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女性と仕事~松下幸之助「人を育てる心得」

2016年10月24日更新

女性と仕事~松下幸之助「人を育てる心得」

男女にはそれぞれ異なる特質、役割がある。その違いを正しく知り、それぞれに本来の役割を果たすところに、真の平等がある。

最近はよく、男女の平等といったことがいわれ、昔に比べて職業をもつ女性が増えてきました。そうした姿は非常に意義のあることで大いに結構なことだと思います。

ただ私は、この平等ということは、男女の平等に限らず、だれもが何もかも同じということではないと思います。人にはだれにも、他人とは異なった独自の天分、特質が、それぞれに与えられ備わっていますが、平等ということは、独自の特質がだれにも同じように与えられているという意味で平等なのであって、与えられている特質がみな同じということでは決してない。ですから、男女の平等といっても、それは男と女が、何もかも同じように考え、行動すべきだ、というのではなく、それぞれの特質、役割が男女ともに十分発揮されるようにしていく、ということでなければならないと思うのです。

実際、男性と女性の特質、役割には、おのずと異なったものがあると考えられます。それは、お互い人間の日常生活の姿からも明らかでしょう。

人はだれでも、男性にせよ、女性にせよ、生涯一人で暮らすのが本来の姿かといえば、そうではないと思います。何らかの考えから、自分は生涯独身で過ごすという人もなかにはあるでしょうが、それはどちらかといえば例外で、一般には男女が一対となり夫婦として暮らすのが普通の姿であり、それが人間本来の姿でもあるのではないでしょうか。

そうだとすれば、その夫婦のあいだで、出産、育児という役割を果たす天与の特質をもっている女性と、そうでない男性とでは、その役割はおのずと異なってくるでしょう。つまり、主として男性は外に出て働き、女性は家を守り治めるという役割を担うことになります。そのようにして夫婦が一体となり、健全な家庭を築いていくことが、社会全体の発展をも支える人間本来のあり方ではないかと思うのです。

ところが、過去の日本においては、いわゆる男尊女卑的な考え方があって、そこからなにか外に出て働くことを尊び、家を守り治めることを軽視するような風潮が、一面に見られました。しかしこれは大きな間違いだと思います。外で働くか内で働くかは、どちらかを重視し、どちらかを軽視すべきものではなく、両方がともに同じように尊いわけです。

もちろん男女の役割分担については、双方が同じ役割を果たし、同じように仕事を分担すべしという考え方も成り立ちましょう。しかし、現実の問題としては、出産とか授乳といったことは男性にはできませんし、もし女性に、出産、育児といった役割に加えて、男性と同じ役割をも担わせるとしたら、それはきわめて過重な負担を強いることになってしまいます。

ですから、やはり男女は、本来、異なった役割を負っており、その役割はどちらも同じように尊いのだと考えるのが、自然で素直な考え方ではないかと思います。また、そういう考え方を基本において、それぞれの役割に生きていくところに、真の幸せというものもあるのではないでしょうか。

しかしそれは、女性は外で働くべきではない、ということでないのはいうまでもありません。先ほど述べたように、職業をもつ女性が増えてきていることは、非常に意義のあることだと思います。最近は、社会が進歩し多様化するに伴って、女性に適した仕事、また女性でなければできない仕事もいろいろ生まれてきています。そういう仕事は、それにふさわしい女性にやってもらうことが、女性の特質を生かすためにも、社会のためにも大事だと思います。また、女性が実社会を知るという意味から、結婚までの一時期、社会に出て職業をもつことも、それなりの意義があり、好ましいことでしょう。

ですから、これからも、女性が社会に出て職業につくことは大いに結構なことだと思うのですが、そこにはやはり、人々が女性本来の役割を正しく知って、これを適正に評価するという姿がなければなりません。女性は本来、家庭にあって家を守るということが大切で、そのことの意義と重要性が、社会全体としてもっと適正に認識され、高く評価される必要がある。そういうことを前提として、女性の社会進出が進められていくべきだと思うのです。

そういうことが、真の男女平等ということにも通じているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

【出典】 PHPビジネス新書『人生心得帖/社員心得帖』(松下幸之助著)

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