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ピープルマネジメントとは? 人的資本経営との関係を解説

2024年1月 9日更新

ピープルマネジメントとは? 人的資本経営との関係を解説

ピープルマネジメントは、メンバーとのコミュニケーションに配慮した伴走型のマネジメント手法です。人材の価値を最大限に活かす人的資本経営を実現に導く方法として、注目度が増しつつあります。本記事ではピープルマネジメントと従来のマネジメントの違い、導入のメリット、人的資本経営との関係性について確認しましょう。

なお、人的資本経営の概要については下記をご覧ください。

参考記事:人的資本経営とは? そのメリットや推進方法を具体的に解説

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「ピープルマネジメント」とは?

ピープルマネジメントとはメンバーと向き合い、一人ひとりに応じた接し方や目標設定によってチームのパフォーマンスを上げるマネジメント手法のことです。従来のマネジメントの違いや、ピープルマネジメントの重要な理論「クルト・レヴィンの法則」について解説します。

従来のマネジメントとピープルマネジメントとの違い

従来のマネジメントとピープルマネジメントは、目的は同じですが、ゴールに達するまでのプロセスや考え方が異なります。一言でいえば、パフォーマンスに着目し、成果や目標の達成度を重んじるのが従来型のマネジメントです。ピープルマネジメントでは定量評価を重視せず、マネジャーが一人ひとりに働きかけ、各メンバーが最大限のポテンシャルを発揮することを目指します。

従来のマネジメント

従来型のマネジメントは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を駆使して、成果の最大化を目指すパフォーマンス特化型のマネジメントです。管理職の役割は部下の管理・監督、評価が中心で、目標の未達やパフォーマンス低下の責任を追う立場にありました。
従来型のマネジメントでは、従業員の資質を最大限に発揮するべく、人員の配置や育成を戦略的に行うタレントマネジメントが有効な手法の一つでした。客観的な評価の実現を目指して、従業員の成果を可視化できるツールを取り入れるのも特徴です。

ピープルマネジメント

ピープルマネジメントは一人ひとりの「成功」にコミットすることで、成果の最大化を目指す方法です。従業員のエンゲージメント(組織に対する愛着)やモチベーションを高めることを重視するのが特徴といえます。
管理職の役割は、各メンバーに伴走し、それぞれの可能性を見出すことに重点がおかれます。ピープルマネジメントは従来の手法と比べ、上司と部下の距離が近く、心理的な関係性が強固な在り方だといえるでしょう。

ピープルマネジメントに関連する「クルト・レヴィンの法則」

ピープルマネジメントへの理解を深めるうえで、「環境が変わると、社員の行動も変化する」と提言する「クルト・レヴィンの法則」を参考にする必要があります。
具体的には、人の行動は個人の特性と環境が相互に関連して生じるものだという主張です。要するに、環境が変われば、同じ人間でも異なる言動をとるということです。環境には、物理的な場所以外に、上司や同僚などとの人間関係も含まれます。
「クルト・レヴィンの法則」をマネジメントに取り入れると、マネジャーの働きかけ方が変わり、部下の行動も変化する期待がもてるといえるでしょう。

参考記事:エンゲージメントとは? 組織風土改革との関係やマネジメントを解説│PHP人材開発

ピープルマネジメントが注目される理由とは

近年、ピープルマネジメントが注目されている背景には、次の事情があります。これらの変化がピープルマネジメントにどのように関係するのか解説します。

・働き方の多様化
・雇用の流動化
・ITの進歩

働き方の多様化

副業やパラレルワークなど働き方が多様化し、Z世代やミレニアム世代と呼ばれる新たな価値観をもつ世代が職場で活躍するようになりました。そうした変化の中で、従業員の価値観や考え方の変化は、従来のマネジメント手法を通用しなくする一因となっています。
ピープルマネジメントは、メンバーの個性を認めて、多様な価値観を受け入れるマネジメント手法です。各メンバーのポテンシャルを引き出すことができれば、これまでよりも高い成果を生み出すことも不可能ではないでしょう。

雇用の流動化

雇用の流動化が進み、終身雇用が主流の時代から、転職が当たり前の環境へと変わりました。一つの職場にこだわらず、より条件に見合う求人があれば、積極的に職場を移す人が増加傾向にあります。転職までいかずとも、配置転換や社内起業制度を活用して、望んだキャリアを実現させることも可能です。
企業には、事業継続に欠かせない人材の流出を防ぐため、従業員を繋ぎとめる施策が求められます。エンゲージメント向上に役立つピープルマネジメントをとりいれることによって定着率アップを目指すという企業も増えています。

ITの進歩

AIやIoTの普及で、企業を取り巻く環境は、今まで以上のスピードで変化しはじめました。ビジネスの現場では分業化が高度に進展し、人がすべき作業との切り分けが明確になってきています。一方、こうした環境変化のなかで、新しい仕事のやり方についていくことができず、労働意欲を失ってしまう従業員も少なくありません。
マネジャーが一人ひとりと真摯に向き合うピープルマネジメントでは、メンバーのモチベーションが落ちている場合に適切な介入ができる可能性が高くなります。
企業には、環境の変化に取り残されないために、組織の適応力を上げる取り組みが求められているのです。

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ピープルマネジメントを導入するメリット

ピープルマネジメントを導入するメリット

従来までのトップダウン型のマネジメントの方法では、上司と部下のコミュニケーションの機会が限られ、うまく機能しないケースも多々ありました。人を軸に据えたピープルマネジメントでは、コミュニケーションが改善し、上司はメンバーの変化に気付きやすく、適切なフォローができるようになります。ここでは、ピープルマネジメントを導入するメリットについて解説します。

メンバーとの信頼関係が深まる

上司は今まで以上にメンバーと向き合うようになり、強い信頼関係が構築されます。従来のマネジメント手法では、年に1回~数回の定期面談の機会しか上司と部下の話し合いの場がないのが一般的でした。
一方、ピープルマネジメントでは頻繁に対話の機会を持つことが重要とされます。従業員の成長を支援するコミュニケーションのとして、1on1ミーティングが代表的な手法です。1on1の面談は、部下が話したいことをテーマにするのが基本です。上司が一方的に業務のアドバイスを行うのではなく、部下の話に耳を傾ける意識を持ちましょう。

メンバーの自主性が高まる

メンバーの強みや個性を引きだすピープルマネジメントは、個人の自主性が養われます。フィードバックの機会が頻繁にあるため、部下は自己の役割を意識し、チームの貢献を重んじた行動をとるようになるでしょう。
上司との対話の機会が多いからとはいえ、指示待ちの状態では、行動力や思考力は高められません。伴走型のピープルマネジメントは、上意下達で何をすべきか指示を出すのではなく、成果達成につながる行動を、部下とともに考える支援が求められます。
部下はフィードバックをもとに、自らの成長のためにどういった行動をとればいいのか、内省の機会が増えるでしょう。自分自身と向き合ったうえで行動を起こす自主性がおのずと育まれます。

メンバーのエンゲージメントが向上する

上司と部下の距離が近いピープルマネジメントが実現できれば、従業員の組織に対する帰属意識や愛着が高まっていきます。お互いの関係性に問題がなければ、温かみや心地よさを実感できるでしょう。
マネジメントの手法が変化したことで、従来の周囲を引っ張る決断力がありながらも近寄りがたい存在から、気軽に相談できる親しみやすい存在へと、良いリーダー像が変わりつつあります。メンバーからの評価が上がれば、マネジャーの心理的な充足感につながり、相乗効果も期待できるでしょう。

ピープルマネジメントと人的資本経営の関係

ピープルマネジメントは、近年メディアを中心に耳にする機会が増えた「人的資本経営」を実現する手段の一つに位置づけられます。人的資本経営とは、人材という資本の価値の最大化を目指して、企業価値の向上に繋げる経営に対する考え方です。
岩本隆氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授)は「人的資本経営の本質は、松下幸之助が主張していた『事業は人なり』の精神の実践にある」と提言しています。もし経営の本質が人材の価値向上にあると定義すれば、成功の要因となるのはマネジメント力の強化です。
人的資本経営は、ともすれば情報開示(ディスクロージャー)や情報の取得方法など、ノウハウめいた議論になりがちです。どういった情報を公にし、情報収集はどのように行うべきかという方法論も重要には違いありませんが、人的資本経営の表層部に過ぎません。
より大切なのは人を活かす経営で何を実現できるかです。現場の最前線で活躍するマネジャーは、人的資本経営を体現する方法として、ピープルマネジメントの旗振り役になる必要があります。人材に焦点を当てた「ピープル・マネジメント」スキルの向上は、日本企業に共通する課題といっても差し支えないでしょう。

参考記事:
ダイバーシティの推進~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
リーダーシップの育成~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
エンゲージメントの向上~人的資本経営を実践する│PHP人材開発

ピープルマネジメントを実践するための4つのスキル

ピープルマネジメントを実践するための4つのスキル

ピープルマネジメントを実践する上で必要とされる、主なスキルは以下の4つです。

(1)ジョブアサインメントスキル
メンバーの能力や適性に応じた仕事の割り当てを行い、成果を出すように支援する

(2)エンゲージメント向上スキル
組織と個人に働きかけ、エンゲージメントを高める

(3)キャリアカウンセリングスキル
対話を通じてメンバーのキャリアビジョンを明確にし、その実現のために支援する

(4)1on1スキル
メンバーと向きあい、相互理解を深める

多くの外資系企業等では、こうしたスキルはマネジャーに必須のものとされ、企業が学習機会を提供すると同時に、マネジャーを査定する際の評価項目にもなっているようです。

まとめ:ピープルマネジメントのエキスパート養成は若手・中堅の時期から

ピープルマネジメントは、言い換えると「人の心に火をつけ、目標達成のための行動を起こすよう働きかける」ことです。人、モノ、金、時間、情報といった経営資源の中でも、人は最も潜在力を秘めていると同時に、最もマネジメントが難しい対象でしょう。なぜなら、人には心があり、その心の状態は変化しやすいからです。
人をどう活かすかという難易度の高いテーマは、反復学習と経験を通じて、ある程度の長期スパンで学んでいく必要があります。マネジャーになってから学ぶということでは間に合いません。したがって、若手社員・中堅社員の時期から計画的・継続的に学習を重ね、ピープルマネジメントのエキスパートを養成しておくことが、人を活かす経営、すなわち人的資本経営の成功につながるでしょう。

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