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経営理念はなぜ大切なのか。継承し、浸透させるための方法とは?

2022年4月 6日更新

経営理念はなぜ大切なのか。継承し、浸透させるための方法とは?

企業としての使命を正しく認識し、経営理念として共有することが、強い現場をつくる第一歩となります。経営理念を形骸化させず、継承し、浸透させていくための方法を考察します。

INDEX

経営理念の重要性

昨今、自社・事業の根本的な存在意義を問い直す企業が増えてきました。
われわれは何のために存在するのか? それを表す経営理念が重要であることに対して、異論を差しはさむ人は少ないでしょう。
本田技研工業創業者・本田宗一郎氏は、「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」という名言を残しました。また、経営理念と業績に関する実証研究も進められ、両者に強い相関関係があることを示す論文も多数存在します。
このように、経営者の実践持論という観点からも、社会科学のアプローチという観点からも、経営理念の重要性はだれもが認める真理と言えるでしょう。

経営理念のなかに表明される企業の使命

事業経営という枠組みの中では、経営理念の中に、その企業固有の使命が表明されていることが一般的です。ここで言う「使命」とは、「責任をもって果たさなければならない任務」という意味です。強い現場をつくるためには、まず組織・事業の本来の使命を掲げ、それをメンバー全員で共有することが重要です。
そのことに関して、松下幸之助(PHP研究所創設者、パナソニックグループ創業者)は著書の中で次のように述べています。

たとえ個人企業であろうと、その企業のあり方については、私の立場、私の都合で物事を考えてはいけない。常に、そのことが人々の共同生活にどのような影響を及ぼすか、プラスになるかマイナスになるかという観点から、ものを考え、判断しなくてはならない。
共同生活の向上に貢献するという使命をもった、社会の公器として事業経営を行なっている企業が、その活動から何らの成果も生み出さないということは許されない。そういう使命を現実に果たしていってはじめてその企業の存在価値があるのである。
こうした使命観というものを根底に、いっさいの事業活動が営まれることがきわめて大切なのである。

松下幸之助著『実践経営哲学』(PHP研究所刊)

経営理念でメシは食えるのか

一方で、ビジネスの最前線で戦っている人ほど、「理想と現実は違う」「きれいごとでは勝てない」といった、経営理念に対する批判的な考えを持つ傾向があるようです。果たして、経営理念と業績は相関関係があるのか、ないのか?

この論争に一石を投じたのが、麗澤大学の高巖(たか・いわお)教授による、経営理念とパフォーマンスに関する研究論文(※1)です。この研究では、経営理念の浸透が、職務関与や革新指向性の促進を通じて組織メンバーのパフォーマンスを向上させることが検証されました。数々のデータ・エビデンスとともに、社会科学の研究アプローチからも、経営理念の重要性が明らかにされたのです。したがって、「理念でメシは食える」のです。

※1 高巌「経営理念はパフォーマンスに影響を及ぼすか――経営理念の浸透に関する調査結果をもとに―」『麗澤経済研究vol18,No1』

使命の認識が現場を強くする

使命の認識

企業として業績を伸ばしていくためには「強い現場」をつくることが欠かせません。
「私たちの仕事には、どんな使命があるのか?」
この問いに対する自分なりの答えが見つかると、社員一人ひとりが、やりがい・働きがい、喜びを感じて活き活きと仕事に取り組むことができるようになるでしょう。
売上や利益といった「目標」の達成ももちろん重要ですが、目標を達成することで近づく「目的」(=使命、理念、ミッション)についても、お互いに確認し合うことで個と組織が活性化します。
まず、使命を正しく認識すること。ここから強い現場づくりの第一歩が始まるのです。

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経営理念は形骸化しやすい

経営理念は形骸化しやすい

しかしながら、企業の存在意義を明示している経営理念は、形骸化しやすいという一面をもっています。
立派な経営理念を掲げていながら、不祥事を起こす企業が後を絶たない現状を見るにつけ、あるべき姿と現実のギャップが大きいことを実感させられます。
「一番大切なことは、一番大切なことを一番大切にすることだ」(Stephen Covey)ということばが空しく聞こえてくるように、経営を進めるうえで一番大切な経営理念の実践が形骸化されているのが、昨今の産業界の現状です。

 

なぜ、経営理念が継承されないのか

ではなぜ、誰もが重要性を認識しているはずの経営理念が継承されず、形骸化してしまうケースが多いのでしょうか。その要因はたくさんあると思いますが、主なものは以下の2つであると思われます。

(1)経営理念が「自分ごと化」されていない
その企業が掲げる理念が壮大過ぎて、日々の仕事との乖離が大きくなり、「理想と現実は違う」という認識になって理念が実践されなくなってしまう

(2)経営理念の表面的な理解にとどまっている
経営理念でうたわれている文言を覚えていても、それらが形成されるに至った創業の精神までは理解できていないので、日々の仕事に応用することができない

こうした要因によって、経営理念が形骸化していくのですが、そのことに気づいている経営者・経営幹部は案外少ないように思います。

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経営理念の自分ごと化+深層の理解

経営理念が形骸化する要因を2つの観点から述べましたが、それらを逆説的にとらえれば、理念継承のヒントが見つかるはずです。つまり、経営理念を自分ごと化させると同時に、理念の深層部まで理解を深めることが理念継承のポイントです。

(1)経営理念を自分ごと化させる

経営理念と日々の仕事の接続を図って、両者が別ものではないことを理解させることが大切です。
先にご紹介した田村潤氏は営業本部長時代、現場から上がってくる報告をもとに理念の実践事例をレポートにまとめ、4,000人の営業部員に毎週レポートを送り続けました。その取り組みを継続する中から、「理念を実践するというのはこういうことか」「日々の仕事が理念の実践とつながっている」と理解するメンバーが出てきて、理念の自分ごと化が実現したと言います。

(2)経営理念の深層部まで理解を深める

経営理念は、形式知と暗黙知の二層構造になっています。つまり、文字やことばで表現される部分と、創業の精神や思いといった、ことばには表現しにくい部分の二層から成るのです。
この両者、特に暗黙知に関する理解を深めることが理念の継承のカギになりますが、そのためには、創業者に関する矛盾した言説やエピソードを教材にして議論することが有効であるという主張があります(※2)。

※2 参考:『松下幸之助に学ぶ経営学』加護野忠雄著(日経プレミアシリーズ)

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経営理念の継承、浸透のために

先述のとおり、経営理念ということばからは「絶対的なもの」「正しいもの」「善なるもの」というイメージが想起され、無条件に受け入れて思考停止に陥ることが多々あります。経営理念が形骸化して不祥事が起きる温床には、思考停止に陥った組織風土があることが研究の結果、明らかになっています(※3)。
したがって、大切なことは、「従来のやり方を受け入れたり、守ろうとしたりする前に、まずはそれでいいのかどうかたえず問う」(※4)姿勢だと専門家は指摘します。

経営理念の形骸化を防ぐポイントは、理念の意味や重要性を一人ひとりが自分の頭で考えることです。そして、現場を預かる部門責任者の方がたには、そうしたことにメンバーの意識が向かうような問いかけや問題提起を行い、考える集団をつくっていくことが求められます。
そうした取り組みを通じて理念が実践・共有されれば、燃える集団ができていくでしょう。

※3 Anita L. Tucker and Amy C.Edmondson,"Why Hospitals Don't Learn from Failures:Organizational and Psychological Dynamics That Inhibit System Change,"California Management Review 45,no.2(Winter2003):68.

※4 出典:『問いこそが答えだ!』ハル・グレガーセン(光文社)

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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