日頃から考える癖を身につけることで、物事の本質を見極める力が鍛えられます。

自分の行動や言動を深く内省する

その道のプロと言われ「目利き力」をもっている人たちの行動・思考パターンを分析してみると、彼らが豊富な体験から学びを引き出していることがわかります。たとえばベテランの医師は、短時間の問診で患者の状況を把握し、即座に処方箋を出します。こうした離れ業ができるのは、過去に数多くの症例に接してきた体験の積み重ねが、医師としての目利き力を高めているからです。こうした目利き力を高める理屈は医療以外の分野でも通じるものです。

しかし、ここで留意すべきは「体験しっ放し」にしないということです。体験には自分にとっての学びがたくさん埋め込まれていますが、見たり聞いたりするその瞬間には気付かないことが多いもの。従って、学びを引き出すためには「内省」によって体験を振り返る作業が求められるのです。内省とは、自分の考えや行動などを深く省みる行為のことであり、「反省」と同義の概念です。そして、実業界で成功した経営者たちの多くは、異口同音に内省の重要性について言及しています。

  • 「今日一日をふりかえり、失敗や成功を見出し、その味をかみしめる。これが体験である。反省することなしにポカンと暮らしてしまえば、これは体験にならない」
    松下幸之助(『物の見方 考え方』PHP研究所)
  • 「つねに内省せよ。人格を磨くことを忘れるな」
    稲盛和夫(『生き方』サンマーク出版)
  • 「リーダーの行動を考えるときには、むしろ立ち止まることも重要なことだと思っています。」
    元・スターバックスコーヒージャパン株式会社 CEO 岩田松雄氏(『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』サンマーク出版)

内省を通じて、自分の取った行動とその結果を振り返り、「なぜ、うまくいったのか(いかなかったのか)?」「そこから何を感じたのか?」などを自分の頭のなかで反芻・整理することで、新たな気づきや学びが引き出され、持論が形成されます。その過程が、コンセプチュアルスキルを鍛えることにつながるのです。

研修やトレーニングに参加する

コンセプチュアルスキルを独力で身につけるのは難しいと考える人もいるでしょう。そんな場合には、研修を受講するという方法があります。
実際、管理職研修では、コンセプチュアルスキルについて学ぶカリキュラムをとり入れるケースが増えてきています。研修での受講者同士の交流が刺激となり、あるいは講師の話から気づきを得たことがきっかけで、コンセプチュアルスキルを高め、磨いていく意欲がわいてくることもあるでしょう。

部下への問いかけによる人材育成

部下や後輩のコンセプチュアルスキルを鍛えるには、状況に応じて問いを投げかけるのが効果的です。

「今回、成果を上げることができた要因は何だろう?」
「この失敗から何を学んだ?」
「この状況に対して、君ならどんな手を打つ?」
「3年後、どんなビジネスパーソンになりたい?」「それに対して現状はどう?」

継続的に問いかけられることによって、部下は徐々に成長します。なぜならば、内省モードに入って思考が深まり、より多くの学びや気づきを得られるからです。考える習慣が当たり前になれば、上司が問いかけなくても自分で考えられるようになるでしょう。

このように、管理職やリーダーの立場にある人は、自らのコンセプチュアルスキルを高めると同時に、部下の成長を促すために内省をサポートする役割を担っていることを理解する必要があります。

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コンセプチュアルスキルの具体的な育成手法

コンセプチュアルスキルは、すべての従業員が磨くべき重要なスキルです。コンセプチュアルスキルの具体的な育成手法には、以下の4つの方法があります。
  • eラーニング
  • OJT
  • Off-JT
  • 人事評価制度

上記のように、コンセプチュアルスキルを磨く方法は複数あるため、それぞれの特徴をしっかり理解することが重要だといえるでしょう。

eラーニング

eラーニングは、学習管理システム(LMS)を活用したもので、コンセプチュアルスキルの育成に効果的な手法の一つです。オンライン上で提供される学習コンテンツを通じて、時間や場所に制約されることなく、自分のペースで学習を進められます。

eラーニングでは、ケーススタディやシミュレーションなどの双方向型コンテンツを活用することで、概念的な理解を深めながら、実践的な問題解決能力を養うことが可能です。また、eラーニングは個人の学習進捗状況に合わせたカスタマイズが容易であり、個々のニーズに応じた学習プログラムを提供できるという利点があります。

OJT

OJTは、日常業務を通じてコンセプチュアルスキルを育成する効果的な方法です。対象者と近しい関係にある上司や先輩社員が、業務のなかで部下や後輩に対して、問題解決や意思決定のプロセスを示しながら指導することで、コンセプチュアルスキルを体系的に学べます。

OJTでは、実際の業務に即した形で、物事を全体的に捉える視点や複雑な問題に対する分析力、創造的な思考力を身につけていくことが可能です。また、OJTを通じて組織の目標や戦略を理解し自らの役割を認識することで、組織全体の視点から物事を考える力も養われます。

OFF-JT

OFF-JTは、職場を離れた場所で行われる教育訓練です。セミナーや講習会、ワークショップなどの形式で実施され、コンセプチュアルスキルの向上に役立ちます。

OFF-JTでは、業務とは異なる環境で新しい知識やスキルを学べ、他の参加者との交流を通じて視野を広げることも可能です。また、日常業務から離れることで、自分自身を客観的に見つめ直し、自己の強みや弱みを認識できます。OFF-JTで得た知識やスキルを実務に活かすことで、コンセプチュアルスキルの向上につなげることが重要です。

人事評価制度

人事評価制度は、コンセプチュアルスキルの育成に重要な役割を果たします。個人の業績だけでなく、論理的思考力や応用力なども評価基準に加えることで、従業員のコンセプチュアルスキル向上を促すことが可能です。

また、評価結果をフィードバックし、適切な指導やトレーニングを提供することで、さらなるスキル向上を図れます。人事評価制度を通じて、従業員のコンセプチュアルスキルを継続的に育成・向上させることが、組織全体の成長と発展につながるでしょう。

コンセプチュアルスキル育成のポイント

コンセプチュアルスキル育成のポイントは、次の2つです。
  • コンセプチュアルスキルの必要性について共有する
  • 階層別研修で必要なスキルを可視化する

上記2つのポイントを把握し、適切な育成戦略を策定して進めていきましょう。

コンセプチュアルスキルの必要性について共有する

コンセプチュアルスキルの必要性を組織内で共有することは、人材育成において重要なポイントです。まず、コンセプチュアルスキルの定義や、コンセプチュアルスキルが組織の成長や問題解決に不可欠であることを明確に伝えましょう。

具体的な事例を用いて、コンセプチュアルスキルがどのように役立つのかを示すことで、従業員の理解を深められます。また、コンセプチュアルスキルを身につけることが個人のキャリア開発にもつながることを強調し、学習意欲を高めることも効果的です。組織全体でコンセプチュアルスキルの必要性を共有し、育成に取り組む文化を作ることが、人材育成の第一歩となるでしょう。

階層別研修で必要なスキルを可視化する

コンセプチュアルスキルと一言でいっても、階層ごとに必要とされるスキルは異なります。階層別研修では、各階層に求められるスキルを明確にし、可視化することが重要です。

まず、組織の目標や戦略に沿って、各階層の役割を定義します。次に、その役割を果たすために必要なスキルを洗い出し、研修内容に盛り込みましょう。研修では、コンセプチュアルスキルを含む必要なスキルを具体的に説明し、実践的な演習を通じて習得を促します。先ほどご紹介した「コンセプチュアルスキルを構成する要素一覧」をもとに、各階層、職能ごとに具体的に落とし込んでいくとよいでしょう。

また、研修の効果を測定するために、スキル評価の仕組みを導入することも有効です。階層別研修を通じてスキルを可視化することで、社員のスキルアップと組織全体の人材育成を効果的に進められるでしょう。

まとめ:人材のコンセプチュアルスキルは高められる!

ここまで、コンセプチュアルスキルの鍛え方をご紹介しました。特に、管理職には必要不可欠なスキルであることから、次の世代を担う部下には、早いうちに意識をして身につけてもらうに越したことはありません。

しかし、これまでお伝えしてきたように、他のスキルと違ってコンセプチュアルスキルの開発には時間がかかります。部下や後輩には、まずはコンセプチュアルスキルの重要性を伝え、日々の仕事の中で問いを投げかけて、内省を促すことです。

また、企業内人材育成においては「持続的な学習」や「計画的なローテーション」、そして「コーチやメンターをつけることによる内省の支援」など、ある程度の長期ビジョンに基づいたスキル開発の機会と環境を整えることが重要でしょう。

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