経営者の成長と学び方、5つの勉強方法を解説
2024年2月27日更新
企業活動における経営者の役割が非常に大きいことは言うまでもありません。経営を前進させるために、経営者はどうあるべきなのでしょうか。本稿では、経営者の成長と学び方、5つの勉強方法について、そのポイントを考察します。
格差が拡がる中小企業間の競争力
日経平均株価が過去最高を更新したのは、半導体関連や自動車業界、商社などを中心に「稼ぐ力」を取り戻した(上場)企業の株価が上昇したことに起因していると言われています。
好調さを維持する大企業に比べ、中小企業の多くは、未だ物価高やエネルギー価格、物流費の高騰などへの対応に苦慮しているというのが現実です。もちろん、すべての中小企業が不振なわけではありません。中小企業の強みである小回りの良さを発揮し、市場の変化に機敏かつ柔軟に対応して成長軌道に乗っている企業もあります。
我が国の中小企業を取り巻く情勢を簡潔に表現するなら、企業間の競争力の格差が大きくなり、「勝ち組-負け組」の区分けが明確になってきたと言えるでしょう。
「経営者の器」
では、中小企業間の競争力の格差を生み出す要因は何でしょうか。
弊社では、2011年から『松下幸之助経営塾』という講座を開講し、これまで300名以上の中小企業経営者の方々に受講いただいてきました。当塾では10カ月にわたる講座期間中に、経営者としてのあり方を徹底的に議論しますが、最終的にたどり着くのが「経営者の器」以上に企業は大きくならない、という結論です。
実際、経営者自身が考え方と行動を変えることで業績が劇的に向上した企業事例は、枚挙にいとまがありません。こうした事例にふれたり、当該経営者の方と話をするにつけ、「経営者の器」の重要性を強く感じさせられるのです。
経営者の学び方
「経営者の器」を大きくするためには、相応の努力が必要であることは言うまでもありません。自身の強み、弱みを理解したうえで、器を大きくするための学びを継続的に行うのです。
多忙な経営者が学びの場をもつ上で、以下の5つのポイントから自分に合ったやり方を選択してみてはいかがでしょうか。
(1)メンターをもつ
自分の生き方に影響を与え、使命感を感じさせてくれるような「師」の存在は、経営者の器を大きくしてくれます。(株)ユーグレナの創業者で社長の出雲充氏は、グラミン銀行創設者 ムハマド・ユヌス氏をメンターと仰ぎ、彼との約束を果たすために創業し、会社を成長させてきたと言います。
(2)コーチをつける
経営者としての考え方が間違っていないか、確認することは意外と難しいものです。そこで、経営者を対象としたコーチングの専門スキルをもつ「エグゼクティブ・コーチ」をつけ、壁打ち役となってもらうことで、自身のあり方を客観視することができ、たくさんの気づきが得られます。
(3)良き出会い
世のため、人のためを思って、真剣に仕事をしているような経営者との出会いは、強烈な刺激を受け、自身のモチベーションが高まります。ただ、経営者が集まる場であれば何でもいいということではありません。志をもった経営者が集まる場であるか否か、多くの情報を参考にしながら見極める必要があります。
(4)自己観照
日々、自らのビジョンを確認したり、課題を列挙するなど、自分と向き合う時間をとることは重要です。ITエンジニアリング企業・アイエフエスネットグループの創業者である渡邊幸義氏は、毎朝2:00から7:00まで、自分と向き合う時間を取っています。このルーティンによって、考えがぶれなくなり、やるべきことをやる勇気も生まれてくると言います。
(5)読書
ジャンルを問わず、良書と言われる書籍を読むことは視野の拡大につながります。読書を通じて先人の遺した叡智を取り入れることで、経営上の課題や、経営者としての自己成長を図るためのヒントが得られるでしょう。
松下幸之助が大切にした「学ぶ心」
小学校を4年で中退し、学校教育をまともに受けられなかった松下幸之助(パナソニックグループ創業者・弊社創設者)は、学ぶことに対する欲求が人一倍強い経営者でした。幸之助は、学ぶ上で大切なことは、その人の心のあり方だと説きました。
本人に学ぶ心があり、勉強する心さえあれば、何からでも学べます。教材というものは、学校の先生が書物から取って教えてくれる教材もあれば、神羅万象すべても教材になる。(中略)やっぱり、感受性ですな。感受性のない人は、どんないいことを聞いても、どんないい本を読んでも、分かりません。感受性を鋭くしておかないけませんね
出典:雑誌『マネジメント』1979年
学ぶ心と感受性、これらを磨き高める努力を続けることで、「経営者の器」が徐々に大きくなっていくのではないでしょうか。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。