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挨拶が職場にもたらす効果~若手社員に理解させるには?

挨拶が職場にもたらす効果~若手社員に理解させるには?

(2017年6月16日更新)

 
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挨拶を職場に浸透させるには、メンバーがその重要性を正しく認識し、実践する必要があります。挨拶が職場にもたらす効果を実践事例とともにご紹介します。

 

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管理職の方が音頭をとって、挨拶運動に取り組まれている職場は多いことと思います。しかし、いくら取り組んでもなかなか根づかないし、熱心にすればするほど職場のメンバーからはけむたがられる……という悩みもよく耳にします。挨拶を職場で浸透させるには、メンバーがその重要性を正しく認識し、実践する必要があります。人材育成の担当者として、どう支援していけばよいのかをアドバイスします。

 

【質問】最近の若手社員は、社内で出会ってもろくに挨拶もしません。新入社員研修で挨拶の重要性や仕方は教えられているのに、配属されて1カ月もするとしなくなります。そこで私の部署では「挨拶運動」を実施したのですが、その間は挨拶するものの、運動が終わるとまたしなくなってしまいました。先日、部下の主任と話をしたところ、その件で「若手社員からは『なぜ必要なのか』『時間のムダ』『面倒な上司』などの陰口を言われている」と聞き、愕然としました。若手社員たちに挨拶の重要性を理解させ、職場に浸透させるには、どう指導すればよいか教えてください。(44歳男性 精密機器メーカー 庶務課長)

 

「挨拶はなぜするのですか?」

私は毎年4月は新入社員研修で全国を飛び回っています。ビジネスマナー研修を担当することも多いのですが、そのときは必ず冒頭に「挨拶はなぜするのですか?」という質問をし、個人で考え、グループでシェアリングし、リーダーに回答を発表してもらいます。そうすると「コミュニケーションのきっかけづくり」「上司に嫌われないため」「職場が明るくなる」「お客様によい印象を与える」といった回答が返ってきます。私はこうした“上っ面”だけの理解のもと、いくら研修で挨拶の仕方を教えて訓練したとしても、挨拶が身につくことはないと断言します。

では、一体挨拶とは何のためにするものなのでしょうか?

挨拶とは、他者のためにするのではなく自分のためにするものであり、いわば、「今の自分と未来の自分の人生を輝かしいものにするため」の基礎行動です。

人は出会いがしらの3秒で、その人が信頼できるかできないかを判断します。「挨拶をしない人」は、上司や先輩が「マイナス」の先入観を抱き、「つきあいにくい」という印象をもちます。それが「仕事を教えたくない」という態度に表れます。その結果「仕事の能率」が下がり、組織での「位置が確保困難」になり、さらに「挨拶をしない」という負のスパイラルが回ります。

「挨拶をする人」は、上司や先輩が「プラス」の先入観を抱き、「つきあいやすい」という印象をもちます。それが「仕事を教えてもいい」という態度に表れます。その結果「仕事の能率」が上がり、組織で「確固たる位置を確保」し、さらに「挨拶をする」という正のスパイラルが回ります。

なぜ挨拶するのか

また、お客様や取引先の皆さまにとっては、組織のメンバー一人ひとりの挨拶とともに発信するノンバーバル(非言語コミュニケーション)の印象が、組織の印象となり、会社(あるいは団体)の印象そのものになります。

 

なぜ挨拶するのか

挨拶を職場に浸透させるためには、この「挨拶はなぜするのですか?」の深層ファクター「今の自分と未来の自分の人生を輝かしいものにするため」をしっかりと教えることが肝要です。

 

職場で正しい挨拶を実行していますか?

ではここで一つ、管理職の方に質問です。

「あなたは常日頃、職場で正しい“挨拶”を実行していますか?」

イエスと答えられた方は少ないのではないでしょうか? そしてその理由の多くは、「部下やまわりの人がしないのに、自分だけがやっても浮いてしまう」というものではありませんか? 

ただ闇雲にまわりに挨拶を強制しても、共感は得られず職場に挨拶が根づくことはありません。熱意が空回りし、まわりから冷たい目で見られ、途中でくじけて止めてしまうことになるのは、火を見るより明らかです。そうならないために知っていただきたいのが、「挨拶の3原則」です。

 

挨拶の3原則

(1)自分からする

相手に左右されず(たとえ相手と目が会わなくても)、人と会ったら率先して自分から挨拶する。

(2)立ち止まってする

動いている動作のなかで挨拶をすると「~ながら」感が強く発信され、相手にこちらの心が届きません。必ず止まり、相手にこちらのヒザをむけ挨拶する。

(3)はっきり発音する

何を言っているのかわからない言葉で「モゴモゴ」と挨拶されても、相手は聞きとれず返答に困ります。挨拶はハッキリと聞きとれるようにします。

 

アドラー心理学では「他者は変えられない」、そして「他者を変えたいと思ったなら、まず自分が変わること」と考えます。職場に挨拶を根づかせようと思うなら、強い意志をもって、まずは自分から始めることが必要です。

挨拶運動に取り組んだり、ビジネスマナー研修を行う際、どうしても「挨拶の重要性」をことさら強調しがちです。しかし、精神論や抽象的なイメージばかりが先行してしまうと、「何だかよくわからないけどやらされている」となり、「なぜやらなければならないのか」「必要ないのでは」と、かえって敬遠されてしまうことになるのです。

「挨拶3原則」によって、具体的にどう行動すべきかを伝え、また指導する側である管理職が率先してそれを実行することで、挨拶に対する心理的抵抗感を払拭し、職場に根づかせることができます。

 

日本一の挨拶実践組織「静岡県磐田市役所」

私は講師として、年に150日くらい北海道から沖縄まで、企業・行政機関・学校等を駆け巡っています。研修会場に伺う際は、その敷地に入るときに必ず「礼」をし、すれ違う人すべてに「挨拶」を心がけています。しかしながら、残念なことに挨拶を元気よく返してもらったことはほとんどありません。そんな私を見て、研修のご担当者から「すみません。挨拶が根づかなくて困っています」という声を多くいただきます。

そんな折、2014年11月研修の打ちあわせで、静岡県磐田(サッカーのジュビロ磐田のホームタウン)市役所を訪問したときのことです。敷地内の駐車場の前で「礼」をしようと帽子を脱いだ私に、「こんにちは」と大きな声がかかりました。ふと見ると20代らしき女性が私に礼をしていました。そのあと、駐車場を抜け市役所の受付に行くまでのほんの3分くらいの間に10数人とすれ違いましたが、なんと全員がニコニコ微笑みながら、「こんにちは」と挨拶してきました。これは講師業十数年の私にとって初めての体験であり、驚くとともに、すごく心地のよい時間と空間でした。

「何なんですか、この挨拶の徹底ぶりは、どうして、なんで……」と、研修のことはさておき、挨拶の質問ばかりする私に、「まぁまぁ」と言いながら研修のご担当者が語ってくれた“挨拶定着物語”の内容は以下の3点です。

 

(1)発端

2009年4月に磐田市長に初当選した渡部修氏(現市長、3期目)の強い意向。

 

(2)施策

全職員を対象にして人事評価に挨拶を導入するとともに、挨拶運動をスタート。現在は、年2回1週間(4月・10月)、部長と課長が8時から15分間市庁舎の玄関に立ち、出勤する職員全員に挨拶を実施。

 

(3)効果

市役所全体の空気が明るくなり、職員各自のモチベーションが上がった。窓口の苦情が減り、クレームが発生しても肥大化しなくなった。市民からおほめの言葉を多くいただく。

 

話をお聴きして、挨拶を組織に根づかせる=風土として定着させるには、トップの強い意志と立場の上の者から率先してするという姿勢が不可欠であることをあらためて実感しました。

今回のご相談の例でも、組織のトップ(社長あるいは部長等)の意志を明確にしたうえで、管理職(役員、部長、課長等)が時間(朝がおすすめ)と期限を決め、挨拶運動を展開するなどされてはいかがでしょうか。さらには、広報部や人事を巻き込んで、挨拶運動の告知や人事評価に挨拶を導入する働きかけを同時に行えば、全社的な運動に発展していくことが期待できます。

いずれにしても、風土をつくりあげるには、1部門だけの働きかけで、短期間でできるものではありません。トップから一般社員まで全員で取り組むという覚悟と、あきらめずに長期間継続していく努力が欠かせません。人材育成をご担当の方には、各部門と連携をとりながら、そのかじ取りを担っていただきたいと思います。

※上記の“挨拶定着物語”は、磐田市の許諾を得て掲載しました。

 

 

 

*「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

 

リーダーのための心理学入門コース

 


 

【著者プロフィール】

宮本秀明(みやもと・ひであき)

1982年、スタンフォード大学中退。広告業界から数社の研修会社を経て、現在㈲ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクター。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当。米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発。受講生の目線に立った習得しやすいカリキュラムの構成力、やる気を促す講師手法には定評がある。著書に、『マンガでよくわかるアドラー流子育て』(岩井俊憲監修、かんき出版)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。


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