変革を起こすアンコンシャスバイアス研修。研修内容と導入のタイミング
2022年9月 8日更新
自分では気づかない偏見や思い込みは「アンコンシャスバイアス」とよばれ、仕事をするうえで大きな弊害をもたらすことがあります。その対策には、アンコンシャスバイアス研修が有効です。本記事では、アンコンシャスバイアス研修が職場にもたらす好影響や、研修を導入すべきタイミングなどを紹介します。
INDEX
企業変革の鍵を握る「アンコンシャスバイアス研修」
アンコンシャスバイアスとは、自分では気づかない偏ったものの見方や思い込みです。誰にでもあるもので、それ自体は悪いものではありません。しかし、ネガティブな方向に作用すると、企業活動にさまざまな悪影響を与えます。
変化の激しい経営環境において、企業には、固定的な観念にとらわれない、柔軟な思考で多様性を受け入れる変革が求められています。そのためには、社員一人ひとりが、アンコンシャスバイアスについて学習し、理解を深めておかなければなりません。
対策として有効とされているのが、アンコンシャスバイアス研修です。アンコンシャスバイアス研修は、これからの企業改革の鍵を握るといってよいでしょう。
アンコンシャスバイアス研修が職場にもたらす5つの好影響
アンコンシャスバイアス研修により職場にもたらされる好影響は、少なくありません。まず、アンコンシャスバイアスの影響が現れやすい人事考課を適切に行えるようになり、優秀な人材確保を実現します。また、アンコンシャスバイアスによるハラスメントを防ぐこともできます。
アンコンシャスバイアス研修の実施によりもたらされる好影響について、見ていきましょう。
1.適切な人事考課により優秀な人材の確保・育成を可能にする
アンコンシャスバイアスは、人事考課に悪影響を与える傾向があります。考課者訓練の一環としてアンコンシャスバイアス研修を実施し、考課者が偏見や思い込みにとらわれず人事考課ができるようになれば、部下の人事考課への不満は軽減されます。
アンコンシャスバイアスの影響により人事考課が適切に行われないケースとして、以下のような事例が考えられます。
- 残業や休日出勤の多い部下は仕事熱心と評価する
- 同じ趣味など日頃からよくコミュニケーションをとっている部下に甘い評価をつける
- 直近に成果を出した社員を高く評価する
- 仕事とは直接関係のない性別や年齢、国籍などの属性を判断に加える
- 気の合わない部下や前回の評価が低かった部下を低く評価する
アンコンシャスバイアス研修の実施により、このような偏った評価の排除が可能です。評価者がアンコンシャスバイアスを自覚し、客観的な基準のもとで適切な評価を行うことが期待できます。適正な考課を行うことができれば、若手の離職防止や育成につながるでしょう。
2.ハラスメントの防止につながる
アンコンシャスバイアスはハラスメントにつながりやすいといわれますが、教育・研修を行うことにより、その防止が可能です。無自覚の偏見は、特に女性や若者、少数派に対して現れやすくなります。一例をご紹介しましょう。
- 子どものいる女性は仕事よりも子育てを優先すべきだ
- 若者には忍耐力がない
- 外国人は自己主張が強く我が社の社風に合わない
このようなアンコンシャスバイアスが言動になって現れると、ハラスメントにつながることがあります。組織のリーダーや管理職など強い立場にある人は、特に注意が必要です。教育・研修を行い、各自がアンコンシャスバイアスの自覚を持つことで、ハラスメントの防止につながるでしょう。
3.マネジメント力が向上する
管理職やチームリーダーがアンコンシャスバイアスを自覚して適切に対処していくことで、マネジメントの質が向上します。
近年は、多様性を受け入れ共存共栄を目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進する企業が増えています。ダイバーシティ経営を実現するためには、多様性をポジティブにとらえ活かしていくマネジメント力が欠かせません。
アンコンシャスバイアス研修によってマネジメントの質が向上することで、社員の成長が促され生産性向上にもつながります。
4.社員や部署全体のパフォーマンス向上につながる
アンコンシャスバイアス研修では、アンコンシャスバイアスについて知識を獲得するだけでなく、アンコンシャスバイアスを自覚したときに自ら修正するための「対処のスキル」が育成されます。それによって、社員のモチベーションアップや、組織風土の改善など、継続的な効果をもたらし、組織の業績アップへとつながるでしょう。
アンコンシャスバイアス研修を導入すべきタイミングはいつ?
組織としての制度や仕組みは整っているものの、それが成果につながらなかったり、生産性が向上しなかったりする場合、アンコンシャスバイアスが原因かもしれません。
職場に以下のような状況があるときは、アンコンシャスバイアス研修を導入すべきタイミングです。
- 社内コミュニケーションがうまくいっていない
- ハラスメントが横行している
- 離職率が高い
研修を実施することで、さまざまな好影響が期待でき、組織としての成長をもたらします。
アンコンシャスバイアスにとらわれないための効果的なアプローチ法
アンコンシャスバイアスについて学習するには、いくつかの効果的なアプローチ方法があります。セミナー・研修、グループワークやオンラインによるeラーニングなどです。特に、eラーニングは、時間や場所にしばられることなく、社員がそれぞれの都合のいい時間に学べるというメリットがあるため、近年多くの企業にとりいれられています。
ここでは、アンコンシャスバイアスへの効果的なアプローチ方法を3つ紹介します。
セミナー・研修
アンコンシャスバイアス対策のセミナーや研修を実施している会社は多く、プログラム・内容もさまざまです。企業研修全般を扱う会社でメニューのひとつとしてアンコンシャスバイアス研修を提供している場合もあれば、アンコンシャスバイアス研修に特化している会社もあります。
講師や研修内容、料金、対象者など、予算や自社の課題に合わせて選びましょう。
グループワーク
アンコンシャスバイアス研修では、グループワークを取り入れると効果的です。グループワークは、社内で実施することもできます。
たとえば、職場に良くない影響をもたらしている思い込みや偏見はないかをグループで話し合い、全員で共有します。ロールプレイングなども取り入れれば、体験を通して自分のアンコンシャスバイアスに気づくこともできます。他のメンバーの考えや意見を聞いて、気づきを得ることも有効です。座学だけでは腹落ちしない内容でも、グループワークを取り入れることによって体験的に学習できるため、職場実践につながりやすくなります。
eラーニング
アンコンシャスバイアス研修は、eラーニングでも提供されています。eラーニングは、インターネット環境があれば、PCやタブレット、スマホを使い、どこにいても都合の良い時間に学べるのがメリットです。昨今はリモートワークが普及してきたこともあり、社員が一つの会場に集まっての研修が難しいことが多いものです。そうした場合にも社員への一斉教育が可能で、社員が自らの仕事の繁閑に合わせて取り組めるのも魅力です。
PHP研究所では、専門家が監修したeラーニングを提供しており、アンコンシャスバイアス研修をすぐに実施したい場合におすすめです。
アンコンシャスバイアス研修のご紹介
PHP研究所では、人事考課のあらゆる局面に潜むバイアスの種類・回避方法と人事考課の基本を学ぶeラーニングを提供しています。
近年、人事考課に納得できず不満をもった社員が成長意欲を失ったり、最悪の場合、離職したりというケースが増えています。そのような問題が起こる原因のひとつがアンコンシャスバイアスです。評価する側の思い込みや偏見によって、不適切な人事考課が行われているケースも少なくありません。
そこで今回リリースしたのが、マネジャー向けeラーニング『アンコンシャス・バイアスから考える人事考課~部下に信頼される評価・フィードバックとは?~』です。
eラーニング『アンコンシャス・バイアスから考える人事考課』の特長
マネジャー向けeラーニング『アンコンシャス・バイアスから考える人事考課~部下に信頼される評価・フィードバックとは?~』の特長は、次の4点です。
1)「アンコンシャス・バイアス」と「人事考課の基本」を同時に学ぶことができる
2)リクルートやライフネット生命の人事責任者を歴任した曽和利光氏が、現場のマネジャー目線でポイントをわかりやすく解説
3)人事考課に潜むアンコンシャス・バイアスについて、多くの種類を具体的に解説
4)受講者をWeb上でフォローする学習管理機能(LMS)つき
特に、人事考課の文脈に沿ってアンコンシャスバイアスの理論を解説していることから、考課者訓練の教材として活用できるのが他社教材との違いです。
eラーニングの内容
eラーニング『アンコンシャス・バイアスから考える人事考課』の教材動画は、3つのパートに分かれています。
- PART1|アンコンシャス・バイアスと人事考課の基礎知識
- PART2|人事考課で陥りやすい無意識のバイアス
- PART3|部下の成長を促す 正しい考課の進め方とは?
それぞれの内容をご紹介しましょう。
PART1|アンコンシャスバイアスと人事考課の基礎知識
人事考課制度の概要やアンコンシャス・バイアスとの関連性について、アンコンシャス・バイアスが注目される背景やコントロールするための方法、アンコンシャス・バイアスと人事考課制度の基本的な知識・考え方を学びます。
PART2|人事考課で陥りやすい無意識のバイアス
Part2では、人事考課に関連するアンコンシャス・バイアスを、「人事考課制度へのバイアス」「考課時に陥りやすいバイアス」 「フィードバック面談でよく見られるバイアス」の3つのテーマに沿って解説しています。
PART3|部下の成長をうながす正しい考課の進め方
これまで学んだ内容を踏まえたうえで「人事考課の事前準備と情報収集」「人事考課の正しい伝え方」の2つのテーマで、被考課者の能力や成果を把握するための日々のコミュニケーションのポイントや、人事考課のコメントを記入する時の注意点、人事考課の結果を部下に効果的にフィードバックするための手順やポイントを学びます。
理解度テストは25問あり、設問に答えながら理解を深めていきます。
まとめ
ここまで、アンコンシャスバイアス研修の内容や導入のタイミング、効果的なアプローチ方法をご紹介しました。人事考課や職場風土、社員のモチベーションアップに課題がある場合は、アンコンシャスバイアス研修を検討してみてはいかがでしょうか。
参考記事:PHP人材開発「人事考課とは? 目的や問題点、考課者訓練のポイント、アンコンシャス・バイアスへの対策を解説」