新入社員研修の研修効果を高めるには
2015年11月18日更新
新入社員研修がうまくいかない、研修効果が得られない理由を、事例をもとにご紹介します。
研修効果を現場がつぶしている?
企業の教育担当者に研修の効果を尋ねると、「研修で教えたことが職場で活かされていない」という愚痴をよく聞く。研修でいくら教えても職場に戻れば、溜まっている仕事に追われ、研修で学んだことをすっかり忘れてしまう。
さらに嘆かわしいのは、職場の上司・先輩が研修にまったく関心がないことだ。「研修で学んだことより、こっちの仕事のほうが大切だ」と研修内容を打ち消す発言をしていることさえある。
上司・先輩によって「組織の論理」が植えつけられ、研修効果が打ち消されていく。つまり、教育担当者が企画する研修は、職場の上司・先輩は期待していないということである。ここで、新入社員研修がうまくいかない事例を紹介する。
【事例】新入社員研修の効果が出ない
中小企業の場合、公開セミナーに社員を派遣することが多い。中堅企業になると、人事部門や研修部門がプロの講師を招いて研修することが多い。さらに、大企業の場合は、社内講師がいて、自社のプログラムで研修を実施しているのが一般的だ。
新入社員は、皆、やる気を持って入社してくるが、いつしかやる気を失い、早期退職してしまうケースが増えている。ほとんどのケースは研修講師やプログラムに問題があるのではなくて、職場に問題があることが多い。本来、職場の上司や先輩が育成するべき義務を放棄して、他人任せ、丸投げにしている。また、現場の上司や先輩社員は、新入社員研修で教えた内容をまったく理解していないことも多い。さらにひどいことに、手本となるべき上司・先輩が、現場で実践していない。最悪なケースは、研修で教えたマナーや仕事の基本を無視して、自分たちのやり方を押し付けている。これでは研修効果が出るはずがない。
研修効果を出すための対策
効果を出すためには、上司や先輩を教育することが必要である。「新入社員の教育は自分の仕事」という考え方を上司・先輩に浸透させるのだ。仕事である以上、上司・先輩も真剣に取り組まなければならない。「研修は、自分たちの仕事をサポートしてくれるありがたいもの」という認識に立たなければならない。
一番大切なことは、新入社員に対して、どのような研修が行われたのか、何を教わってきたかをまず知ること。上司や先輩が、研修で教えたことを率先して実践するとともに、新入社員に対しても徹底的に実践させることで、はじめて効果が出る。
「研修と職場は違う」「研修は綺麗事、仕事は綺麗事ではない」という意識がまかり通っていないだろうか。このような意識が職場に蔓延していると、研修内容が実践されることはない。
そうした状況を打開するためには、どうすればいいだろうか。それは、研修の企画段階で、上司や先輩を巻き込むことである。職場の状況、新入社員に期待すること、逆に不満なこと、導入研修で教えてほしい職場のルールなどをヒアリングした上で、研修を企画するのである。できれば、職場の上司・先輩向けに「新入社員受け入れ研修」を実施することをおすすめする。
出典:『実践社員教育推進マニュアル』
PHP研究所の「新入社員研修」では、周りから「愛される」社会人になるための課題を自ら考えると同時に、学生から社会人へ意識と行動の変革を 促し、自律行動型ビジネスパーソンへ成長するための心構えをしっかりと学んでいただきます。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。