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医師の面接指導を希望する高ストレス者はどの程度いるのか?~ストレスチェック制度

2016年7月19日更新

医師の面接指導を希望する高ストレス者はどの程度いるのか?~ストレスチェック制度

ストレスチェック制度で対応方法に困っている担当者が最も多い「医師による面接指導」。高ストレス者への面接指導はどのように実施すべきでしょうか。

医師による面接指導の流れ

ストレスチェック制度でいちばん関心が高く、対応方法に困っている担当者が最も多いのが「医師による面接指導」ではないでしょうか。

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員を対象に、実施者が医師面接の要否を確認した後、面接勧奨を行います。そして、対象者からの申出により、面接指導を実施する義務が事業者には課せられています。

この面接指導の結果は、面接した医師からの報告書や意見書として事業者に提出され、必要に応じて就業上の措置を行わなければなりません。これが面接指導の一連の流れです。

実施体制に不安をつのらせる担当者

ここで高ストレス者を選ぶ基準は各事業場の判断で決めることになりますが、初年度でもあるため、現状では指針に例示されている「ストレスが高い方から10%にあたる労働者」とする場合がほとんどです。そして、多くの事業場では高ストレス者をそのまま要面接者としています。

たとえば、1,000人の企業では平均的には約100人が高ストレス者となります。では、どれくらいの従業員が面接指導を申出るのか、その受け入れはどうすればいいのか、申出から1か月以内に面接は可能だろうか、事後措置はどこまで必要だろう......と、様々な疑問が出てきます。

高ストレス者への面接指導は、これまでの経験がまったくないだけに、ストレスチェック実施担当者の関心が集中し、体制づくりへの不安も高まっています。

現実には面接の申出はほとんど来ない

ところが現実に面接指導の申出を受け付けてみると、ほとんど希望する人が出てきません。通常の組織では、高ストレス者の5%未満となることが多いでしょう。つまり、全体の0.5%にも満たないわけです。1,000人の従業員がいるのに、フタを開けてみると、「ほんの2~3人しか出てこなかった」といったことが起こります。

何だか空騒ぎばかりで、これでは「何の効果もないのでは?」「このままでいいのだろうか?」といった、疑問も出てくるでしょう。

多くの従業員は、医師の面接を受けるほど自分は悪くないと考えます。そして、ストレスが高いと会社から思われたくないという心理も働きます。メンタルヘルス不調だと思われると、「白い目で見られないか」「昇進できなくなる......」と、考える人もいるでしょう。

ストレスチェック制度に関する不利益扱いの禁止についても、十分に理解されてはいないでしょう。

予防措置としての面接指導であることを周知する

ストレスの検査を受け、医師から呼び出しがあり、面接を受けるといったプロセスは、自ずと「うつ病などの不調者を探し出す制度」という誤解を生じます。

そもそも「高ストレス」であることは、何らかの不調を意味しているわけではありません。ストレスが高いことがメンタルヘルス不調のリスクを高めるため、予防の意味で面接指導を実施するわけです。

この面接指導では、業務上のストレスや心身の健康状態を確認し、必要に応じて残業を減らすなどの対応をします。場合によっては、通院や休業を勧めるといったケースも出ますが、基本的には予防措置としての健康指導が中心となる制度です。

こうした主旨が多くの組織では従業員にまでは伝わらないと、面接指導は空転します。とかくメンタルは特別視されがちです。医師による面接指導のいちばんの目的が予防にあることを従業員の皆さんにしっかり伝えることが大切です。

小西喜朗 (こにし・よしろう)

ウェルリンク株式会社顧問、産業カウンセラー、教育カウンセラー。

1984年、京都大学卒業後、編集者、ジャーナリスト等を経て、2000年にウェルリンク株式会社設立に参画。累計130万人以上が利用する「総合ストレスチェックSelf」を開発する他、メンタルヘルス研修およびコンサルティングを行う。メンタル法律問題研究会理事、日本マインドフルネス学会理事等を歴任し、職場のメンタルヘルスケアをリードする。

共著に『自分で治すがん』(朝日新聞社)、『リラクセーションビジネス』(中央経済社)、「メンタルヘルス・マネジメント」(PHP研究所)、『ポジティブ心理学再考』(ナカニシヤ出版)など。

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