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変容的学習理論とは

変容的学習理論とは

(2012年8月15日更新)

 
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人材開発においては、「自分で考えさせる」「自分で気づかせる」ということがすべての出発点といえます。研修をおこなう講師、OJTを推進する上司・先輩は、そのための適切なサポートを提供していくことになりますが、今回は「変容的学習理論」という視点から、その点について検討していきたいと思います。

 

変容的学習理論と適切なサポート

 

企業内教育の難しさの一つは、ある程度自分なりの考えが確立した大人を対象としているということです。大人は誰しも、過去の人生経験の中で形成した「準拠枠」(ものの見方・感じ方・行為の仕方の習慣的な枠組み)と呼ばれるフレームワークを通して、思考・行動しています。

この準拠枠が強固になればなるほど、その枠の中での発想に捉われ、結局、視野の拡大が阻害されてしまうのです。したがって、この準拠枠を固定化させるのではなく、変容させ続ける必要があるのですが、それが非常に難しいのです。例えば、困難な状況に直面すると、いつも「できない」とあきらめてしまう人が、その思考パターンを簡単には変えられないことを考えてみれば、その難しさが理解ができるでしょう。

 

米国の教育学者であるJ・メジローは、どうすれば準拠枠を変容させることができるかという難しい課題に立ち向かい、研究した成果を「変容的学習理論」と名づけました。彼の理論を解釈すると、学習者の準拠枠の変容と、第三者からの適切なサポートとの間には、何らかの相関関係が存在することがうかがえます。

 

適切なサポートの具体例として、

 

 ・別の考え方を学習者に提案する

 ・質問する

 ・学習者の考えと矛盾するような考え方や事実を提示する

 ・学習者の習慣的な考え方や行動を真似してみせる

 

などが考えられますが、これらはいずれも学習者が別の角度からものを見ることができるような働きかけを行っているのです。

 

「教える」のではなく「考えさせる」指導・研修を

 

この考え方に立てば、集合研修における講師、あるいはOJT推進者である上司や先輩、指導員の人たちは、「教え込む」教育者の役割よりも、適切な問いかけやフィードバックを行って「考え抜かせる」コーチとしての役割にウェイトをかけるべきだということになるでしょう。問いかけ、考えさせ、自分の意見を語らせ、それに対してフィードバックを与えて、また考えさせる……。こういうプロセスを繰り返すことによって、少しずつ学習者の準拠枠が変容していくのです。

 

先日、あるベテラン研修講師が語っていたことばが印象に残っています。

「自分で考え、自分で気づき、『私はこうなりたい』と自分のことばで言わなければ、決して人は変わらない」と。まさしく、これこそが「自らを変える力」を引き出す教育といえるでしょう。時間もかかるし手間のかかる作業ですが、これからの企業内研修のあり方を考える上で、大切にしたい考え方の一つです。

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。 現在は(株)PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。


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