ワールドカフェとは? 目的や効果、進め方のポイントを解説
2023年9月28日更新
ワールドカフェとは、カフェのようなくつろいだ雰囲気の中でメンバーが自由に対話を行う手法です。誰でも気軽に発言できる場にすることでさまざまな意見が集まり、新たな発想や気づきが生まれます。今回はワールドカフェの詳しい内容や得られる効果、具体的な実施方法を紹介します。
ワールドカフェとは
ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で自由に対話する手法です。メンバーが相互理解を深めながら、全員の意見や知識を集めることができる方法であり、ビジネスの現場でも採用されています。ここでは、ワールドカフェの由来や目的、ワークショップとの違いなどを解説します。
ワールドカフェの由来
ワールドカフェは、1995年にアメリカで開発・提唱された手法です。会議の参加者たちが会議前にテーブルを囲み、カフェのような雰囲気でおしゃべりが始めたのがワールドカフェのきっかけとなりました。クロス代わりの模造紙に思いついたことを落書きをしながら対話を続け、そこから多くの知識や洞察が生まれたということです。この経験が、主体性と創造性を高める話し合いの場となるワールドカフェの発想につながりました。
このような経緯で発案されたワールドカフェにおける「対話」は、「会話」や「議論」とは異なります。 会話は日常的に行われるコミュニケーションであり、情報交換や挨拶という形式で行われます。
これに対し、対話は会話の中で出てくる言葉や情報について「どのような考え方・感情があるか」など、言葉の意味や価値観を伝え合うことです。
一方、議論は結論を出すことを目的に、お互いに自分の意見や価値観を出し合うことです。決められた時間の中で結論を出すことが求められます。
対話はこのような結論を出すことを求めるものではなく、言葉の中にある価値観を交換する役割があります。
ワールドカフェの目的
ワールドカフェは少人数に分かれたテーブルで自由に対話し、他のテーブルとメンバーを交替して対話を続けます。結果として参加した全員の意見や知識を集めることができる手法です。決まった結論を出したり課題を解決したりする目的ではなく、参加者全員が意見を交わしてお互いの理解を深め、新たな気づきを得ることを目的とします。
ワークショップとの違い
ワールドカフェは、ワークショップとは異なります。ワークショップはファシリテーターの進行により、与えられたテーマや課題に対して話し合い、共同作業を行うものです。
一方、ワールドカフェは対話のみの活動であり、ワークショップのようにチームで何かを作りあげるということはありません。自由な対話を促して意見やアイデアを出しやすいようにするため、司会や細かなルールを設けないという点でもワークショップと異なります。
ワールドカフェにも全体の進行役はいますが、各グループの対話はメンバーに任せます。このような手法がとられるのは、対話により相互理解を生み、一体感を醸成するという目的があるためです。
ワールドカフェの効果
ワールドカフェを取り入れることで、さまざまな効果を得られます。ここでは、ワールドカフェの実施による効果やメリットをみていきましょう。
自由な意見を引き出す
ワールドカフェではリラックスした場が演出されるため、自由な雰囲気で自分の意見を伝えやすいのがメリットです。会議室における張り詰めた雰囲気での会議は緊張して発言できないという人でも、ワールドカフェであれば自分の意見を出せることがあるでしょう。
ワールドカフェではひとつのテーブルに4〜5人程度と少人数で話し合うため、大勢の前で話すよりも緊張感がありません。 相手との距離が近くなり、耳を傾けてもらいやすいことで、自由で率直な発言を出しやすいこともメリットです。
お互いの理解を深める
ワールドカフェで話し合うことにより、参加者同士の理解が深まります。ワールド・カフェの目的には勝ち負けがなく、お互いに共通点を見いだしたり親しみを感じたりして、信頼関係を築けるのがメリットです。
また、ワールドカフェではいくつかの段階があり、各段階でテーブルを移動します。グループごとに出された意見やアイデアは次のテーブルに引き継がれるため、直接対話を交わさない人の意見にも触れることができます。
グループで実際に対話するのは少人数でも、メンバーが入れ替わることで参加者全員と意見を共有できる効果を得られる点もメリットです。多くの意見を共有できれば、新しい発想やアイデアの創出にもつながるでしょう。
対話を重ねることで、メンバーには一体感が生まれます。共感できる相手との出会いは新たな人脈づくりにもつながるでしょう。
他部署と連携して行えば、社内コミュニケーションの活性化にも役立ちます。
ワールドカフェの問題点
ワールドカフェにはデメリットもあります。話し合いの結論を出すことを求められていないため、意見がまとまりにくいという点です。そのため、何らかの結論を導き出したい場合や、早急に解決策を出さなければならない会議などには向いていません。
また、ワールドカフェは自由に発言ができるために話が逸れてしまいがちです。設定されたテーマから離れ、雑談になる可能性もあるでしょう。方向性が変わって元のテーマに戻せない場合、ワールドカフェを開催した目的を果たせなくなることもあります。
ワールドカフェの進め方
ワールドカフェは目的・ルールの設定から始まり、テーマを決めて実施します。ここでは実施手順を解説します。
目的とルールを確認する
まず、ワールドカフェを行う目的とルールを設定します。基本的にワールドカフェは、参加者が自由に意見を出し合い、相互理解を深めることを目的として実施します。たとえば次のような目的で行えば、価値のある話し合いにできるでしょう。
●全員が自由に発言して交流する
●いつもとは違うメンバーと話をしてお互いに理解を深める
●さまざまな意見を集める
●新しいアイデアを発掘する
●相互理解を深め、メンバーの信頼関係を構築する
参加者全員が自由に話し合うという本来の目的を実現するには、ルールの設定も必要です。主に、以下のようなルールを設定します。
1.参加者との対話を楽しむ
2.発言している人の意見をきちんと聞く
3.質問して対話を広げる
4.他人の意見を否定しないで受け入れる
5.テーマを意識する
対話では結論を無理にまとめようとせず、その場で出た話題を楽しむようにしましょう。また、自分が話すばかりではなく、他の人の話に耳を傾けることも大切です。
わからないことがあれば何でも質問しましょう。質問することで理解が深まります。
話が逸れてテーマから逸脱してしまわないよう、テーマを意識して話をすることも重要です。テーマからの脱線は、ワールドカフェのために設けた時間を無駄にしてしまいます。 テーマを意識した対話を行うことで、本来の目的が達成されます。
テーマを決める
ワールドカフェではテーマを設定します。参加者の対話を促し、考えるきっかけを提供するためです。
テーマに基づいて、メンバーが積極的に話し合いをしたくなるような「問い」を提示することが必要であり、「問い」は力強いものでなければなりません。また、イエス・ノーで答えられないオープンな問いかけであることが大切です。
「力強い問い」を作る
ワールドカフェを成功させるためには、「問い」が重要です。 参加者が当事者意識を持ち真剣に対話できる問いを作ることで、メンバーに「考える」という行為を促し、より深い探求と学習を伴う対話が生まれます。
テーマに沿った適切な問いをすることで対話を深め、新しいアイデアを生み出す可能性があるでしょう。
「力強い問い」とは、次のような内容の問いを指します。
●シンプルで誰もが答えやすい
●発想を促しやすい
●テーマに集中して探求することを促す
●これまでの思い込み気づかせる
●理想の状態や新しい可能性を開く
●より深い内省を促す
●自分のこととして考えられる
ただし、「問い」について難しく考えすぎないことが大切です。問いを考える際は、「どのような場にしたいか」「どのような対話をしてほしいか」という点を意識して設定するとよいでしょう。
オープンでポジティブな問いを設定する
「問い」は、オープンであることも必要です。オープンな問いとは「イエス・ノーで答えられない問い」を指します。
二者択一の問いかけは、どちらか一方を選択した時点で会話が終わってしまいます。イエス・ノーではなく、多様な意見を引き出し、未来について考える問いにすることが大切です。
また、「問い」は意識がポジティブになるようなテーマであることも欠かせません。ネガティブなテーマは批判やマイナスの感情を生み出します。ワールドカフェは自由な発想で新しいアイデアを生み出すことも目的としており、テーマは未来を見据えたポジティブなものであることが必要です。
同じ内容でも、「社内コミュニケーションが不足しているのはなぜか」という問いはネガティブな回答になりがちですが、「社内コミュニケーションを活性化するには何が必要か」というテーマであれば建設的でポジティブな回答を得られます。
グループごとにテーマについて話し合う
ワールドカフェは、4〜5人ごとのテーブルに分かれます。第1ラウンドは20〜30分の時間が設けられ、時間内でテーマについて自由に話し合います。少人数に分けることで、自分の意見を気軽に発言しやすく、相手の話もよく聞けるようになるでしょう。発言の機会が多くなるのもメリットです。
テーブルに模造紙とペンを用意し、テーマについて自由にメモをしながら話し合います。話し合いの前には緊張をほぐすため、アイスブレイクを行うことも大切です。
アイスブレイクとしてよく行われるのは、グループのメンバー同士の自己紹介です。名前や 所属、仕事内容とともにプライベートな話題を盛り込むことで、自然に和やかな雰囲気になるでしょう。進行役がテーブルを回りながら自己紹介への拍手を促せば、ほかのテーブルにも伝わって同じく拍手が起こるなど、場を盛り上げることができるでしょう。
全体を巻き込んだアイスブレイクもおすすめです。ワールドカフェでは最終的に全体で話し合うことになるため、全員が仲間意識を持てるようなアイスブレイクを行えば、一体感を作りだせます。
他のテーブルへ移動して同じテーマについて話し合う
第2ラウンドに移る前に、テーブルに残るホスト役を1人決めなければなりません。ホスト役を決めたら各テーブルに1人のホストを残し、他のメンバ ーは別のテーブルに移動します。
ワールドカフェは常に少人数で話し合いをする方式ですが、席替えをすることにより、話し合いが終わったあとは参加者全員と話をしたような感覚になる効果を得られます。
席替えによって出会う新しいメンバーは、前テーブルの意見・アイデアをもたらすため、結果として数多くの考え方や情報を共有できるのです。
ホストの決定とメンバーの移動では、それぞれのプロセスを進行役がリードしていくとスムーズに進みます。
新しいメンバーが揃ったら改めて自己紹介し、ホストがテーブルでの対話内容を説明するという流れです。移動してきたメンバーは自分のテーブルで出たアイデアを紹介し、同じテーマについて話し合いを進めます。新しく出てきた意見は否定せず、受け入れながら話し合うことがポイントです。
最初のグループに戻り情報を共有する
第3ラウンドでは、他のテーブルに移ったメンバーが最初のテーブルに戻り、移動先で話し合った内容や共有した情報を取り入れながら、自由に意見・アイデアを出し合います。
改めて話し合うことで、新たな気づきを得ることもできるでしょう。
ラウンド数に決まりはなく、さらに多くしたり少なくしたりすることもできます。話し合いをするテーマも1つに限らず、2つ以上にしてもかまいません。
全体で意見やアイデアを共有する
すべての段階が終了したら、各グループが出した意見やアイデアを全体で共有します。単なる報告ではなく、感じたことや考えたこと、メンバー全員に伝えたい気持ちなどを共有することが大切です。意見を無理にまとめて結論を導いたり、優劣をつけたりすることは避けましょう。
ここまでの手順は一例であり、必ず同じ進行でなければならないということはありません。 順番にこだわり過ぎて、参加者の意欲を損なうことのないように注意してください。
あくまでメンバーが自由に話し合える環境を尊重し、進行役は場の様子を注意深く観察しながら、柔軟に対応していきましょう。
ワールドカフェを行うポイント
ワールドカフェを行う際は、以下のポイントを押さえましょう。
●結論を出そうとしない
●テーブルを工夫する
結論を出そうとしない
ワールドカフェでは、結論を出そうとしないことが大切です。全体の共有でも、結論を発表することはありません。「結論を出さないといけない」と考えるとプレッシャーがかかり、自由な意見交換を妨げます。
参加者が自由に意見を出し合い、共有することがワールドカフェの意義目的であることを理解しましょう。
参加者全員がリラックスした雰囲気で対話をすることで意見交換が楽しくなり、普段は出てこないアイデアが生まれる可能性があります。
テーブルを工夫する
ワールドカフェの特徴は、おもてなしの演出となるテーブルのセッティングです。テーブルには、以下のものをセッティングします。
●模造紙
●カラーペン
●トーキング・オブジェクト
●小物
●お菓子・飲み物
模造紙は、各テーブルに1枚用意します。複数の色の模造紙を用意して各テーブルごとに異なる色にすれば、会場が華やかになるとともに、参加者も自分の好きな色を選ぶなど楽しむことができます。カラーペンは、描きやすく見やすいよう、複数の色で太めのものを用意してください。
トーキング・オブジェクトとは、話す人が手に持ち、持っていない人は話を聴くという区別をするために役立つものです。
また、会場やテーブルの上には、参加者をもてなすという気持ちを込めてテーブルクロスや季節を感じられる花などの小物を飾ります。
遊び心のあるおもちゃやゲームがあれば、話し合いが始まるまでメンバーの話題や交流に役立つでしょう。ドリンクやスイーツを用意すれば、よりリラックスした雰囲気作りができます。話し合いの前や休憩時間には、リラックスできる音楽を流すのもおすすめです。
模造紙を上手に利用する
模造紙は、話し合いながら思いついたことをメモするために使います。話し合いの中で出た思いや考え、アイデアや疑問など、テーブルに置いた模造紙にカラーペンで自由に書きましょう。
文字だけでなく絵や矢印などで表すなど、各自が自由に書き込みます。きれいに整理する必要はありません。模造紙に書かれた内容は議事録の役割もします。ホスト役は前のメンバーとの話し合いの内容について、模造紙に書かれていることを新しいメンバーに見せながら説明することができるでしょう。
話の経過やさまざまな思い、意見が書かれた模造紙は、あとからどのような話し合いが行われていたのかを確認するのにも役立ちます。どのような経緯でアイデアが出されたか、どのような流れで話し合いが行われたかなど、プロセスを知ることができるのもメリットです。
トーキングオブジェクトを用意する
トーキングオブジェクトは、話をする人が手に持つアイテムです。対話が継続する中で発言する人に次々と手渡され、メンバーはオブジェクトを持つ人の話にじっくり耳を傾けるという役割をします。
トーキングオブジェクトの意味を把握することで、特定の人が長く話し続けてしまうという状況を避けることができます。トーキングオブジェクトを発言の少ない人に渡し、発言を促すという役割を果たすこともできるでしょう。
具体的には、トーキングオブジェクトをテーブルの中央に置き、発言したい人がそれを手に取って発言が終わったら元の位置に戻すというルールで使います。トーキングオブジェクトには、主に棒や石、ボール、小さなぬいぐるみ、お手玉など手にしやすいものが用いられます。
まとめ:ワールドカフェで相互理解を深めよう
ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気で少人数による対話を行うことです。決まった結論を得たり問題の解決を図ったりする目的ではなく、参加者全員が自由に意見を交わしてお互いの理解を深め、新たな気づきやアイデアを得ることを目的とします。
メンバーを変えることで多くの人の考えや知識に触れることができ、多様な価値観の理解につながるでしょう。
ワールドカフェでは、必ずテーマを設定します。テーマは、新しい発想を促してエネルギーが湧いてくるような「力強い問い」であること、「オープンでポジティブな問い」であることが大切です。
社内コミュニケーションの活性化や相互理解、新たなアイデアの創出などを目指し、ワールドカフェを導入してみてはいかがでしょうか。