営業職や事務職におけるタイムマネジメント
2019年3月 4日更新
営業職や事務職において、タイムマネジメントを実践し、「働き方改革」を推進するポイントとは? 仕事も人生も充実させる考え方をご紹介します。
脳の働きを活用してタイムマネジメントに取り組む
各企業で「働き方改革」の取り組みが進むなか、働く人一人ひとりがタイムマネジメントを実践し、生産性を上げる取り組みは不可欠になってきました。そこで、前回(残業が減らない職場は「タイムマネジメント」で社員の意識改革を!)に引き続き、PHP通信ゼミナール『タイムマネジメントの基本と実践コース』から、タイムマネジメントを成功させる具体的な方法をご紹介していきます。
今回は、まず、人間の脳の働きを活用して時間をマネジメントする方法です。脳の働きに即した手法を取り入れれば、無理なく効率を高めていくことができるからです。
事前にイメージする
スポーツ選手が試合前に「イメージトレーニング」を行うように、例えば朝出社してから初めの5分間で、その日1日をどのように過ごすかを明確にイメージしておく。これをやるだけで、スタートから仕事のスピードが変わってくる。次に何をやるのかがすぐに思い出せるので、迷いなく集中した1日が送れる。
ご褒美を設定する
一つのタスクを達成したときに、例えば「これを終わらせたら甘い物を食べてよい」とか、「息抜きにニュースサイトを見てもよい」といった、ささやかなご褒美を設定しておく。そのご褒美が楽しみになって、集中力も仕事の質も上がる
規則正しく、疲れないように
規則正しい生活をして疲れないようにすることも、仕事のパフォーマンスに影響する。計画的に「休む」ことで、むしろ仕事の効率は高まる。例えば「50分間仕事をしたら10分間休むサイクルを設定する」とか、「絶対に残業しない日をつくる」といったことを決めて実践すれば、脳がそれに合わせて働き、高い集中力を保つことができる。
これら以外にも、脳が効率よく働く時間の使い方が紹介されています。タイムマネジメントを社員教育に採り入れる際には、ぜひ活用していただきたいと思います。
トップセールスパーソンのタイムマネジメントとは
また、タイムマネジメントは職種別に具体的に考えてみると、より推進が容易になります。先述の通信ゼミナールでは、営業職、なかでもトップセールスパーソンがどのように時間をマネジメントしているか、具体的な方法が紹介されています。つい残業が多くなりがちなセールスパーソンには、研修を通して、こうしたトップセールスの時間の使い方を学んでもらうのも生産性向上の近道ではないでしょうか。
商談の受け答えを予測してロールプレイを行っておく
商談においてお客様がどのような反応をされるかを数パターン予測し、「こう尋ねられたらこう答える」「これを求められたらこう対応する」といった受け答えの種類ごとに、事前にロールプレイを行っておく。準備を徹底することで、より短い時間、少ない面談回数での成約を実現する。
仕事を始める前に「日報」を書く
仕事の重要度や緊急度、必要な時間などをしっかりと見積もり、仕事前に「日報」を書き終えておくと、その行動計画通りに仕事をやり遂げられる可能性が高まる。「書いた通りに絶対にやりきる」という強い気持ちで取り組めば、生産性も上がるようになる。
書類をどう扱うかを即決する
一度手に取った書類は、その場で「対応する」「To Doリストに追加する」「報連相(報告/連絡/相談)する」「ファイリングする」「捨てる」などと即決する。同じ書類を二度も三度も見ないようにすれば、時間のロスを減らしていける。
他にもさまざまなタイムマネジメントのコツが紹介されており、それぞれの現場に応じた方法を導入することで、社員一人ひとりの動きが変わってくるはずです。
事務職のエキスパートのタイムマネジメント
事務仕事のタイムマネジメントに関しては、次のようなポイントがあげられています。一部を抜粋して紹介しておきましょう。
・「いつまでに」より「いつ始めるか」を常に意識する。
・1日のスケジュールのなかに楽しいタスクや単純作業のタスクをときどきはさんで、緩急のリズムをつくる。
・突然、飛び込んでくる仕事のために、アポイントメントやTo Doを入れすぎないようにして、あらかじめ空き時間を設けておく。
・自分の許容量を超えて仕事を依頼された場合、納期を延ばしてもらえるか相談したり、「自分ではやらない」という判断をして余裕のありそうな同僚に依頼したりする。
・「仕事の持ち帰りや休日出勤はしない」と明言することで、退社時間までにどうすれば仕事が完了できるか、集中力をもって取り組むことができる。
事務仕事に関して、会社によっては従来の作業パターンがすっかり定着しているケースもあると思いますが、まだまだ工夫する余地はあるはずです。ここでは、さまざまな工夫の仕方が掲載されているので、社員教育を通して自社に応用できる部分をとり入れることをお勧めします。
「人としての生き方」から考えてみる
PHP通信ゼミナール『タイムマネジメントの基本と実践コース』の監修者である本田賢広氏は、これまでに紹介してきたタイムマネジメントの考え方や具体的な手法に加えて、「人としての生き方」についても述べています。いくら仕事の生産性が上がっても、人としてよりよい生き方を見出せなければ、よい仕事をすること自体に意味がなくなります。よい仕事をしながら、同時によい生き方をすることで、いっそう充実した人生にしていきたいものです。これもまた、社員を健全に育てるためには重要な要素ではないでしょうか。
今、このときを生きる
仏教に、過去の心も現在の心も未来の心も「得られない・存在しない(不可得)」ものだという考え方がある。過去の心はすでに過ぎ去っているので滅している。現在の心も瞬時に過ぎ去っていく。未来の心も瞬時に現在の心になるので存在しない。だから過去のことに心を痛めても、現在のことに思い悩んでも、未来を心配しても意味がないということだ。それならば、過去にとらわれず、未来に思い悩まず、「今この瞬間」を精一杯生きるしかない。そのように生きれば、結果として日々の生活が充実する。
「タイム・イズ・ライフ」
「時は金なり」といわれるが、お金は失ってもまた稼ぐことができる。しかし失った時間は二度と戻ってこない。「時間は命(ライフ)そのもの」である。働いている時間、私たちは自分の命を使っている。人に協力してもらうときは、その人の命をいただいているということ。自分と相手の命に敬意を払い、お互いの時間、つまりお互いの命を大事に使うために、タイムマネジメントを実践してほしい。
他にも、生きていくうえで大切な考え方がいくつか述べられています。「タイムマネジメント」を導入される際には、社員一人ひとりの生産性を高め、残業を削減するというのはもちろんですが、それを一歩進めて、人生の充実につなげていくことを考えたいものです。そうすることで、誰もが時間をこれまで以上に大切に使うようになるのではないでしょうか。
※本記事はPHP通信ゼミナール『タイムマネジメントの基本と実践コース』を抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。