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部下に弱みをみせない管理者は「強い管理者」なのか?

部下に弱みをみせない管理者は「強い管理者」なのか?

(2017年4月14日更新)

 
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管理者は常に強くあらねばならない、部下に弱みを見せてはいけない、という考え方があります。しかし、それはほんとうに強い管理者の定義なのでしょうか。管理者としての在り方について解説します。

 

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部下に弱みを見せない管理者

管理者は常に強くあらねばならない、という考え方があります。このとき「強い管理者」とは、どんな人のことをいうのでしょうか。

管理者のパワーの源泉を“権力や権限”と考えると、“部下に弱みを見せられない”ということになります。たとえば、部下に質問されて「わからない」と答えると管理者の権威が失われると思い、あいまいに答えたり、「それはたいした問題ではないよ」と、その場を取り繕うような話で終わらせようとしたとします。

しかし、それで管理者としての権威を保てるかは疑問です。「わからないんだ。君はどう思う? 大事なことのような気がするから調べて報告してくれないか」と言ったほうが、部下の意欲を引き出すことができます。

また、どうすべきか判断に迷うとき、「管理者として何がなんでも自分で決めなければ」と思いすぎると、かえって判断を間違えることもあります。最終的には管理者として判断するにしても、その過程においては、部下の見方や考えを引き出し、議論することのほうがよほど前向きであり、責任ある判断になります。

 

管理者が自己開示することで部下の情報を引き出す

誰にでも知らないこと、わからないこと、判断に迷うことがあります。そんなとき、上司や同僚に相談はできても部下に相談できない管理者では、職場のリーダーとして力を発揮することはできません。むしろ、“わからない”“迷っている”ことを進んで開示できる“人間味”を多くの部下は歓迎するのではないでしょうか。その上で最後は、管理者として指示や判断をすれば、弱みどころか強さのある管理者になるはずです。

もちろん、管理者の人間味を演出するため、わざと“弱み”を見せようといっているのではありません。「弱みを見せたほうが部下から好かれるだろう」という見え透いた気持ちではなく、“弱みを見せてはいけない”という固い殻を破って自分を開示することが大切という意味です。自分を開示しないで部下にホンネを求めたり、「何でも相談しなさい」と言うだけでは、部下も殻を破ろうとはしません。

現代の環境は厳しく、世の中はものすごい勢いで変化しています。部下のほうが情報を多く持っていることも少なくありません。それらを引き出して、業績達成のパワーとして統合していくことが、管理者の責任です。

 

部下から嫌われたくないという思い

“好かれたい”は、人間関係のなかで誰もが思う共通の願いです。特に部下との関係では、好かれたいというより、“嫌われたくない”という思いのほうが近いかもしれません。

それにはいろいろな理由があります。たとえば、“仕事を円滑に進めるためには、部下との信頼関係が大切だ”“大変な仕事をやってもらうには、嫌われているより好かれているほうがよいに決まっている”“上司・部下という関係の前に人と人との関係を大切にしたい”などです。

慕われたい、尊敬されたいというのは、人間の基本的な欲求です。職場も、ぎすぎすしているより、互いに認めあったり、尊敬しあっているほうが、仕事の効率にとっても、働きやすさという点でもよいに決まっています。そういう人たちと仕事ができることは、誰にとっても幸せなことです。

しかし、“好かれたい”という気持ちが強すぎると、逆に問題が生まれる可能性があります。もちろん、好かれることが悪いのではありません。ただ、“部下に好かれるために”あるいは“好かれようとして”行動するところに、問題が起きやすいのです。本来なら厳しく注意すべきところなのに、“嫌われたくない”思いが先に立って言いそびれたり、中途半端な注意に終わってしまうこともあるのです。問題が起きても職場のなかだけにとどめて、互いにかばいあったり、失敗やミスがあっても、「指摘しあうと人間関係が壊れるから」という理由で何も言わないのも、“嫌われたくない”という思いの弊害の一つです。しかし“和気あいあいとやっています”という職場が、良い職場とは限りません。

正当な理由があり、相手のことを思っての厳しさは、嫌われる理由にならないことのほうが多いのではないでしょうか。「厳しい上司だったけど、そのおかげで……」というとき、それは尊敬の対象になるはずです。このような人との関係は、ときに激しい対立関係が生じますが、それを乗り越えて深い絆につながっていくことでしょう。ところが、単に“嫌われたくない”という心理は、部下との対立を避けたいというだけで終わってしまいます。たとえば、必要なときに叱ることができないというのも、“嫌われたくない”という心理の表れといえます。

 

管理者には対立や葛藤を乗り越える強い意志が必要

“伝家の宝刀”という言葉があります。宝刀ですからやたらに抜くものではありません。しかし、抜けないのと抜かないのは、まったく違います。また、抜かなければならないときに抜けない、では困ります。叱ること一つとっても、“嫌われたくない”という心理に負けるか負けないかは、大きな違いになります。

叱り方には、次の3つの原則があります。

(1)叱る理由を明確に説明すること。

(2)タイミングと方法をよく吟味すること。

 “鉄は熱いうちに打て"のように、叱るべきことが発生したときに、その場で指摘すること。

(3)叱られる相手を活かす目的で叱ること。

“嫌われたくない”という心理にとらわれず、対立や葛藤を乗り越える強い意思が必要です。それが結局は、部下の力を真に活かすことにつながるのです。

 
[出典]PHP通信ゼミナール「リーダーシップ開発プログラム」
 
 
課長研修
 

[監修者プロフィール]

高橋健策(たかはし・けんさく)

1948年、名古屋市に生まれる。1972年、関西大学工学部管理工学科卒業後、弱電メーカーおよび機械メーカーで事業計画、生産管理、生産技術の仕事に従事する。1978年、産業社会学研究室に入室。経営コンサルタント活動を始める。人事管理制度の改善や財務管理、経営計画の策定と実践などを中心にした経営診断・改善業務および教育担当者養成研修、階層別研修を担当する。

著書に『新入社員研修マニュアル』(共著)、『成果主義経営マニュアル』(PHP研究所)

 


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