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新入社員をつなぎとめるために~リテンションマネジメントのポイント

2024年4月15日更新

新入社員をつなぎとめるために~リテンションマネジメントのポイント

人材流動化に拍車がかかる状況のもと、いかにして離職に歯止めをかければいいのでしょうか。本稿では、新入社員をつなぎとめるためのリテンション施策について考察します。

INDEX

早まる転職活動の開始時期

新年度が始まって2週間は、新入社員にとって、初めての経験や慣れない生活環境への対応に苦慮した期間であったでしょう。ただ、この時期になると緊張感も和らぎ、徐々に組織や仕事に適応し始めるので、早く戦力になってほしいという周囲からの期待が高まります。
その一方で、この時期に転職サイトに登録し、情報を収集し始める新入社員の数が2011年比で30倍に達したという調査結果(※1)が公表されています。就労観が多様化しているとはいえ、入社とほぼ同時に理想の職場を探す行動を始める新入社員が多いという事実は、かつての常識からは理解しにくいものです。

「新卒入社直後のdoda登録動向」(パーソルキャリア株式会社)

※出典:「新卒入社直後のdoda登録動向」(パーソルキャリア株式会社)

リテンション・マネジメントとは? 転職の功罪

転職は、その人のキャリア形成にプラスにつながりますし、労働力の流動化は産業界全体の活性化につながりますので、決してネガティブなものではありません。ただ、企業側からすると、せっかく採用した人材に早期に離職されると、採用・教育コストを回収できませんし、将来の人材マネジメント戦略を描くこともできなくなります。
したがって、定年までつなぎとめるのは無理にしても、できるだけ長く勤めてもらうことが重要で、その実現のための施策がリテンション・マネジメントなのです。

参考記事:リテンション・マネジメントとは? 社員の離職理由とその対策を解説│PHP人材開発

新入社員をつなぎとめるために大切なこと

「Z世代」と言われる最近の若者たちの特徴の一つが、「成長欲求の強さ」です。彼らは、「自分が成長できるかどうか」を基準にして会社や仕事を選びますし、いったん入った会社がその基準を満たしていないと判断するとさっさと見切りをつけて、組織から退出するのです。
したがって、企業が取るべき適切なリテンション施策とは、彼らが会社生活を通じて成長を実感できるような育成の仕組みを整備することです。

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OJTの劣化が新入社員の離職を加速させる

人材育成は、SD(自己啓発)、Off-JT(教育研修)、OJTの三本柱で構成されますが、これらの中でも「OJTの質」を上げることが、新入社員の成長実感を高める上で最も重要な要素と言えるでしょう。
ところが、日本企業の現場のOJTの質は、「失われた30年」の間に著しく劣化してしまったようです。その要因はいくつか指摘されていますが(※2)最大の要因は、短期的な成果ばかりが重視され、長期的な取り組みである人材育成が軽視されたことだと筆者は考えます。
大きな希望をもって入社した新入社員に対して、上司や先輩からのきめこまかいOJTがなされないと、彼らは「ここにいても成長できない」と失望し、転職サイトを通じて得た情報をもとに転職活動を始めるのです。

※2 立教大学経営学部 中原淳教授は、管理職のプレマネ化、マネジャーへの早期登用、職場の人間関係の希薄化などが、背景にあると指摘している

「人を育てる人」を育てる

今後、より一層人手不足が深刻化することが予測される状況下、いかにして人材を確保するかが企業存続のカギを握ります。 そのためにも、現場のOJT推進者であるマネジャークラスの方がたを対象にした「ピープルマネジメント研修」を、これまで以上に強化する必要があるでしょう。日本企業は欧米企業に比べて、この分野への投資が圧倒的に少ないという指摘があります。
組織の中で、「人を育てる人」が育ち、その数が増えれば、やがて「人が育つ風土」が醸成されるでしょう。その風土の中で、新規参入者である新入社員たちは自らの成長を実感しながら、組織に対するロイヤリティも感じることができるでしょう。こうした取り組みは遠回りのように見えるかもしれませんが、組織を強化し、業績基盤を盤石なものにする最善の方策なのです。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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