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研修をやっても成果が出ない本当の理由は?

研修をやっても成果が出ない本当の理由は?

(2017年8月17日更新)

 
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「研修をやって本当に効果あるの?」と聞かれることがあります。特に、たたき上げの管理職や経営者が研修効果に懐疑的です。実際「成果が出ない」「何も変わらなかった」と言われたこともあります。

「研修は本当に効果があるのか?」――この疑問に講師や人事担当者は応えていかなければなりません。今回は、研修で成果を出すための方策をお話いたします。

 

受講者アンケートはいいのに、なぜ変わらないのか?

研修終了後、受講者からお礼の手紙やメールをいただくことがよくあります。「先生から学んだことを明日からすぐに実践していきたいと思います!」とやる気満々の受講者のメッセージです。

しかし、1か月後に「その後やってみていかがでした?」と尋ねると、「いやぁ~、まだやっていません……やろうと思ったんですけど……」といった返事が返ってきます。上司にお伺いしても、「別に何も変わっていませんが……」という返答です。

研修後の受講者アンケートにはとても良いことが書いてありますし、やる気が高まっている様子が見てとれたにもかかわらず、現場に戻ると行動していない人がほとんどです。

 

カークパトリックの研修評価モデル

やる気になっていた受講者が行動しない理由はどこにあるのでしょうか。

まずは「研修効果」をきちんと理解する必要があります。何をもって研修効果と呼ぶのか? カークパトリックの研修評価モデルの4段階をご紹介しましょう。

アメリカの経営学者カークパトリック博士が、1959年に考案した教育の評価モデルです。かなり昔の評価モデルですが、一般的に普及しており、私もこれを使って研修を評価しています。

この評価モデルは、次の4段階です。

 

 ●レベル1 : Reaction(反応)

研修後、受講者にアンケートを取って、研修に対する満足度を評価します

 ●レベル2 : Learning(学習)

テストしたり、レポートを書かせて、受講者の学習の習得度を評価します

 ●レベル3 : Behavior(行動)

受講者にインタビューしたり、周りに観察してもらって行動変容を評価します

 ●レベル4 : Results(業績)

受講者の業績向上やチームの業績向上への影響を評価します

 

この4段階で研修を評価すると、先ほどの例は、レベル1と2はクリアしているが、どうもレベル3で躓いているようです。現場に戻って受講者が学んだことを実行に移していないことが問題です。

 

研修後の忙しさで、学びを実行に移せない

研修の学びが行動に活かされないのは、やはり、受講者本人に問題があるのでしょうか? 研修会場を出る受講者の表情を見る限り、やる気のない人は少ないと思います。

受講者からこんなことを聞いたことがあります。「研修を1日受講すると、メールは溜まり、お客様からの伝言が机に置いてあり、かなり業務が滞ります。まずは、メールをチェックして返信したり、電話の伝言メモを見てお客様に電話をしていたら、研修で学んだことは後回しになってしまいます」。

さらに、「職場に帰った途端に、上司が『いいところに帰ってきた。すぐにこれやって!』と仕事を指示してくるんです」。このように研修を受講した後は、かなり忙しい状況です。そして研修で学んだことは先延ばしにされ、翌日も忙しくて行動しない。3日後も行動しなかったら、いずれ忘れ去られます。たとえ覚えていたにしても「今さらやっても……」となり、どうでもよくなってしまうようです。

研修に参加しても、学びを行動に移さなければ何の意味もありません。研修の場はあくまでもインプット学習です。現場でアウトプット学習が始まります。

カークパトリックの評価モデルに当てはめると、レベル3の研修効果では、学んだ知識やスキルを現場で発揮してはじめて行動変容が起こります。しかし、行動を起こしただけですぐに効果は出ません。行動を継続して試行錯誤を繰り返し、コツをつかんだところで効果が出始めます。その行動を継続することで、初めてレベル4の業績向上という効果が出るのです。

 

真の原因は上司にあることも

受講者が行動しない原因は、本人の意識の問題かもしれません。研修で1日仕事を離れていたため、急ぎの仕事が溜まっていることも事実です。

しかし、真の原因は上司にあることも多いのです。上司が研修に行くことを快く思っていないことがよくあります。あなたの会社にも「この忙しい時に研修なんて行かせられないよ」と言う上司はいませんか?

実は、受講者が研修から戻ってきた時の上司の対応いかんで、研修効果の成否が決まります。上司が研修に無関心であったり、研修に否定的であることが、研修効果を打ち消してしまいます。

では、上司はどのように受講者に接することが必要でしょうか?

(1)上司はパソコンを打つ手を止めて、研修の報告をしっかり聴く

(2)受講者が行動しようとすることを承認し、仕事として行動するチャンスを与える

(3)上司として支援し、周りのメンバーを巻き込む

(4)ミーティングやミニ研修を開催して、研修報告をする機会を設ける

(5)組織課題として重要な案件の場合、プロジェクトリーダーに任命する

上司がこのような対応をとれるかどうかが、研修の成果を出せるかどうかの鍵を握っているのです。

 

研修の成果が出る組織=「学習する組織」をつくるのは管理職の仕事

今は個人のスキルアップだけでは業績が上がらない時代です。個人のパフォーマンスではなく、組織のパフォーマンスが問われるようになりました。

組織の能力は、個人の能力の足し算ではなく、掛け算で大きな効果を生み出します。今後、管理職の新しい役割として、「学習する組織」をつくることで組織開発を促進することが求められます。

研修の学びによる行動変容が、組織変容につながれば、改めて研修の価値を感じてもらえるのではないでしょうか。

 

 

リーダーシップ開発と職場風土変革―松下幸之助に学ぶ5つの原則

 


 

茅切伸明(かやきり・のぶあき)

株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会) 

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