経営リーダーに求められる「コンセプチュアルスキル」~目利き力を高める
2026年5月12日更新

モノや情報が氾濫する現代、周りに流されず、何が正しいのか、何が本当に価値のあるものなのか、それらを見抜くための「目利き」の能力が、あらゆる人にとって不可欠になっています。本稿では、ビジネスの現場で経営リーダーが目利き力を磨き高めるためにはどうすればいいのか、その考え方と具体的な方法を考察したいと思います。
「コンセプチュアルスキル」の重要性
変化の激しい時代にあって、マネジメントに求められる能力として、「コンセプチュアルスキル」の重要性が増してきました。コンセプチュアルスキルとは、カッツモデル(※1)を構成する3つのビジネススキルの一つですが、何が正しく何が間違っているのかを見極めたり、複数ある選択肢の中から最適なものを見抜いたり、あるいは複雑な問題の中から真の解決策を導き出したりする能力のことを指します。
私たち日本人には、「目利き力」なじと表現したほうが馴染みやすいかもしれません。
カッツモデルにおいては、組織の中で、上位階層に上がるほどコンセプチュアルスキルの重要性が増すと説明されています(図表参照)。重要な職責を担っているリーダーが、組織を間違った方向へ導かないためにコンセプチュアルスキルを高めるしごく必要に迫られていることは、至極当然のこととも言えるでしょう。
【図表】カッツモデル(マネジメントに求められる能力)

※1 ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・カッツ教授が提唱している「組織内の職務遂行において重要なビジネススキル」のことで、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルを図式化したもの
参考記事:コンセプチュアルスキルの高め方とは? 構成要素一覧も紹介│PHP人材開発
「内省」によって体験を振り返る
しかし、ここで留意すべきは「体験しっ放し」にしないということです。体験には自分にとっての学びがたくさん埋め込まれていますが、見たり聞いたりするその瞬間には気づかないことが多いもの。従って、そこから学びを引き出すためには「内省」によって体験を振り返る作業が求められるのです。
内省とは、自分の考えや行動などを深く省みる行為のことであり、「反省」と同義の概念です。そして、実業界で成功した経営者たちの多くは、異口同音に内省の重要性について言及しています。
「今日一日をふりかえり、失敗や成功を見出し、その味をかみしめる。これが体験である。反省することなしにポカンと暮してしまえば、これは体験にならない」
(『物の見方考え方』松下幸之助、PHP研究所)
「つねに内省せよ、人格を磨くことを忘れるな」
(『生き方』稲盛和夫、サンマーク出版)
「リーダーの行動を考えるときには、むしろ立ち止まることも重要なことだと思っています」
(『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』岩田松雄[元・スターバックスコーヒージャパン株式会社CEO]、サンマーク出版)
内省を通じて、自分の取った行動とその結果を振り返り、「なぜ、うまくいったのか(いかなかったのか)?」「そこから何を感じたのはんか?」などを自分の頭のなかで反すう芻・整理することで、新たな気づきや学びが引き出され、持論が形成されるのです。
問いかけによる人材育成がカギを握る
経営リーダーは、内省を通じて自身の目利き力やリーダーシップを高めると同時に、部下の内省をサポートする役割を負っていることも自覚しなければいけません。
とはいえ、内省を促すことはそれほど難しいことではありません。事あるごとに、次のような問いを投げかけることで、相手が内省モードに入っていくのです。
「今期、大きな成果を上げることができた要因は何だろう?」
「今回の失敗から何を学んだ?」
「今起きている状況に対して、君ならどんな手を打つ?」
「3年後、どんなビジネスパーソンになりたい?」
「それに対して現状はどう?」
継続的に問いかけられることによって人は徐々に成長します。なぜならば、内省を通じて思考が深まり、より多くの学びや気づきを得られるからです。
ただし、他のスキルと違って目利き力の開発には時間がかかります。従って、企業における人材育成にあたって、「上司」や「自己啓発支援」「計画的なローテーション」など、ある程度の長期ビジョンにもとづいた能力開発の機会と環境を整えることが重要になります。
昨今の経営を取り巻く環境は激しく変化し続け、変化すること自体が常態化しつつあると言うことができます。
今後いっそう、過去の成功体験や常識が役立ちにくくなるからこそ、今まで見たことも聞いたこともない出来事に直面したとき、その体験からしっかり学びを引き出し、それを他のメンバーと共有したいものです。
そう考えるならば、激変する環境は新たな知恵や発想を生み出す源泉であり、目利き力を鍛え高めてくれる絶好の人材育成の機会にもなるとも言えるでしょう。
出典:『[実践]理念経営Labo』2026年SPRING 4-6(Vol.17)
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP理念経営研究センター主席研究員
1990年、PHP研究所に入社、研修局に配属。以後、一貫して、PHPゼミナールの普及、および研修プログラムの開発に取り組む。2001年から2003年まで神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。中小企業診断士。「松下幸之助経営塾」ファシリテーター。著作に『"強い現場をつくるリーダー"になるための5つの原則』(PHP通信ゼミナール)』がある。




































































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