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職場に潜むアンコンシャスバイアスの具体例を紹介。4つの弊害とその対処法とは

2022年9月13日更新

職場に潜むアンコンシャスバイアスの具体例を紹介。4つの弊害とその対処法とは

アンコンシャスバイアスは、「無意識に生じる認識や偏り」と定義される心理学の用語です。「思い込み」「偏見」「決めつけ」「先入観」などと訳されることもあります。放置すると、企業においては社員のモチベーション低下やハラスメントの増加、職場のコミュニケーション不全など、さまざまな弊害をもたらします。本記事では、アンコンシャスバイアスの意味や具体例、職場で起こる問題や対処法をご紹介します。

日常生活に潜む「アンコンシャスバイアス」とは

アンコンシャスバイアス(unconscious bias)とは、「無意識に生じる認識や偏り」と定義される心理学の用語です。過去の経験や価値観、知識などに影響を受けて、知らない間に思い込みや偏見をもってしまうことは、誰にでもあることです。しかし、自分ではなかなか気づくことができません。そして、アンコンシャスバイアスは、何気ない発言や些細な行動に現れます。
ここでは、アンコンシャスバイアスの意味について、さらに掘り下げて解説します。

誰もが持つ無意識の偏見や思い込みのこと

アンコンシャスバイアスは、日常生活や職場などさまざまな場面で、人の言動に現れるのを見ることができます。
例えば、「男性(女性)はこうあるべきだ」「若者はみんな〇〇だ」といった無意識の偏見です。これらのアンコンシャスバイアスは「よくあることだから気にするほどでもない」と見過ごされる傾向があります。
しかし、そのまま放置すると、人間関係の悪化や人の成長を阻むなど、さまざまな問題を引き起こします。職場では、社員のモチベーション低下やハラスメントの発生などをもたらし、ひいては生産性の低下につながることもあるでしょう。

自分では気づきにくいアンコンシャスバイアス

アンコンシャスバイアスは「無意識に生じる認識や偏り」と定義されますが、過去の経験や価値観、知識などに影響を受けて「無意識に生じる」ことから、自分ではなかなか気づくことができません。しかし、アンコンシャスバイアスの影響を受けていることに気づかずにとった言動が、知らないうちに相手を傷つけたり、自身のキャリアに影響を及ぼしたりすることがあります。
アンコンシャスバイアスが及ぼす影響は、決して小さいものではないのです。

それ自体は「悪」ではない

アンコンシャスバイアスは誰にでもあるもので、必ずしも「悪」というわけではありません。人の脳はエネルギー消費を少なくするため、過去の経験や見聞きしたこと、学んだことなどをもとに、無意識下で素早い判断を行います。アンコンシャスバイアスがうまく機能すれば、多くの情報を少ないエネルギーで処理することができるのです。
しかし、アンコンシャスバイアスは、常に正しいというものではなく、決めつけや押しつけを生み出すことにもなります。アンコンシャスバイアスをきっかけに人を傷つけ、人間関係を阻害することも多く、特に管理監督者がその影響を受ける場合、職場に重大な悪影響をもたらすため、その自覚と解消が求められているのです。

職場で頻繁に起こるアンコンシャスバイアスの具体例

アンコンシャスバイアスには、さまざまなパターンがあります。問題があっても自分は大丈夫と思い込む「正常性バイアス」や、人の属性から先入観や固定概念で決めつけを行うステレオタイプバイアスなどが代表的なものです。
ここでは、職場で起こりやすいアンコンシャスバイアスの具体例について、7つの種類に分けて紹介します。

正常性バイアス

正常バイアスとは、良くない状況や問題が起こっていても、自分にとって都合の悪い情報やデータを無視したり過小評価したりすることです。「大したことじゃない」と落ち着こうとする心の安定機能のような働きをします。
不安や心配を減らす役割もありますが、緊急事態や大きな問題が起きているときに適切な対処ができず、手遅れの事態を招くことがあります。

正常バイアスの具体例

・集中豪雨で避難命令が出されているにもかかわらず「我が家はまだ大丈夫」と思って行動せず、家から出られなくなった
・売上が落ちて何か対策が必要であるにもかかわらず「そのうち業績が上がる」と思い込んで何もせず、経営が悪化した

集団同調性バイアス

集団同調性バイアスとは、集団の中にいると、つい他人と同じ行動をとってしまうことです。日常生活では協調性につながる場合もあり、周囲が正しい行動をとっていれば良い方向に動くこともあります。
しかし、職場では、所属している集団の意見にあわせようとする人が多くなると、コンプライアンス違反やハラスメントの横行など、重大な問題に発展するリスクがあります。

集団同調性バイアスの具体例

・自己主張の強い人がいると、つい意見に同調してしまい、自分の意見を主張できない
・上司の部下に対するハラスメントが常態化しているのに、誰も意見しない

確証バイアス

自らの仮説を検証する際、無意識に、その正しさを証明する情報を集め、反証する情報や意見を無視したり集めようとしないことです。
自分は正しいという思い込みが強いと、自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまう傾向が強くなります。客観的な事実が見逃され、間違った意思決定をしてしまう危険性が大きくなります。

確証バイアスの具体例

・結婚している女性は仕事より家庭を優先すると思い込み、既婚者の同僚が残業をせずに帰ると自分の判断が正しかったと確信する
・血液型と性格を結び付ける「血液型占い」で「A型は几帳面」と思い込み、仕事相手の血液型がA型だと知ると、几帳面な部分ばかりが目について、そのつもりで対応してしまう

アインシュテルング効果

長く慣れ親しんだ考え方や価値観に固執し、何かの課題に取り組むときに他の視点を考慮しない、あるいは無視してしまうことです。
より優れた解決法が見えなくなり、多面的な判断や柔軟な思考ができず、「頭がかたい」と言われる状態になります。

アインシュテルングの具体例

・時代は変化し市場のニーズは変わっているのに、これまでうまくいっていたからとマーケティング手法を変えようとしない
・部下が革新的な提案を行っても、前例がないからと言って受け入れない

ステレオタイプバイアス

性別や年齢、学歴、職業など、人の属性ごとに特定の特徴があると思い込むこと、先入観や固定観念を指します。ステレオタイプバイアスが作用すると、その人自身の特性を見逃してしまい、社員の活躍を阻害したり、適材適所を実現できなくなり、職場から多様性が失われることにもつながります。

ステレオタイプバイアスの具体例

以下のような考えに基づく言動が具体例です。

●性別に関するもの

・政治家や裁判官は男性がなる職業であり、女性に向いていない
・保育士や看護師は女性の職業であり、男性には務まらない
・女性は家庭を守るものなので、子どもが生まれたら仕事をやめるべきだ

●年齢に関するもの

・高齢者にITは向いていないので採用しない
・若者は忍耐力がないので、仕事が長続きしない

●人種・国籍に関するもの

・外国人は自己主張が強くてマイペースなので、協調性が求められる仕事には向いていない
・日本人は消極的でおとなしいので、外国で成功することは難しい

ハロー効果

顕著に高い特定の評価項目において強い印象を受けた結果、その項目に引きずられて、その他の項目についても同じように高く評価してしまう心理作用のことです。本質を見極められなくなり、誤った評価をする可能性があります。

ハロー効果の具体例

・学歴が高い人は優秀と思い、採用選考でも良い評価をしてしまう
・自分と同じ趣味を持つ部下に親近感を抱き、人事考課でも良い評価をしてしまう

慈悲的差別

少数派に対する、好意的ではあるが勝手な思い込みによって行われる差別的な行動のことです。たとえば「男性には女性の面倒を見る責任がある」という思い込みによる発言が、女性に対するステレオタイプに基づいているため差別を助長してしまうというケースなどが、これにあたります。

慈悲的差別の具体例

・高齢者や女性というだけで、力仕事から除外する
・子育て中の女性にとっては大きな負担となるので、重要なプロジェクトや困難を伴う仕事を任せるのはよくないと発言する

アンコンシャスバイアスが企業へ及ぼす4つの弊害

アンコンシャスバイアスが企業へ及ぼす4つの弊害

アンコンシャスバイアスが職場に及ぼす影響は少なくありません。代表的な4つの弊害について詳しく紹介します。

1.人間関係の悪化

アンコンシャスバイアスで偏見や決めつけによる言動が行われると、職場の人間関係を悪化させる原因になります。悪意がなくてもネガティブに受け取られる発言は誰かを傷つける可能性があり、良好な人間関係は築けません。 決めつけや押し付けになる言動は人に疎外感を与え、仕事へのモチベーションを低下させることにもなるでしょう。

2.社員や部署全体のパフォーマンスの低下

アンコンシャスバイアスの影響は個々の社員にとどまらず、社員や部署全体のパフォーマンスを低下させることにもなります。特に職場の管理監督者がアンコンシャスバイアスにとらわれる傾向が強い場合、その影響は大きくなるでしょう。部下の評価や育成、仕事の分配などの役割を担い、力のある立場の人が無自覚に発する何気ない言動は、立場の弱い社員に不安やストレスを与える場合もあります。
アンコンシャスバイアスの影響が強いと、自分の考えに合わない提案や意見に耳を傾けなかったり、性別や人種、年齢などのステレオタイプで判断したりということも起こるでしょう。とりわけ、経営層の意思決定がアンコンシャスバイアスの影響を受けると、企業全体のパフォーマンスを下げ、生産性の低下につながります。

アンコンシャスバイアスを放置すると、人員の配置や昇格・昇進、社員育成など、幅広い場面に悪影響を及ぼすものです。偏見や差別が横行すれば企業イメージを損なうことにもなります。場合によっては職場でのハラスメントの横行など、社会的信用を失う事態に発展する可能性もあるでしょう。

3.ビジネス機会の損失

近年はビジネスのグローバル化や労働人口の不足により、多様性を活かすダイバーシティ経営が注目されています。ダイバーシティ&院クルージングに、組織全体で取り組む企業も増えてきています。そのような状況のなかで課題となるのがアンコンシャスバイアスです。
変化の激しい市場で生き残るには革新的なアイデアの創出が求められますが、そのためには多様な価値観を受け入れる環境がなければなりません。アンコンシャスバイアスで多様性が排除され、人材の同質化を加速する排他的思考をなくさなければ、貴重なビジネスの機会を失うことにもなります。

4.不適切な人事評価による離職率の増加

人事考課では、あらゆる局面で、アンコンシャス・バイアスが働く危険性が潜んでいます。

・直近に成果を出した人のみを高く評価する
・ステレオタイプに基づいて評価する
・気の合う部下を高く評価する

人事考課のバイアスにとらわれると、部下の能力・成果を適切に把握できず、人事考課面談のフィードバックも部下にとって説得力のないものになります。もちろん、部下のモチベーションやパフォーマンスへ大きな影響が生まれてしまうでしょう。

参考記事:PHP人材開発「人事考課とは? 目的や問題点、考課者訓練のポイント、アンコンシャス・バイアスへの対策を解説」

企業主体で行うアンコンシャスバイアスへの対処法

企業主体で行うアンコンシャスバイアスの対処法

アンコンシャスバイアスには、企業が主体となって対処していかなければなりません。
無意識の偏見や思い込みは、自分自身では気づかないことも多いものです。まずはアンコンシャスバイアスとは何かについて学習する機会を設け、一人ひとりに、自分にはどのようなアンコンシャスバイアスがあるのかについて気付かせることから始めましょう。
さらに、職場ではどのようなアンコンシャスバイアスが起こりえるのか、どのような問題があるのかを学ぶことも重要です。これらの取り組みによって、社員にアンコンシャスバイアスへの自覚と、解消しようという意識が生まれるでしょう。

アンコンシャスバイアス研修

アンコンシャスバイアスの存在を知り、解消へのマインドが形成するには、アンコンシャスバイアス研修を実施するのが有効です。
実施方法としては、セミナーやグループワーク、eラーニングなどが有効です。具体的な効果や実施のタイミングは、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

参考記事:PHP人材開発「変革を起こすアンコンシャスバイアス研修。研修内容と導入のタイミング」

講師派遣「アンコンシャス・バイアス研修」はこちら

マネジャー向けeラーニング『アンコンシャス・バイアスから考える人事考課』の詳細・デモムービーはこちら

まとめ

アンコンシャスバイアスは、「無意識に生じる認識や偏り」と定義される心理学の用語です。過去の経験や価値観、知識などに影響を受けて、知らない間に思い込みや偏見をもってしまうことは、誰にでもあることです。しかし、アンコンシャスバイアスによる何気ない言動は、決めつけや押し付けにつながることがあり、職場にネガティブな影響を与えている可能性があります。
アンコンシャスバイアスの放置が企業に与える影響は少なくなく、生産性の低下や企業イメージの悪化をもたらす場合もあります。多様性の尊重が求められるこれからの社会に適応できるよう、アンコンシャスバイアスへの対処を検討していきましょう。

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