中堅社員の後輩指導~成長を支援するポイントや教え方の4原則を紹介
2023年3月24日更新
中堅社員の重要な役割の一つに、後輩の指導があります。すでに多くの現場を経験し、第一線で働く先輩として、若手社員に対して適切なアドバイス、フォローアップ、フィードバックを行い、その成長を促していきます。本稿ではそのポイントをご紹介します。
中堅社員が後輩に協力を求めるときのポイント
中堅社員は、年齢としては20代後半から30代くらいになります。役付前なので部下という位置づけではないものの、すでに複数の後輩を指導、サポートしている人が多いはずです。
また、中堅社員は現場の中心となって仕事をしますから、さまざまな場面で後輩に何らかの協力を依頼することがあるでしょう。その際重要なのは、後輩に用件を伝えて「じゃあ頼むよ」と簡単に終わらせるのではなく、「何をしてほしいのか」「どんな方法でやればいいのか」「目的は何か」「いつまでにやってほしいのか」など、「5W1H」でしっかりと説明することです。さらに途中経過を尋ねたり、完了の報告があれば、ねぎらいの言葉をかけたりするなど、依頼後のフォローも大切です。
中堅社員が後輩を教えるときの4原則
後輩を指導するといっても、単に一方通行で何かを説明するだけでは、本当の意味で後輩を育てることにはなりません。そこで大切になるのが、コミュニケーションです。指導した内容を後輩がしっかりと理解し、自分の力でそれを習得し、実行できるように仕向けることです。
つまり指導とは、後輩自身の「自習自得を支援する行為」だといえるでしょう。そのためには教えっぱなしではなく、説明のあと、「これはどういう意味だった?」「これはどんな方法でやればいい?」といった確認の質問をして、後輩自身の頭で考えさせること肝要です。
中堅社員が後輩に教えるときの4つの原則をご紹介しましょう。
教え方の原則(1)習う気にさせる
ある程度経験を積んだ中堅社員が、まだ経験が少ない若手社員を教えるコツの一つ目は、相手の目線に合わせて、一つずつ、ゆっくりと伝えることです。特に最初の段階では、「今から教えることが、今やっている仕事とどんなつながりがあるのか」「これを習得することで、何ができるようになるのか」といったことを丁寧に説明します。習得する理由を知ることで、後輩の中で納得感が生まれ、身につけたいという気持ちになりやすくなるでしょう。
教え方の原則(2)やってみせる
指導をするうえで、単に知識として伝えるだけではなく、教える側の中堅社員が実際にやってみせることも重要です。「学ぶ」とは「真似る」ことでもあり、特に初めて教わる事柄は、それができる人がやっているところを見せて、真似をしてもらうことで、理解が深まります。やってみせる際、専門用語を当たり前のように使ったりせず、まだ知識が少ない若手にも理解できる話し方を心がけましょう。
教え方の原則(3)やらせてみる
やってみせたあとは、後輩に実際に「やらせてみる」段階に移ります。後輩にとっては初めてやることですから、すぐにうまくいかないのは当たり前です。その前提に立って、何度でも繰り返しやらせることで、徐々にコツをつかんでもらうようにします。うまくいかなくてもイライラせず、できるまで辛抱強く待つことも非常に大切です。
教え方の原則(4)フォローアップする
指導したあと、適当な時期に、後輩が正しくできているかどうかをチェックします。教えた通りにできていない場合、できるようになるまで根気よく指導を継続します。うるさい先輩だと思われたくない気持ちが働いて、(少し違うけど、この程度ならまぁいいか)と見逃してしまうと、その後輩は、間違いに気づかないまま経験を重ねることになります。将来取返しがつかないことにならないように、しっかりとフォローアップしましょう。
後輩へのフィードバックのポイント
指導の後、後輩がうまくできていること、正しくできていることについては、それを認めるフィードバックを行い、定着させていくことが大切です。その際、「なぜうまくできたのか」を振り返ることで確信が生まれ、行動が強化されていきます。
参考記事:部下指導の最強の武器となる人材育成法「フィードバック」│PHP人材開発
プラスのフィードバック
プラスのフィードバックには、次のような質問をするといいでしょう。
・うまくできた理由として、何がよかったと思いますか?
・どんな点に注意してやったのですか?
行動を修正するフィードバックとは
後輩が間違っていること、してはいけないやり方をしていることがあれば、修正すべき点を明確にしたうえで、理由もきちんと述べながらフィードバックする必要があります。
単に正しい方法を一方的に伝えるのではなく、あくまでも、後輩が自分自身で間違いに気づくことが重要です。そのためには、次のような質問をするといいでしょう。
・うまくいかなかった理由は何だと思いますか?
・今のやり方だと、どんな問題があると思いますか?
・例えばこういう点について、何か問題があると思いますか?
自信を持たせて継続につなげる
若手社員が自信をもって仕事に取り組めるよう、指導する中堅社員は、本人が自信を持てるようになるやり方を教えたり、本人が自信を身につけられる機会を提供したりしていくことが大切です。
フィードバックで継続支援
一つには、適宜フィードバック等を行いながら、後輩社員が仕事を継続できるように支援していく方法があります。継続するうちにコツがつかめる可能性が高まりますし、継続することで自然に成果も上がっていきます。また継続できたこと自体も自信につながり、モチベーション向上につながっていくことでしょう。
目標を細分化し、小さな「達成」を積み重ねる
経験の浅い若手社員は、達成が難しいと感じられる目標が与えられると、自信のなさから、継続する意欲がそがれてしまう可能性もあります。その状態を克服させるには、大きな目標を細分化して、目の前の小さな目標に一つずつ取り組むように仕向けるといいでしょう。小さな目標を一つひとつ達成することで、そのたびに小さな自信が生まれます。これを数多くこなしていくことで、やがて大きな自信が持てるようになるはずです。
将来の管理職を育てる
中堅社員は、後輩である若手社員や新入社員を指導し、成長をサポートする経験を通じて、指導スキルを身につけ、人材育成に対する考え方を自身のなかで確立していきます。また、その経験を通じて、仕事の意味を正しく認識し、自らの立場を再認識することで、中堅社員自身の、やる気と使命感をもって主体的に仕事に向き合う態度へとつながっていきます。
次期リーダーとなる中堅社員には、ぜひ後輩の指導育成を任せたいものです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『[新版]中堅社員パワーアップコース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『[新版]中堅社員パワーアップコース』
自分自身の役割を正しく認識し、その役割を広げ、周囲と協働して問題解決する手法を学びます。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。