ピープルマネジメントとは? 人的資本経営との関係を解説
2026年3月 3日更新

ピープルマネジメントとは、メンバーと向き合い、一人ひとりの可能性を引き出し、組織の成果を最大化するためのマネジメント手法のことです。人材の価値を最大限に活かす人的資本経営を実現に導く方法として、注目度が増しつつあります。本記事ではピープルマネジメントと従来のマネジメントの違い、導入のメリット、人的資本経営との関係性について解説します。
なお、人的資本経営の概要については下記をご覧ください。
参考記事:人的資本経営とは? そのメリットや推進方法を具体的に解説
INDEX
「ピープルマネジメント」とは?
ピープルマネジメントとは、慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師の岩本隆氏によれば、「従業員一人ひとりのポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを最大化させる」マネジメントのことです(※1)。
「個々人の掛け合わせによりチームとしてのパフォーマンスも最大化させ、企業の生産性を最大化させる」「個々人が、イキイキと働いて、活躍し、成長することによって、企業を持続的に成長させる」効果が期待できるとしています。
(※1)PHP研究所主催「ナラティブリーダーシップ研修プログラム説明会」岩本隆氏の投影資料より
従来のマネジメントとピープルマネジメントとの違い
従来のマネジメントとピープルマネジメントは、目的は同じですが、ゴールに達するまでのプロセスや考え方が異なります。一言でいえば、パフォーマンスに着目し、成果や目標の達成度を重んじるのが従来型のマネジメントです。ピープルマネジメントでは定量評価を重視せず、マネジャーが一人ひとりに働きかけ、各メンバーが最大限のポテンシャルを発揮することを目指します。
従来のマネジメント
従来型のマネジメントは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を駆使して、成果の最大化を目指すパフォーマンス特化型のマネジメントです。管理職の役割は部下の管理・監督、評価が中心で、目標の未達やパフォーマンス低下の責任を追う立場にありました。
従来型のマネジメントでは、従業員の資質を最大限に発揮するべく、人員の配置や育成を戦略的に行うタレントマネジメントが有効な手法の一つでした。客観的な評価の実現を目指して、従業員の成果を可視化できるツールを取り入れるのも特徴です。
ピープルマネジメント
ピープルマネジメントは一人ひとりの「成功」にコミットすることで、成果の最大化を目指す方法です。従業員のエンゲージメント(組織に対する愛着)やモチベーションを高めることを重視するのが特徴といえます。
管理職の役割は、各メンバーに伴走し、それぞれの可能性を見出すことに重点がおかれます。ピープルマネジメントは従来の手法と比べ、上司と部下の距離が近く、心理的な関係性が強固な在り方だといえるでしょう。
岩本氏は、従来のマネジメントとピープルマネジメントの違いを、「金太郎飴型」と「プロスポーツ型」という言葉で表現しています。
従来型のマネジメント(=金太郎飴型)は、部下を一定の基準まで引き上げ、誰もが同じように組織で活躍できるよう育てる、画一的な手法です。切っても切っても同じ顔が出てくる金太郎飴のように、均質な人材を育てることが主流でした。
一方、ピープルマネジメント(=プロスポーツ型)は、一人ひとりの強みや個性に合わせて関わり方を変え、能力を最大限に引き出すマネジメントです。プロスポーツのチームが、選手ごとに異なる育成や指導を行うのと同じ考え方です。
つまり、ピープルマネジメントでは、管理職にはこれまで以上に高い観察力や判断力、指導力が求められるということです。

(図)PHP研究所主催「ナラティブリーダーシップ研修プログラム説明会」岩本隆氏の投影資料を基にPHP研究所で作成
ピープルマネジメントに関連する「クルト・レヴィンの法則」
ピープルマネジメントへの理解を深めるうえで、「環境が変わると、社員の行動も変化する」と提言する「クルト・レヴィンの法則」を参考にする必要があります。
具体的には、人の行動は個人の特性と環境が相互に関連して生じるものだという主張です。要するに、環境が変われば、同じ人間でも異なる言動をとるということです。環境には、物理的な場所以外に、上司や同僚などとの人間関係も含まれます。
「クルト・レヴィンの法則」をマネジメントに取り入れると、マネジャーの働きかけ方が変わり、部下の行動も変化する期待がもてるといえるでしょう。
タレントマネジメントとの違い
ピープルマネジメントと似た言葉に「タレントマネジメント」があります。両者は目的が重なる部分もありますが、アプローチや重視する視点に違いがあります。
タレントマネジメントは、社員のスキルや経験、評価情報などを可視化し、戦略的に配置・育成・登用を行う仕組みです。組織全体を俯瞰し、「誰がどのポジションに最適か」「将来の幹部候補は誰か」といった観点で、人材をデータベース化し、最適化を図るのが特徴です。
ピープルマネジメントが「関わり」のアプローチであれば、タレントマネジメントは「仕組み」のアプローチだといえるでしょう。
このどちらか一方だけが機能していても十分ではありません。戦略的な人材配置の仕組みがあっても、現場での関わりが不十分であれば人は育ちません。逆に、日々の関わりが丁寧でも、組織全体の設計がなければ個々の成長には限界があるでしょう。経営環境が不確実性を増すなかで、「仕組み」と「関わり」の両面から人材を活かすことが、これからの企業経営には求められています。
参考記事:エンゲージメントとは? 組織風土改革との関係やマネジメントを解説│PHP人材開発
ピープルマネジメントが注目される理由とは
近年、ピープルマネジメントが注目されている背景には、次の事情があります。これらの変化がピープルマネジメントにどのように関係するのか解説します。
・働き方の多様化
・雇用の流動化
働き方の多様化
副業の解禁やテレワークの普及などにより、働き方はこの数年で大きく変わりました。さらに、Z世代やミレニアム世代といった、新しい価値観をもつ世代が職場の中心になりつつあります。かつてのように「一つの会社に長く勤め、異動や転勤は会社の方針に従う」という前提は、もはや当たり前ではなくなっています。
一方で、現在の管理職層の多くは、従来型の価値観のもとで育ってきました。そのため、これまで通用していた指導方法や育成スタイルが、若い世代には合わなくなっている場面も少なくありません。
こうした変化の中で、ピープルマネジメントは注目されています。それぞれの強みや可能性を引き出し、自律的なキャリア形成を支援できれば、従来型の一律的なマネジメント以上の成果を生み出すことも期待できます。
雇用の流動化
これまでの日本企業は、新卒一括採用を中心とした雇用形態が一般的でした。しかし近年は、専門的な知識や経験をもつ人材を中途採用するケースが増え、キャリア採用の比率が高まっています。
雇用の流動化が進むことは、働く人にとっても企業にとってもメリットがあります。個人はより自分に合った環境を選べるようになり、企業は即戦力となる人材を獲得しやすくなります。
その一方で、より良い条件や魅力的な機会があれば、人材が積極的に転職する可能性も高まっています。こうした環境下では、事業の継続に欠かせない人材の流出を防ぐことが重要です。そのためには、若手のうちから適材適所で活躍の機会を与え、エンゲージメントを高めていくピープルマネジメントの導入が求められています。
ピープルマネジメントを導入するメリット
従来までのトップダウン型のマネジメントの方法では、上司と部下のコミュニケーションの機会が限られ、うまく機能しないケースも多々ありました。人を軸に据えたピープルマネジメントでは、コミュニケーションが改善し、上司はメンバーの変化に気付きやすく、適切なフォローができるようになります。ここでは、ピープルマネジメントを導入するメリットについて解説します。
メンバーとの信頼関係が深まる
上司は今まで以上にメンバーと向き合うようになり、強い信頼関係が構築されます。従来のマネジメント手法では、年に1回~数回の定期面談の機会しか上司と部下の話し合いの場がないのが一般的でした。
一方、ピープルマネジメントでは頻繁に対話の機会を持つことが重要とされます。従業員の成長を支援するコミュニケーションのとして、1on1ミーティングが代表的な手法です。1on1の面談は、部下が話したいことをテーマにするのが基本です。上司が一方的に業務のアドバイスを行うのではなく、部下の話に耳を傾ける意識を持ちましょう。
メンバーの自主性が高まる
メンバーの強みや個性を引きだすピープルマネジメントは、個人の自主性が養われます。フィードバックの機会が頻繁にあるため、部下は自己の役割を意識し、チームの貢献を重んじた行動をとるようになるでしょう。
上司との対話の機会が多いからとはいえ、指示待ちの状態では、行動力や思考力は高められません。伴走型のピープルマネジメントは、上意下達で何をすべきか指示を出すのではなく、成果達成につながる行動を、部下とともに考える支援が求められます。
部下はフィードバックをもとに、自らの成長のためにどういった行動をとればいいのか、内省の機会が増えるでしょう。自分自身と向き合ったうえで行動を起こす自主性がおのずと育まれます。
メンバーのエンゲージメントが向上する
上司と部下の距離が近いピープルマネジメントが実現できれば、従業員の組織に対する帰属意識や愛着が高まっていきます。お互いの関係性に問題がなければ、温かみや心地よさを実感できるでしょう。
マネジメントの手法が変化したことで、従来の周囲を引っ張る決断力がありながらも近寄りがたい存在から、気軽に相談できる親しみやすい存在へと、良いリーダー像が変わりつつあります。メンバーからの評価が上がれば、マネジャーの心理的な充足感につながり、相乗効果も期待できるでしょう。
ピープルマネジメントと人的資本経営の関係
ピープルマネジメントは、近年メディアを中心に耳にする機会が増えた「人的資本経営」を実現する手段の一つに位置づけられます。人的資本経営とは、人材という資本の価値の最大化を目指して、企業価値の向上に繋げる経営に対する考え方です。
岩本隆氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授)は「人的資本経営の本質は、松下幸之助が主張していた『事業は人なり』の精神の実践にある」と提言しています。もし経営の本質が人材の価値向上にあると定義すれば、成功の要因となるのはマネジメント力の強化です。
人的資本経営は、ともすれば情報開示(ディスクロージャー)や情報の取得方法など、ノウハウめいた議論になりがちです。どういった情報を公にし、情報収集はどのように行うべきかという方法論も重要には違いありませんが、人的資本経営の表層部に過ぎません。
より大切なのは人を活かす経営で何を実現できるかです。現場の最前線で活躍するマネジャーは、人的資本経営を体現する方法として、ピープルマネジメントの旗振り役になる必要があります。人材に焦点を当てた「ピープル・マネジメント」スキルの向上は、日本企業に共通する課題といっても差し支えないでしょう。
参考記事:
ダイバーシティの推進~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
リーダーシップの育成~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
エンゲージメントの向上~人的資本経営を実践する│PHP人材開発
ピープルマネジメントを実践するための5つのスキル
ピープルマネジメントを実践する上で必要とされる、主なスキルは以下の5つです。
(1)ジョブアサインメントスキル
メンバーの能力や適性に応じた仕事の割り当てを行い、成果を出すように支援する
(2)キャリアコンサルティングスキル
対話を通じてメンバーのキャリアビジョンを明確にし、その実現のために支援する
(3)エンゲージメント向上スキル
組織と個人に働きかけ、エンゲージメントを高める
(4)コーチング&1on1スキル
メンバーと向きあい、相互理解を深める
(5)フィードバックスキル
コーチング&1on1によって得られた情報をベースに、部下の改善点・課題を伝える
多くの外資系企業等では、こうしたスキルはマネジャーに必須のものとされ、企業が学習機会を提供すると同時に、マネジャーを査定する際の評価項目にもなっているようです。
一方、日本企業では、すべてを網羅した研修は多くないのが現状です。しかし、「人をどう動かすか」「どうすれば主体的に働いてもらえるか」といった問いの前提には、マネジャー自身の人間観やあり方が重要です。
PHP研究所のピープルマネジメント研修では、まずマネジャー自身のあり方を見つめ直すことから始め、そのうえで各種スキルを体系的に学ぶ設計になっています。
マネジャーのレベルアップを図り、ピープルマネジメントを強化していくことは、これからの企業経営において欠かせない取り組みといえるでしょう。
ピープルマネジメントの実践事例
事例:若手・中堅社員のモチベーション向上につながったケース(建設業A社・従業員500名)
建設業A社では、若手・中堅社員のエンゲージメント低下と、それに伴う離職増加が課題となっていました。
従来は、「指示命令型」のマネジメントが中心で、部下は上司の背中を見て自ら学び、成長することが求められていました。そのため、一人ひとりの強みや志向が十分に考慮されておらず、メンバーの意欲低下につながっていました。
そこで同社は、管理職を対象にPHP研究所の講師派遣研修を活用し、以下のプログラムを実施しました。
- コーチング研修
- 1on1研修
- フィードバックスキル研修
特徴的だったのは、座学だけで終わらせず、研修と研修の間に職場での実践期間(インターバル)を設けたことです。学んだスキルを現場で実践し、振り返りを行うことで、管理職自身の「腹落ち」や持論化を促しました。
その結果、次のような変化が見られました。
- 管理職のメンバーに対する見方(人間観)が変化
- 引き出すコミュニケーションにより、メンバーの自発性が向上
- 適切なフィードバックを通じて、成長支援を強化
- 管理職と部下の関係性が改善
一律的な関わり方から脱却し、メンバー一人ひとりの強みや個性を踏まえた育成を実践したことで、若手・中堅社員のモチベーションが高まり、組織全体の活性化につながりました。
まとめ:ピープルマネジメントのエキスパート養成は若手・中堅の時期から
ピープルマネジメントは、言い換えると「人の心に火をつけ、目標達成のための行動を起こすよう働きかける」ことです。人、モノ、金、時間、情報といった経営資源の中でも、人は最も潜在力を秘めていると同時に、最もマネジメントが難しい対象でしょう。なぜなら、人には心があり、その心の状態は変化しやすいからです。
人をどう活かすかという難易度の高いテーマは、反復学習と経験を通じて、ある程度の長期スパンで学んでいく必要があります。マネジャーになってから学ぶということでは間に合いません。したがって、若手社員・中堅社員の時期から計画的・継続的に学習を重ね、ピープルマネジメントのエキスパートを養成しておくことが、人を活かす経営、すなわち人的資本経営の成功につながるでしょう。
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