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階層別研修とは? 実施の目的、メリットから教育体系図の作り方まで解説

2024年5月10日更新

階層別研修とは? 実施の目的、メリットから教育体系図の作り方まで解説

人的資本経営が注目される中、従来の実施してきた階層別研修の見直しをしたいという人事担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、階層別研修の実施目的をあらためて確認し、メリットや注意点、体系図の作り方など、人事としておさえておくべきポイントを解説します。

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階層別研修とは

階層別研修とは、社内における役職や立場、勤続年数、経験をもとに社員を「階層」に分け、それぞれに実施する研修のことです。階層の定め方は企業や業種によって異なりますが、一般的には以下の4つに分けられます。

  • 新入社員
  • 若手社員(入社2-3年目)
  • 中堅社員(~主任・係長)
  • 管理職(課長・部長)

階層によって、求められる役割・知識・スキルはさまざまです。入社したての新入社員と経験を積んだ中堅社員では、望まれる「在り方」は大きく異なることでしょう。そのため、企業は各階層に最適な研修を企画し、実施することになります。

階層別研修の実施目的

階層別研修を効果的に実施するためにも、あらためて階層別研修の目的を整理しましょう。具体的には次の3点です。

  • 階層ごとに求められる役割を理解させる
  • 階層に適したスキルアップを促す
  • 社員の成長意欲を育てる

それぞれの目的について解説します。

階層ごとに求められる役割を理解させる

社員に求められる役割は階層によって異なります。では、貴社の社員の皆様はその役割をきちんと理解し、職場で実践しているでしょうか。たしかに多くの企業では職能/職務等級ごとに役割を明確に定義しているでしょう。しかし、それを社員が理解し、実践できているかは別の話です。そこで階層別研修では、「いま、どのような役割を期待されているのか」「現状の自分はどうか」「今後はどうあるべきか」をしっかりと考えさせ、態度・行動変容を促したいものです。

階層に適したスキルアップを促す

新たな階層に移行したる社員のスキルアップを促すことも、階層別研修の実施目的の1つです。階層が上がれば求められるスキルも高度化・多様化します。その結果、思うように成果を出せなかったり、成長が停滞する社員も出てくるでしょう。人事部としては現場の上司によるOJTや個人的な自己研鑽に委ねるのではなく、スキルアップを支援する環境整備をすすめることが大切です。外部の専門研修に参加させたり、通信教育を受講させるなど、教育機会とメニューを階層別に提示し、知識やスキルの底上げを図っていく必要があります。

社員の成長意欲を育てる

階層別研修には社員の意欲を引き出し、主体性を高めるという側面もあります。企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現代社会では、学んだ知識や習得スキルが今後も変わることなく役立ち続ける保証はありません。そのため、どの階層の社員であっても自主的に学び続ける意欲が求められます。階層別にセレモニー的な集合研修を実施しておしまいというのではなく、前述したような研修メニューを提示しつつ、社員の成長意欲や主体性を育むフォロー施策を用意したいものです。

階層別研修のメリット

階層別研修がもたらすメリットを理解しておくことで、それをおさえた有意義な研修を実施できます。階層別研修の代表的なメリットは、次の2つが挙げられます。

  • 自分の「現状」を把握できる
  • 従業員間でスキルを共有できる
  • モチベーションが向上する

自分の現状と課題を把握できる

階層別研修では、会社が期待している役割をあらためて確認することができます。また、別の部門や事業場につとめる同じ階層の社員と一緒に研修を受けることから、現状の自分を客観視して把握し、課題を発見するよい機会になります。

スキルやノウハウを共有できる

同じ階層の社員同士であれば共通の課題をもっているものです。それらの解決のヒントを得られる点は、個別指導やOJTにはない階層別研修のメリットといえるでしょう。講師のアドバイスやはもちろん、研修参加者どうしのコミュニケーションにより、それぞれが有するスキルやノウハウを職場の別なくが全員が共有できる点も大きな利点といえます。

モチベーションが向上する

階層別研修は参加した社員のモチベーションアップにつながります。自身の役割やめざすべきゴールのイメージが明確になれば、社員の態度行動が変わります。また、同じ悩みや課題をもつ社員とともにその解決に向けて研修を受けることで、自信や挑戦意欲も生まれてきます。

階層別研修のデメリットと注意点

階層別研修にはメリットがある一方、課題・デメリットも存在します。「せっかく研修を実施したのに残念な結果に終わってしまった」ということにならないようにしたいものです。

  • 研修のセレモニー化(形骸化)
  • 研修慣れ、マンネリ化
  • スケジュール調整の難しさ

主なものは上記の2点ですので、注意点を確認しておきましょう

研修のセレモニー化(形骸化)

階層別研修でよくありがちなのがセレモニー化、形骸化です。新入社員の導入研修や新任管理職の昇格研修は、ともすれば単なるセレモニー化、儀式化してしまうことがあります。確かに研修にも入社や昇格を祝福する意味合いもありますが、せっかく時間とコストを費やして実施する以上、「実施すること」「参加すること」に意義があるわけではありません。研修の目的をきちんと認識したうえで参加させる必要があります。

研修慣れ、マンネリ化

社員研修は繰り返しているとどうしてもマンネリ化しがちです。これは社員の「研修慣れ」や「飽き」の問題もありますが、企画をしている人事部が「例年通りでよし」としてしまい、改善を行わないために生じる問題といえるかもしれません。外部研修への派遣ならともかく、内部で実施する研修では受講者満足度アンケートも割引いて考えたほうがよいかもしれません。

先輩社員が参加者に「あの研修? とりあえず出席していればいいよ」などと揶揄しているような研修では効果は期待できません。参加目的をもたせることは当然として、時流や価値観の変化に合わせて研修プログラムをアップデートしていくことを忘れないでください。

スケジュール調整の難しさ

参加者のスケジュール調整が難しい点も課題でしょう。社員を一斉に集めて同時刻に実施するというのは現場にとってはなかなか難しいものです。特に多忙な管理職を集めての研修は予定を組むのも一苦労といえます。

最近はオンライン研修も一般化しています。講師、参加者によっては「オンラインの方が集中できる」という声もあります。しかし、新入社員の導入研修や管理職の昇格研修のように、目的と内容によっては実際に集まって相互研鑽をしたほうが効果的なものは少なくありません。集合とオンラインのハイブリッド型の研修プログラムをぜひ検討してみてください。

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階層別研修体系図の作り方 4ステップ

階層別研修体系図とは、階層ごとに求められる能力をいくつかの領域に分けて整理した図のことです。階層ごとに必要な能力を「見える化」した体系図を作成することで、研修の内容や目的を明確化できます。より効果的な研修を実施できるよう、必ず体系図を作成しておくことをおすすめします。

とはいえ、「何から着手すればよいか分からない」と悩んでしまう担当者も多いのではないでしょうか。ここでは、人事担当者がおさえておきたい階層別研修体系図の作り方を、下記の4ステップに分けて解説します。

  • 階層別研修体系の「縦軸」と「横軸」の内容を定義する
  • 階層ごとに求められる役割を明確化する
  • 社内ニーズを調査する
  • 研修内容とゴールを決定する

1.階層別研修体系の「縦軸」と「横軸」の内容を定義する

階層別研修体系図の作成にあたり、まずは「縦軸」と「横軸」の内容を決めます。縦軸には役職や等級などの階層、横軸には教育の分類(研修内容)を定義することが一般的です。一例として、店舗を構える小売業の体系図を紹介します。

縦軸

本部:管理職・中堅社員・若手社員・新入社員
現場:店長・店舗スタッフ

横軸

職位・資格別教育
知識・スキル教育
その他

階層別研修体系図

2.階層ごとに求められる役割を明確化する

縦軸と横軸の内容が決まったら、縦軸の階層ごとに求められる役割を明らかにしましょう。このステップを踏むことで、研修の教育内容を具体化できます。

各階層にどのような役割を求めるかは、企業によって異なります。たとえば、新入社員であれば「社会人としての基礎を身に付ける」、中堅社員であれば「管理職と現場の橋渡し役としてチームや組織全体の成果を向上させる」、管理職であれば「経営層の経営方針やビジョンを正しく理解する」といったことが挙げられるでしょう。

3.社内ニーズに基づき研修テーマを決める

上記を整理したら、具体的な研修内容(テーマ)を決めていきます。このとき、必ず現場ニーズを反映したものにしていかなければなりません。各階層の社員やその上司などを対象にヒアリングを実施し、現場のリアルなニーズを抽出することがポイントです。

4.研修内容とゴールを決定する

最終ステップでは、ステップ2および3で確認した「階層ごとに求められる役割」や「社内ニーズの調査結果」をもとに、具体的な研修内容とゴールを決定します。例えば、下記のような項目を決めましょう。

  • 対象となる社員
  • 講師
  • 所要時間
  • 研修後のフォロー内容
  • 効果測定基準(必要に応じて)

何をもって研修の成功とするのか、効果測定基準が設定できるなら検討しておきましょう。もちろん研修の効果は数字で表せないものが多いですので、質的な成果イメージでも問題ありません。

なお階層別研修体系に職種別・目的別の教育項目を加えた「社員教育体系」をあわせて策定しておくことをおすすめします。

参考:社員教育体系のつくり方

新人、若手中堅、管理職、具体的な研修内容とポイント

階層別研修は、企業の現状に合わせたカリキュラムで行う必要があります。とはいえ、具体的なイメージが掴めず、「一般的な階層別研修のカリキュラム例を知っておきたい」と考える人事担当者もいることでしょう。 そこで、階層別研修の具体例と、おさえておくべきポイントを階層別に解説します。

新入社員研修

学生から社会人への意識の切り替えが求められる階層であることを意識した研修にすることがポイントです。適切なフォローアップ研修を行うことにより、新入社員が抱えがちな悩みや不安の解消も期待できます。

研修の具体例

  • 学生と社会人の違い
  • ビジネスマインド(職業観を育む)
  • ビジネスマナー、接客応対
  • ビジネス文書・メール
  • コンプライアンス・ビジネスモラル
  • 入社後の振り返りや共有
  • 仕事力の見直しや強化

PHP研究所ではでは新入社員を対象とした公開セミナーを実施しています。「愛される社会人になる」というテーマで研修を行い、オンボーディングと離職防止につなげるプログラムを提供しています。

参考:新入社員研修 愛される社会人になるために【研修プログラム】

参考:新入社員 フォローアップコース【研修プログラム】

若手社員研修

ひと通りの仕事を覚えた若手社員には、効率的に仕事を進めるために必要なスキルの習得を促す研修にすることがポイントです。また、「現状」と「あるべき姿」とのギャップを把握し、成長意欲を高められるような内容にすることも大切です。

研修の具体例

  • 若手社員に求められる役割
  • コミュニケーション
  • チームワーク
  • ロジカルシンキング
  • プレゼンテーション
  • 後輩指導

この階層には、「知っている・分かっている」から「できる」状態へと導き、仕事力を高める支援が望まれます。参考までに入社2~3年目の若手社員を対象としたPHP公開セミナーのプログラムを下記にご紹介します。

参考:若手社員研修 仕事力アップコース【研修プログラム】

中堅社員研修

チームや組織全体の成果拡大への貢献意識が求められる中堅社員の研修では、主体性を育む内容にすることがポイントです。業務のやりがいを得るためにも、「仕事を与えられている」のではなく「自らつくるもの」という意識を持てるような内容を取り入れるとよいでしょう。また、この階層は次期管理職を見据えての研修であることも重要なポイントです。

研修の具体例

  • 中堅社員に求められる役割
  • リーダーシップとフォロワーシップ
  • セルフマネジメント
  • ファシリテーョン
  • 目標設定・課題発見・課題解決
  • キャリアデザイン

PHP研究所の中堅社員を対象とした公開セミナーでは、主体性を発揮するための3つの条件と5つの力を養うプログラムで、今後の自己革新につなげていきます。

参考:中堅社員研修 意識革新コース【研修プログラム】

参考:係長研修 行動革新コース【研修プログラム】

管理職研修

組織運営やリスクマネジメントなどが求められる管理職には、業績アップ、イノベーション、部下育成など、さまざまなテーマが求められるでしょう。課長、部長など求められる職責により研修の内容とレベル感は異なってきます。

研修の具体例

  • 管理職に求められる役割
  • 業績管理・目標管理
  • 部下育成・OJT
  • チームビルディング
  • コーチング、フィードバック、1on1などコミュニケーションスキル
  • コンプライアンス・マネジメント
  • メンタルヘルスマネジメント
  • 人事考課

プレイヤーとして優秀だった社員が、マネジャーとしても力を発揮できるとは限りません。明確なビジョンに基づくリーダーシップ、部下がもっている情報や意見、やる気や主体性、可能性等を引き出すマネジメント力の育成がポイントといえるでしょう。

参考:課長研修 マネジメント革新コース【研修プログラム】

参考:部長研修 部長力強化コース【研修プログラム】

まとめ:効果的な階層別研修でリーダー育成と組織開発を

新入社員・若手社員・中堅社員・管理職など「階層」ごとに実施する階層別研修には、社員に求められる役割を自覚させ、階層に適したスキルアップを促す効果があります。社員間におけるスキルの共有やモチベーションアップにつながる点も、階層別研修のメリットといえます。研修の実施にあたっては、目的やその内容の明確化に役立つ「階層別研修体系図」を作成するのもおすすめです。同時に、定期的に研修内容を見直す必要もあります。

PHP研究所が提供している公開型の階層別研修ではセミナーは、各階層に応じて研修内容やレベルを差別化しています。しかし、すべての研修に共通する「5つの原則」があります。これは創設者・松下幸之助のリーダーシップ、マネジメント体系から独自開発したもので、以下の5つで構成されています。

  • 1)使命を正しく認識すること
  • 2)素直な心になること
  • 3)人間観をもつこと
  • 4)自然の理法に従うこと
  • 5)自主責任経営を心がけること

どれも抽象的な表現にみえますが、この「5つの原則」を実践する人材は、明確な目的意識と責任感をもって主体的に仕事に取り組むことができ、やりがいと成果への実感を手にすることができます。また「5つの原則」が組織の共通言語になれば、社員間で使命感が共有され、お互いの関係の質が向上します。

新入社員のときから「5つの原則」を認識して仕事に取り組む人材は、やがて組織をけん引するリーダーとしての成長が期待できます。そして、そうした一人ひとりの態度行動がイノベーションを生み出す「組織風土」をつくっていきます。詳しくは下記をご覧ください。

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