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「なぜ敬語を使うのか」を若手にどう説明する?

2021年3月10日更新

「なぜ敬語を使うのか」を若手にどう説明する?

対面でのコミュニケーションが苦手で、特に敬語を正しく使えない新入社員・若手社員が増えているといいます。OJTや研修で、正しい話し方を教えることはもちろん大切ですが、「なぜ敬語を使うのか」を説明すれば、納得して自ら学んでもらえるでしょう。

INDEX

若者言葉、バイト敬語、謙譲語もどき

「最近の若者は敬語を使えない」というのは、いつの時代も変わらない先輩社員の嘆きです。実際、文化庁が実施する「国語に関する世論調査」では、国語が「非常に乱れていると思う」「ある程度乱れていると思う」と答えた人の割合が65%を超え、また、そう回答した人のうち「敬語が使えない」という点を挙げた人が6割を超えています。(令和元年度「国語に関する世論調査」の結果 文化庁)

若者と敬語の話題でよく挙げられるのが、「いいっすね」「そうっすか?」など「っす」を多用する若者言葉や、「〇〇になります」「○○でよろしかったでしょうか」といった、いわゆる「バイト敬語」、必要のない場面で「~させていただく」と言ったりする「謙譲語もどき」などです。

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社員の「言葉」が会社の価値を左右する

敬語もまた、時代とともに変わっていくとはいうものの、ビジネスパーソンにとって「言葉」は非常に大切な要素です。「言葉」には、その人の物の考え方・感じ方・人生観・性格・生育環境・教養などが表れます。商談も、会議も、職場でのコミュニケーションも、取引先への連絡も、日常の電子メールでのやり取りも、各種書類の作成も、すべて「言葉」を用いて行います。そこで使われる社員の言葉が、会社の評価に大きな影響を与えるのは間違いありません。

PHP通信ゼミナール『正しくきれいな話し方・書き方』では、精神分析医のエリック・バーンが打ち出した、人間関係のキーワードである「ストローク」の考え方が紹介されています。人間関係のストロークには「プラスのストローク」と「マイナスのストローク」があり、前者は相手が心地よく感じる接し方、後者は相手が不愉快な気持ちになる接し方を意味します。プラスのストロークは豊かな人間関係を築く鍵であり、具体的には「温かい言葉」「優しい言葉」「明るい言葉」「前向きな言葉」「真面目な言葉」を投げかけることが重要となります。プラスのストロークは、相手からもプラスのストロークを引き出します。そのため「人間関係が快い状況に回り始める」と説明されています。

そういったことを考えあわせると、新入社員、若手社員のあいだに社会人として適切な話し方を身につけてコミュニケーション力を高め、仕事そのもののレベルアップを図ってもらうことが欠かせないということがわかります。

なぜ敬語を使うのか

いうまでもなくビジネスパーソンは、社会人としての正しい言葉づかい、なかでも「敬語」をマスターしなければなりません。しかし、理由を聞かないと納得して動き出さないのが昨今の若者の特徴です。私たちは「なぜ敬語を使うのか」について若手社員にどのように説明すればいいでしょうか。
そこで、敬語の働きについて、同テキストから一部抜粋してご紹介しましょう。敬語の働きを知ることで、敬語を使う理由がわかってきます。

(1)社会のけじめを表す
尊敬語や謙譲語などの敬語を使うことによって、いわゆる「縦社会」における相互の立場が明確になり、社会的および組織的な秩序を保つ働きがある。

(2)相手への敬意を表す
敬語には、相手に対する「敬意」を表す働きがある。「先生や先輩の地位や能力への敬意」「恩恵を与えてくださるお客様への敬意」「人として尊敬している人物への敬意」などを、敬語を使って表現する。

(3)良い人間関係をつくる
敬語を使って相手への気配りを表すことで、コミュニケーションが円滑になり、よりよい人間関係を構築していく働きがある。敬語には言葉に「丸み」をつける働きもある。

「敬語」は5種類もある

敬語はもともと「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類でしたが、2007年の文化審議会国語分科会の答申により、次の5種類に分類されるようになりました。

・尊敬語
相手を敬う語。動作・状態・事物などを高めて言い表す。「いらっしゃる」「おっしゃる」「なさる」「お使いになる」「お忙しい」など。

・謙譲語I
相手を直接敬うために、相手を立てて述べる。「伺う」「申し上げる」「差し上げる」「お目にかかる」など。

・謙譲語II(丁重語)
自分の行為やものごとを謙虚に伝える語のこと。「参る」「申す」「いたす」「おる」「小社」「拙著」など。「謙譲語I」は「立てる相手がいる」のに対して、「謙譲語II(丁重語)」には「立てる相手がいない」という違いがある。

・丁寧語
聞き手に対して丁寧に表現する語のこと。「です」「ます」「ございます」など。

・美化語
ものごとを美化して述べる語のこと。「お酒」「お料理」「ご祝儀」など。

間違いやすい敬語をチェック!

敬語を正確に使うのはかなり難しく、それなりに経験を積んだビジネスパーソンでも、細かい部分で間違った使い方を覚えている可能性があります。

「ウチ」と「ソト」での使い分け

特に注意が必要なのは、「ウチ」と「ソト」での敬語の使い分けです。

(1)社内(ウチ)では目上の人に対して「尊敬語」を使う
 例「課長がおっしゃったことに賛成です」

(2)他社の人(ソト)と話すとき、自社の人(ウチ)には「謙譲語」を使う
 例「私どもの課長もそう申しておりました」

(3)自社のAさん(ウチ)の身内の人(ソト)と話すとき、Aさんには「尊敬語」を使う
 例「(電話でAさんの奥さんに対して)Aさんはすぐにお戻りになるとおっしゃっていました」

「たとえ上司であっても、他社の人と話すときには『呼び捨て』にする」といったルールは常識的ともいえますが、新入社員や若手社員の中には、知らない人がいる可能性もあります。こうした点は、研修などでしっかり教えていく必要があります。

「バイト敬語」問題

いわゆる「バイト敬語」の問題も近年よく指摘されています。主に接客用語などで、日本語として間違った敬語表現が広まっており、新入社員や若手社員が使っている可能性もあります。

×「1万円からお預かりします」
〇「1万円をお預かりします」

×「こちらがご注文の商品になります」
〇「こちらがご注文の商品です」

過剰な敬語「~させていただく」

近年の傾向として、丁寧に話そうとする意識が強すぎるためなのか、過剰な敬語がよく使われているようです。例えば何でもかんでも「~させていただきます」という言い方をする人が増えていますが、かえってきれいな日本語でなくなっている場合もあります。
そもそも「~させていただきます」という表現は、「相手に許可を受ける場合」と「そのことで恩恵を受ける気持ちを表す場合」に使う言葉です。それ以外の場面では、「~しております」「~いたします」などの表現で敬意は十分伝わります。

「二重敬語」に注意!

「過剰敬語」とも呼ばれる「二重敬語」は、上司や先輩社員でも間違って使ってしまうことがあるので注意しなければなりません。二重敬語とは、「ひとつの言葉に敬語を重ねる言い方」のことです。誤用しがちなパターンをいくつかご紹介しましょう。

×部長がお読みになられました(「お読みになる」+「られる」)
〇部長がお読みになりました(もしくは「読まれました」)

×部長がおっしゃられました(「おっしゃった」+「られる」)
〇部長がおっしゃいました

×お客様はもうお帰りになられました(「お帰りになる」+「られる」)
〇お客様はもうお帰りになりました

これらに対して、複数の敬意表現の語を重ねて使うのは「二重敬語」にはなりません。下の例は、2つの言葉を助詞の「て」で連結した表現であって、二重敬語にはならず、許容範囲だとされています。

〇部長が書類をお読みになっていらっしゃいます
〇お客様が昼食を召し上がっていらっしゃいます

こういった例をみてみると、私たちも改めて敬語を正しく身に付ける必要があることに気づかされます。新入社員や若手社員だけでなく、上司や先輩も彼らの手本として状況に応じて正しい敬語を使えるよう、まずは日頃から意識することが大切なのではないでしょうか。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『正しくきれいな話し方・書き方』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

通信教育『正しくきれいな話し方・書き方』はこちら

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森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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