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豊田英二「自分を凌駕する部下を育てよ」~名経営者の人材育成論

豊田英二「自分を凌駕する部下を育てよ」~名経営者の人材育成論

(2016年2月 5日更新)

 
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桑原晃弥氏の「名経営者たちの人材育成論に学ぶ」シリーズ。今回は「トヨタ中興の祖」と呼ばれるトヨタ自動車工業株式会社第5代社長・豊田英二のエピソードです。
 
 
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トヨタ式とは「モノづくり」と同時に「人づくり」でもある

トヨタ自動車(以下「トヨタ」)は世界一の自動車メーカーであり、日本を代表するモノづくり企業である。そんなトヨタのモノづくりを支えているのが「世界のモノづくりを変えた」とも言われている「トヨタ式」である。
こう書くとトヨタ式は単なる生産の仕組みと思われがちだが、トヨタ式が他の生産方式と決定的に違うのは「モノづくりは人づくり」という言葉が表しているように、「知恵を出して働く人」を育て、育った人たちが改善をすることでより良いモノをつくっていく点にある。つまり、トヨタ式とは「モノづくり」と同時に「人づくり」の仕組みでもあるところにトヨタ式の素晴らしさと、トヨタの強さの秘密があると言っていい。
では、トヨタはどうやって人を育てているかというと、たとえば生産現場で仕事をしていると「この仕事はやりにくいなあ」「この姿勢はしんどいなあ」などと感じることがあるが、そんな時には管理者は「我慢しろ」「慣れろ」と言うのではなく、「どうすれば楽になれるかを考えよ」と指導することが求められる。
トヨタに限らず、どんな企業、どんな職場でも「しんどい」「つらい」と感じることはある。そんな時、たいていの企業は「我慢しろ」「すぐに慣れるよ」と忍耐や我慢を求めるのに対し、トヨタは「知恵」を求めることになる。「しんどい」や「つらい」を我慢すると、それは仕事への不満になりやすいが、反対に「改善策」を求めるとそこに「やりがい」や「知恵」が生まれることになる。
これがトヨタの「人づくり」である。トヨタの管理者には当然、現場を動かし、目標を達成していく力が求められるが、それ以上に重要なのは「改善する力」であり、「人を育てる力」となる。
 
 

自分を凌駕する部下を育成

かつて豊田英二氏は会長時代、部次課長を前にこう話している。
「管理者の皆さんは自分を凌駕する部下を育成していただきたい。人材こそ企業の要であり、企業の盛衰を決めるのは人材である。皆さん自身が厳しく己を磨き、部下から心服される管理者となり、部下が人間として大きく育つように努めてほしい」
トヨタの管理者に求められるのは「人づくり」、それも「自分を凌駕する部下」を育てることにある。だからこそ管理者は時に部下に難題を投げかけ、部下を困らせることが求められる。人は困らなければ知恵は出ない。難しい課題を与え、部下を困らせ、知恵を出すことを学ばせる。そうすることで初めて「知恵ある部下」が育つことになる。
ただし、部下を困らせる時には管理者も同じ課題を自分も与えられたものとして考えることが求められる。世の中には考えることや、厄介なことを部下に丸投げして、自分では考えようとしない管理者もいるが、トヨタの場合、「仕事は部下との知恵比べ」であり、部下に課題を与える以上は、部下と同じように悩み、部下が困って相談に来た時には、答えは教えないけれども、ヒントを与えるだけの力が必要になる。
そんな部下とのやり取りを通して管理者は「頼りになる親方」になり、部下は「上司を凌駕する」存在へと育つことになる。
 

「知恵の数だけ競争に勝てる」

新しく管理者になった人はこう言われる。
「部下の話を聞く時は手を止めて聞け。時間がなければ、いつなら話を聞けるかをその場で決めろ」
トヨタの上司と部下にはある種の泥臭さがある。管理者は人間としての部下に関心を持ち、部下にとっての頼りになる親方になる。「知恵の数だけ競争に勝てる」がトヨタの考え方であり、トヨタにとって最も大切なのは「知恵ある社員」をどれだけ育てることができるかなのである。
 
 
参考文献:『豊田英二語録』(豊田英二研究会編、小学館文庫)

 

「名経営者の人材育成論」一覧

 

 


 
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【著者プロフィール】

桑原晃弥(くわばら・てるや)

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。

著書に『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(以上、PHPビジネス新書)、『スティーブ・ジョブズ名語録』『サッカー名監督のすごい言葉』(以上、PHP文庫)、『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』『天才イーロン・マスク 銀河一の戦略』(以上、経済界新書)、『ジェフ・ベゾス アマゾンをつくった仕事術』(講談社)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)などがある。


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