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研修技法の種類と効果的な使い方~人事部、研修講師ならば理解しておきたい

2016年8月 5日更新

研修技法の種類と効果的な使い方~人事部、研修講師ならば理解しておきたい

研修講師は、研修技法を有効活用して、限られた時間の中で、より高い効果を追求していく必要があります。研修技法は1000種類以上あるといわれますが、代表的なものをご紹介します。

研修技法は創意工夫の産物

研修技法の歴史は、研修自体の歴史でもある。江戸時代の丁稚制度・徒弟制度の中では、個別教育に重きが置かれたが、明治以降、近代産業が推し進められる中で、組織的・計画的な教育が実施されるようになった。標準的な能力と知識を身につけた者を「大量生産」しなければならなくなったわけである。特に第二次世界大戦後になると、アメリカ式の経営理論が輸入され、同時に、その理論に基づくさまざまな研修技法が着目された。そして現在、活用されている研修技法は、「研修をいかに効果的に進めていくか」という創意工夫の中から、数多の先人達が生み出してきたものである。

現在、研修技法は1000種類以上があると言われている。マニュアルを読めば即実施できる技法から、ある程度「場数」を重ねる中から得られる指導技術が必要な技法まで多種多様である。いずれにせよ、研修技法はそれ自体だけでは意味をなさない。受講者という対象、講師という使い手があって、初めて有効性を発揮する道具であると言えよう。

研修技法は目的ではない

研修は限られた時間の中で実施される。この制約のもとでできる限りの効果を追求しようとすれば、「研修技法をいかに有効活用するか」に辿り着く。とはいえ、ただ研修に技法を盛り込めばよいというものではない。

・その研修技法は、当該研修のねらいに合致しているか?
・研修コース全体の時間の中で、その技法実施に必要な時間が確保できるかどうか?
・技法の内容や効果を、講師や事務局が十分に理解しているか?
・その技法を効果的に実施できるだけの力量が講師(技法の使い手)にあるか?
・受講者のレベル(経験、知識、能力、意欲)と、その技法が合致しているか?

以上のような点を確認した上で、研修と受講者と技法のマッチングを意識しながら、導入、実施すべきものである。

技法はあくまで、その研修のねらいを達成するための方法のひとつに過ぎない。講師が新しく知り得た技法を試してみたいがために、もしくは研修を盛り上げたいがために奇をてらった技法を導入するのは、本末転倒の研修と言わざるを得ない。

研修技法の種類と特徴

研修のねらいに適する技法を選ぼうとすれば、当然、さまざまな技法の特徴や進め方を理解しておく必要がある。一つひとつの技法には、それぞれの特徴やねらいとするところがあり、大きくは次のように分類することができる。

1)講義法系

[技法例]講演、講話、報告会

[特徴]
・幅広い対象者に対応できる
・実施が比較的容易
・実施人数にあまり制約を受けない
・実施効率がよい
・受講者にあまり抵抗感がない
・知識の付与に終始すると、単調になりやすい
・受講者が受け身になりがち

2)討議法系

[技法例]課題討議法、問題解決討議法、会議式指導法、ブレーンストーミング法、KJ法、バズセッション、ディベート、コンセンサス

[特徴]
・受講者中心で進めるので、主体性と自発性が高まる
・集団決定するため、結論が受け入れられやすい
・討議のプロセスで問題意識が高まり、動機づけになる
・他者からのフィードバックが得られやすい
・ある程度、時間的な余裕が必要
・一度に多数の受講者には対応しにくい

3)事例研究系

[技法例]ケースメソッド、ケーススタディー、インシデントプロセス、イン・バスケット、事例研究法

[特徴]
・一般論ではない「事例」なので、取り組みやすい
・事例から、原理原則論が学べる
・事例を通じて、疑似体験ができる
・事例を作成するのに負担がかかる
・事例に対する解答を出したことで満足してしまうきらいがある

4)ロールプレイング系

[技法例]ロールプレイング、フィードバック技法

[特徴]
・何らかの経験を伴うので、受講者の実感、達成感を得やすい
・理論ではなく、技能・態度等の訓練に適している
・結果に対する自己評価ができる
・受講者の自主性が求められる

5)教育ゲーム系

[技法例]アイスプレイキング、シミュレーションゲーム、ビジネスゲーム、コミュニケーションゲーム

[特徴]
・受講者が楽しく参加できる
・ゲームだけで終わらせると意味がない
・何百種類もあるので、それらを理解したり、適したものを選択したりする必要がある

6)自己診断系

[技法例]TA、価値観診断、メンバーシップ診断、リーダーシップ診断、マネジメント能力診断、管理者適応性診断、ストレス診断、性格診断、EQ診断

[特徴]
・受講者個々人の問題なので、高い関心をもって参加できる
・受講者のこれまでの価値観を一律に否定するようなことのないように注意する必要がある
・自分をよくみせたいという心理が働く場合は、適切な結果につながらない場合がある

研修技法を選択する

研修技法にこれだけの種類があると「当該研修に相応しいものを如何にして選択するのか」という問題に辿り着くだろう。もちろん「どのような研修効果を期待するのか」「研修のねらいは何か」という2点に照らし合わせれば、おのずと選択肢がみえてくるはずではあるが、他にも以下のような要素があり、複数の観点から総合的に判断して、より適切な技法を選ぶことが必要である。

・研修全体の流れ
・受講者のレベル(知識、経験)や職種
・受講者層の幅
・受講人数の多寡
・組織風土

決して正解があるわけではなく、過去にその技法を活用したからといって、今回の同じテーマの研修でもそれがまた有効であるとは限らない。教育担当者は、常に初めて実施するような新鮮な気持ちで、検討することが大切であろう。

研修技法はOJTや自己啓発にも利用する

各種の研修技法は、基本的には集合研修用に開発されたツールである。時間や場所といった制約下で、経済的に、効果的に、効率的に学びを促進させるために生み出された道具である。しかし、こうしたツールの利用を研修のみに限定するのはもったいない。各種研修技法を、研修だけではなく、OJTや自己啓発の手段として取り入れることは十分に可能である。全社レベルでこうしたツールが有効活用できるよう、研修で「使い方」を知らしめることも、育成担当者の役割のひとつである。

【事例1】会議は討議法で活性化!

・機械メーカーC社では、全ての会議室に「ブレーンストーミング(BS)法」キットが備え付けられている。
・効果的にメンバーのアイデアを引き出す手法であるBS法を会議の冒頭の段階で活用することで、特定の人間の発言に偏ったり、議論が収束したりすることを防ぐことに成功している。

【事例2】接客訓練にロールプレイング

・小売業F社では、週に一度、定期的に職場で、接客スキルの向上のために「ロールプレイング法」を使った訓練を実施している。
・接客の練習をすること以上に、ロールプレイングで顧客の役割を担う側のほうが、「顧客の目線や気持ちが、このロールプレイングを通じて体感できる」と好評。導入後は、「痒いところに手が届く」お店として、お客様からも満足の声が届いている。

【事例3】毎週朝礼で教育ゲーム

・IT系ベンチャーU社では、毎週月曜日の朝礼時に、5分程度でできるアイスブレイクを活用して、職場のコミュニケーション向上に努めている。
・大事なのは、義務感からではなく、楽しみながら行うこと。職場の仲間との一体感や協力することの重要性を、毎回再認識することも大切である。

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

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茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。
「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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