最近の若者の特徴と効果的な新入社員研修
2022年12月21日更新
新入社員の気質や傾向は、年々変わると言っても過言ではありません。そこで本稿では、最近の若者の特徴や新入社員の傾向を踏まえた、効果的な指導法について考察いたします。新入社員教育・研修にお役立ていただければと思います。
最近の若者の特徴、新入社員の傾向
最近の若者の特徴や新入社員の傾向に関して、「Z世代の特徴」といったテーマで取り上げられ、ネット上でもさまざまな意見や主張が飛び交っています。筆者は以下の3つの傾向を、新入社員を指導育成する立場にある上司の方がたにはご理解いただきたいと考えています。
(1)想像力に欠ける
「相手が今、どのような感情を抱いているか」「自分のとった言動が周囲にどういう影響を及ぼすか」「この状態が続けば、この先どのような結果になるか」等々に対する自分なりの仮説をもっていないと、仕事で成果を出すことは難しいでしょう。ところが、上記に対する仮説を導き出すために必要な「想像力」が貧弱な方が、若い世代を中心に増えている印象を受けます。
デジタルネイティブと言われるように、幼少期からITツールを使いこなし、必要な情報を検索機能で収集する能力が長けている反面、自分で考える習慣が少なかったことが影響しているのかもしれません。
(2)納得しないと動かない
「個人の生活」と「仕事」との関係が、「ライフ・イン・ワーク」(昭和)から「ワーク・ライフ・バランス」(平成)へと変わり、さらに「ワーク・イン・ライフ」(令和)へと変わりつつあると言われています。
こうした時代にあって、「会社の方針だから受け入れるのは当然だ」とか、「上司の命令には絶対従わないといけない」といった考え方は通用しにくくなりました。納得感が得られなければ方針や指示命令に従うことはないし、「それで居づらくなったら転職すればいい」という発想をもった人が若い世代には多くなっているのです。
(3)「2つの感」を求める
Z世代と言われる最近の若者たちの中には、「貢献感」と「成長実感」を欲する人が増えているようです。
貢献感は、自分の行動が誰かの役に立ち、その結果、「ありがとう」「助かりました」「あなたのおかげです」といった、感謝のメッセージを受け取ることで得られる感覚です。
一方の成長実感は、「できなかったことが、できるようになった」「精神的に強くなった」等、仕事を通じて自らの専門性や人間性が高まったと認識することで強化される感覚です。
これら「2つの感」が満たされるか否かが彼らの仕事を選ぶ基準となっていて、そこに物足りなさを感じると、いとも簡単に離職する見切りの早さがこの世代の特徴と言えます。
最近の若者に効果的な指導 3つのポイント
以上、最近の若者の特徴・新入社員の傾向について述べてきましたが、実際の指導にあたっては、どうすればいいのでしょうか。これについても3つの観点からそのポイントをご説明します。
(1)視座・視野・視点の転換を図るような問いを投げかける
想像力を鍛える上で効果的なのが、異なった視座・視野・視点からものごとをとらえることです。そのためには、以下のような問いを投げかけることが有効です。
- 視座を高める問い
「君がもし課長だったら、今回のクレームにどのように対応する?」 - 視野を広げる問い
「自分の仕事の質が高まると、関連するほかの部署にどのような影響を与えていくだろうか?」 - 視点を変える問い
「今回の提案をお客さんはどのように受け止めているのだろう?」
人の成長は、ものの見方・考え方と相関しています。したがって、上司は質問を通じて、新入社員が視野狭窄に陥らないよう成長を支援し続ける必要があります。
(2)仕事の意味を伝える、対話する
相手を「説得」ではなく「納得」させて動かすには、仕事の意味や目的を明確に説明する必要があります。What(何を)やHow(どのように)だけでなく、Why(なぜ)を上司が自分のことばで語るのです。
そして、一方的に伝えるだけでなく、相手の思いや考え方も聴くという双方向型のコミュニケーションを実践することが重要です。ネガティブな意見を言ったとしても決して否定せず、その真意を受容しながらさらに対話を重ねることが相手の納得度を高めることにつながります。
(3)的確なフィードバックを行う
「2つの感」を感じさせるためには、日ごろからの観察を通じて相手の言動に関する事実をつかみ、フィードバックを行うことです。ただ、フィードバックには、ポジティブフィードバック(ポジ)とネガティブフィードバック(ネガ)の2種類があるので、両者を的確に使い分ける必要があります。
貢献感を感じさせるためには、ポジが効果的でしょう。
例)「今日、お客様から君に対する感謝のことばをもらったよ」
一方、成長実感を高めるためには、ポジとネガの両方を使うほうが、効果が上がります。
例)「プレゼン資料のまとめ方がすごくわかりやすくなってきたね」(ポジ)
「DXの専門家になりたいなら、もっと勉強しないといけないよ」(ネガ)
最近の若者たちは、自分の成長のためなら耳の痛いことも言ってもらいたいという願望をもっています。したがって、ポジばかりでなく、時にはネガも言ってくれる上司のもとで、新入社員の成長実感が高まります。
新入社員の指導に悩む管理職
以上、若者の特徴や新入社員の傾向を分析し、その効果的な指導法を述べてきました。
激変する環境のもと、複雑化・高度化する経営課題に対処するため、現場を預かる管理職の責任と負担がますます高まっています。マネジメント研修などの場で、管理職の方がたの発言に耳を傾けていると、彼らがさまざまな問題を抱えていることがわかります。なかでも、部下との関わり方、特に新入社員の指導育成に悩みを抱えている方が非常に多いということに気づかされます。
組織の要である管理職の方がたが新入社員の指導育成に思い悩み、無力感・徒労感を感じて、その他のマネジメント業務に身が入らないということは組織全体として看過できない大きな問題と言えます。
人間の本性は変わらない
ただ、理解していただきたいのは、時代が変わっても人間の本性は変らないということです。つまり、人は誰かの役に立ちたいという願望をもつと同時に、自らを成長させたいという欲求をもっており、そのことを本気で支援してくれる人に対して心を開くということです。
こうした人間の本性を信じたうえで、愛情をもって新入社員に向き合っていくならば、上司-部下の関係性が深まり、人材育成の精度も高まっていくでしょう。
PHPゼミナールの新入社員研修プログラム
PHPゼミナールの新入社員研修プログラムは、松下幸之助の人材育成に対する考え方を基盤としつつ、その時代の若者の傾向と課題を分析し、最新の人材育成理論から得られるエビデンスや、今産業界で活躍しているリーダーのさまざまな経験知をとりいれて、常にアップデートしています。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。