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アダム・グラント「知的柔軟性」~成長し続けるために必要な発想法とは

2023年4月10日更新

アダム・グラント「知的柔軟性」~成長し続けるために必要な発想法とは

人の成長は、ものの見方、考え方と密接な関係にあります。人生100年時代、いつまでも成長し続けるためにはどのような発想法が求められるのでしょうか。

INDEX

判断を誤る経営者~成功体験を捨てきれない

数百社の企業の経営指導に携わった経験をもつコンサルタントの方から興味深い話を聴いたことがあります。その方曰く、現場で輝かしい実績を積み重ねてトップに上り詰めた生え抜きの社長ほど、経営判断を誤ることが多いそうです。

そのような状況に陥る原因として、かつての成功体験を捨てきれないことにあると、そのコンサルタントは指摘します。つまり、すばらしい実績を上げた、かつてのやり方にこだわり、その発想で現在の経営上の判断をするのですが、残念ながら経営環境が大きく変わっているのでうまくいかないというのです。

 

無知の知

上記の話には多くの示唆が含まれています。成功体験は重要ですし、そこから構築される持論や信念はリーダーにとって必須の武器と言えます。しかし、それにこだわり過ぎると、今何をすべきか、何が正しいかが見えなくなってしまいます。

個人がもっている知識や情報には限りがあり、自分の知らないこと、わかっていないことのほうが圧倒的に多いものです。ソクラテスの言う「無知の知」という考え方のとおり、「自分がいかにわかっていないか」を自覚することが、洞察力を高める第一歩なのです。

アダム・グラント「知的柔軟性」~自尊心と謙虚さのバランス

組織心理学者のアダム・グラントは、思い込みを手放し、発想を変えるための「知的柔軟性」について研究を進めました。彼は、多くの人々の思考プロセスを研究していくうちに、発想法には2つのパターン(再考サイクル、過信サイクル)(※1)があることを発見しました。

再考サイクル、過信サイクル

過信サイクルは、強い自尊心をもって思考することで、自分が予期するものを見たり(確証バイアス)、見たいものを見る(望ましさバイアス)ようになり、自分の正しさを是認し、自尊心がさらに強化される循環です。

一方の再考サイクルは、謙虚さをもってものを見たり聞いたりします。「無知の知」の精神で、自分のもっている情報や考え方に懐疑の目を向け、好奇心をもって思考するので新たな発見があります。自分の知らないことがたくさんあることに気づくと、より一層謙虚さに磨きがかかります。

2つのサイクルを比較すると、再考サイクルのほうが好ましいと解釈しがちですが、謙虚さが強すぎると卑屈になってネガティブな発想に陥ることがあります。大切なことは、謙虚さと自尊心のほどよいバランスを取ることだと、アダム・グラントは主張します。

※1 参考文献:『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』アダム・グラント著(三笠書房)

素直な心を目指す

思い込みを手放した、とらわれのない自由な発想について、松下幸之助も「素直な心」(※2)という表現でその重要性を指摘していました。

素直な心とは、寛容にして私心なき心、広く人の教えを受ける心、分を楽しむ心であります。また静にして動、動にして静の働きある心、真理に通じる心であります。
素直な心が生長すれば、心の働きが高まり、ものの道理が明らかになって、実相がよくつかめます。また、そのなすところ融通無碍、ついには、円満具足の人格を大成して、悟りの境地にも達するようになります。
素直な心になるには、まず、それを望むことから始めねばなりません。喜んで人みなの教えを聞き、自身も工夫し精進し、これを重ねていけば、しだいにこの心境が会得できるようになるのであります。

『PHPのことば その四』として1948年4月発表

現代は、変化が激しく、先の見通しのつきにくい時代です。だからこそ、判断力を高め、自らを成長させ続けるために、適度な謙虚さをもって発想することを心がけていきたいものです。

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的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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