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「今」を大切にするキャリア開発

「今」を大切にするキャリア開発

(2012年6月15日更新)

 
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ここ数年の「組織」と「個」の関係の変化を背景に、キャリア開発に対する産業界の関心が改めて高まっています。キャリアに関する諸理論の中でも、近年注目を集めているのが、米国スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱する「計画的偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)です。

 

クランボルツ教授は、数百人にのぼるビジネスパーソンのキャリアを分析した結果、「キャリアの80%は、予期しない偶然の出来事によって形成される」という事実を明らかにし、「決定論的に将来の目標を明確に決め、そこから逆算して計画論的に将来のキャリアを作りこんでいくやりかたは現実的ではない」と主張しています。

 

この主張は、従来のキャリア開発の主流とされてきた理論とは明らかに一線を画すものですが、実務の世界で実際に起きている出来事を見ているとこちらのほうがなんとなく馴染みやすく感じます。ビジネスの世界においては、自分の力ではどうすることもできない『運命』や『偶然』によって左右されることが多いもの。特に変化の激しい昨今の市場環境においてはその傾向はますます強まりつつあり、企業経営も個人のキャリア開発も長期のビジョンを描きにくくなっているのです。

 

それにも関わらず、巷で行われているキャリア研修は相変わらず、従来の考え方に則って「〇年後のありたい姿」を描き、そこから逆算して現在の課題を形成させるような類のプログラムがほとんどのようです。自分の現状と将来をしっかり見つめて進むべき方向を考えるという点で、この種の研修にも大きな意味があると思いますが、現実性という観点から考えると、『偶然』を呼び込むための態度・姿勢(クランボルツ教授の説によると「好奇心」「持続性」「楽観性」「リスクテイク」「柔軟性」など)を身につける教育のほうが、より重要であると思われます。

 

本質的に予測不能な「将来」というものを前提に置くよりも、今与えられた仕事に自分のできる範囲で精一杯取り組んでいくとか、目の前で起きる出来事と真剣に向き合って、自分にとっての学びや意味を引き出す、など、「今、ここ」を大切にした生き方をするほうが、結局は“その人らしさ”の発揮につながり、自分にふさわしい道が拓けてくるのではないでしょうか。

 

松下幸之助は、「自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。(中略)いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まずあゆむことである」と述べ、「今」を大切にする姿勢を生涯、貫き通しました。

 

一時的・表面的なキャリア形成を目指すのではなく、ほんとうの幸せにつながるキャリアを形成するためにも、わが社のキャリア研修はどうあるべきかを、今一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。 

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士            

   


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