講師をやるなら心得ておきたい!研修への参加意欲の高め方
2016年11月14日更新
OFF-JTの研修に参加させても、「上司にいわれたから」「昇格条件になっているので」と参加意識が低く、学びにつながらない参加者は多数いるものです。どうしたら本人の学びにつながる積極的な参加を促すことができるのでしょうか。
研修は研修前から始まっている
主たる育成の「場」は現場である。しかし、それは決して研修を否定するものではない。森の中で道に迷ったときに、地図も見ずに突き進むのは危険である。立ち止まって地図を確認すること――これが研修にあたる。研修も人材育成の貴重なチャンスである。ならば、この研修をどう活用すればよいのだろうか。
「受講者」「講師」「目的・目標」「プログラム」。これらが、研修の4要素である。
研修には当然、目的やねらい、それを実施するに至った背景や経緯がある。ところが、研修参加者がこれらを理解していない、場合によっては事務局から何も伝えられていないというケースが少なくない。受講者がその研修の「目的」に共感し、自身に求められている期待を知り、研修の成果をイメージして参加すること。研修当日だけが大切なのではない。研修までに何をなすべきか、教育担当者の意識が問われるところである。
そして、研修参加への「動機づけ」は、職場で行うものである。研修は、研修前から始まっている。
人材育成はテーラーメイド
動機づけは人によって違う。褒め方にしても、ある人が喜んだからといって、すべての人が同じ褒め方で喜ぶとは限らない。物事の受け取り方も、行動の動機も、人によって異なるからだ。その原則を忘れて、同じ考え方や方法を押しつけても、部下の意欲や能力を引き出すことはできない。
育成には、個別対応が必要である。一人ひとりの体型に合わせて衣服を誂えるテーラーメイドと同じように、育成も、一人ひとりに合わせて行わなければならない。人はそれぞれ違い、誰にでもうまくいく方法など存在しない。
上司の期待を明確にする
上のシートは、筆者が研修を受託して実施する際に活用するシートのひとつである。研修受講者の上司が、受講者に向けたメッセージを事前に書くもので、研修冒頭に講師から受講者に一人ひとり手渡し、当該研修の狙いと併せて、自己成長の一助にしている。このシートを利用するメリットは下記のとおりである。
【上司にとって】
1)記入するにあたり、上司は普段以上に部下を観察する(よほど普段から部下観察ができていなければ、スラスラと書けない)。
2)自分の書いたメッセージが研修で部下の手に渡るので、部下が研修を受講していることに注意が及ぶ(部下が研修を受けて成長しようとしているという認識を保持)。
3)研修から戻ってきた部下に「どうだった?」というひと言を言いたくなる(このひと言は重要。部下に関心があることが伝わり、またコミュニケーションのきっかけとなる)。
【部下にとって】
1)研修参加に際し、改めて上司からの期待や求められる課題が確認でき、意識的、意欲的な研修参画につながる。
2)研修後、上司コメントに対する礼を述べることによって、上司とのコミュニケーションの糸口となりうる。
茅切伸明 かやきり のぶあき
慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計3,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』」(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』」『部下育成にもっと自信がつく本』」(ともに同文舘出版)ほか。