危機をチャンスに変えるトヨタ式問題解決法とは?
2020年5月 1日更新
未曽有のコロナ禍のなか、危機をチャンスに変えるトヨタ式問題解決法に注目が集まっています。その基本となる「8ステップ」について解説します。
トヨタは危機をチャンスと考える
新型コロナウイルスの大流行により、世界経済は大幅に後退し、国内外の企業は未曾有の危機に直面しています。会社がこのような窮地に立たされた時、そこで働く社員はどのような心境になるものでしょうか。
多くの人は「うちの会社は大丈夫だろうか」「もうあきらめるしかない」などとネガティブな感情を持つはずです。それはごく自然な反応ともいえます。
しかし、たとえどのような窮地に立たされても、「逆境は飛躍のチャンス」と捉え、全社一丸となって危機や困難を乗り越えてきた会社があります。それが、国内ナンバーワン自動車メーカーであるトヨタという会社です。
トヨタで逆境に強い人材が育つ理由
象徴的なのが、2008年のリーマンショック時のことです。トヨタはその年、約4,610億円の赤字に転落しました。しかし、当時会長だった張富士夫氏は「需要の減少は絶好のチャンス」と言い切り、逆境を前向きに捉えたのです。その結果は周知のとおり、トヨタは翌年、営業利益を1,475億円に黒字転換し、見事にV字回復を果たしました。
このように、逆境や危機を「飛躍のチャンス」捉え、改善に取り組むのは、トヨタの伝統的な考え方です。「トヨタショック」と呼ばれたこの2008年の危機を乗り越えられたのも、「逆境をチャンス」とする考え方が、組織全体にしっかりと根づいていたからだといえます。
もちろん、企業が危機を乗り越えるためには、こうした姿勢を経営陣だけが持っていても不十分です。経営陣だけでなく、社員一人ひとりが困難を前向きに捉える気概と、そして確実にやりとげる力を持つことが何より大切なのです。
トヨタに受け継がれる問題解決法「8ステップ」
ではなぜ、トヨタの社員は危機を前にしても、それを「飛躍のチャンス」と前向きに捉え、果敢に立ち向かっていけるのでしょうか。
その答えは、トヨタの「教育」にあるといわれています。
トヨタでは、新入社員の頃から「問題解決の方法」を徹底的に教え込まれます。それが「8ステップ」と呼ばれる問題を順序立てて解決していくために編み出された思考法です。「8ステップ」とは、平易な表現にすれば「こうすれば誰でも問題に気づけるだけでなく、解決できるようになる」という手順をまとめたものです。これを体得できれば、前例のない問題に直面しても、最善の対策を実行できるようになります。
トヨタでは、この問題解決の基本を学び、現場でそれを繰り返し実践することで問題解決の力を高めていきます。その結果、「どのような問題もかならず解決できる」という自信が生まれ、たとえ大きな問題や困難に直面しても、前向きに取り組めるようになるのです。
このように8つの手順を踏んで、「8ステップ」はようやく完了します。なかには、「一つの問題を解決するのに、ここまで手間と時間をかけるのか」と驚く人もいるでしょう。
しかし、一つひとつのステップをていねいに実行していけば、どのような難題であっても、かなりの確率で解決できるようになるのです。
企業が生き残るためには
世界的な景気後退を引き起こした新型コロナウイルスに象徴されるように、これから企業は、このような「前例のない問題」に直面していくことが増えてくると予想されます。
また、AIを初めとした最先端テクノロジーがビジネスシーンを激変させ、既存の方法やマニュアルが急に通用しなくなることも多くなるでしょう。現代はまさに、そうした「未知」との闘いだといえます。そのような時、「こうすれば、誰でも問題を解決できるようになる」という手順をまとめた「8ステップ」の考え方がとても役に立ちます。
この先、企業が成長し続けるためには、未知の問題や不測の事態に備え、社員一人ひとりが問題解決の力を高めておくことが欠かせません。「8ステップ」は、そのような問題解決の力を社員に身につける際の、大きなヒントとなるはずです。
「8ステップ」の基本を学べる通信教育教材を発刊
PHP研究所ではこのたび、若手社員を対象とした「8ステップ」の基本を学べる通信教育教材『トヨタ式問題解決法 入門コース』を発刊しました。本コースでは、「8ステップ」の基本を押さえたうえで、トヨタ式問題解決の方法を、豊富な事例を交えてしっかりと学ぶことができます。貴社の若手社員の教育に、ご活用いただければ幸いです。
(PHP研究所 産業教育制作部 阿部惇平)
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