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管理職はプラス思考であれ~松下幸之助に学ぶ指導者の心得

管理職はプラス思考であれ~松下幸之助に学ぶ指導者の心得

(2017年7月21日更新)

 
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今、再評価されている二宮尊徳ですが、松下幸之助も“経営の先覚者”として尊敬していたといいます。尊徳に関するエピソードから、管理職・リーダーがプラス思考であることの大切さを学びます。

 

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再評価の動きある二宮尊徳

今、二宮尊徳が見直されているそうです。尊徳というよりも金次郎といったほうがなじみがありますね。古い歴史をもつ小学校の校庭には、まず確実に薪を背負った少年の銅像がありました。

どこまで確かなのか分かりませんが、日本で建てられている人物の銅像の数をみると3位は松尾芭蕉、2位は坂本竜馬。ただその数はいずれも30から40なのだそうです。それに対してトップの二宮尊徳の銅像は1000以上、測定不可能なレベルで1位。明治政府の政治的な影響があったとはいえ、国民の教育に多大な影響を及ぼした人物なのは言うまでもありません。

なぜ再評価されているのか。理由はさまざまなことが考えられます。たとえば、少年期の苦労にもかかわらず努力によって勉学に励み、その時代の一流人物となったこと。あるいは、単なる思想家ではなく、農業改革の実践者として成果を出したということなどから、この混迷の世に新しい示唆を与えてくれそうな人物であることも一因でしょうか。

 

経営者が再評価していること

尊徳について一つ見逃せない事実は、近代の経営者に多くの信奉者がいたことです。日本の資本主義の生みの親・渋沢栄一、安田財閥の総帥・安田善次郎、自動織機の豊田佐吉、真珠王・御木本幸吉など日本を代表する事業家に経営の先覚者として影響を与えています。

彼らは一様に「至誠(真心を尽くすこと)」「勤労(物事をよく観察し、それをもとに知恵を磨き働くこと)」「分度(自分の置かれた状況に応じること)」「積小為大(小さな努力を発展につなげる)」といった尊徳の言葉に共感し、それぞれ経営のよりどころとしたようです。報徳思想と呼ばれる彼の考え方は、人間をよりよく自立させうる、成功哲学の基とみられるのかもしれません。

松下幸之助も二宮尊徳を“経営の先覚者”として尊敬していました。幸之助は社内外で尊徳を話題にするとき、きまって同じエピソードを語っていました。それは以下の内容です。

 

二宮尊徳翁がおもしろいたとえ話をしています。田舎から二人の若者が花のお江戸に仕事を求めて出てきました。そうしますと、江戸では、街角で一杯の水を売っている人がいます。二人はそれを見て驚きます。しかし、その二人の驚き方が異なるのです。一人の若者は、「なんと、江戸では一杯の水も金を払わないと手に入らないのか。このようなところではとうてい住みつづけることはできない」と、気を落として田舎に帰ってしまう。

ところがもう一人の若者は、「これはおもしろい。江戸では一杯の水を売ってさえ商売ができるのか。知恵を働かせば、商売の道は無限だな」と、胸をおどらせて江戸に残ることにした、というのです。

一杯の水を売っているという事実は一つですが、その見方はいろいろあり、悲観的に見ますと、心がしぼみ絶望へと通じてしまいます。しかし、楽観的に見るなら、心が躍動し、さまざまな知恵や才覚がわいてくる、ということを尊徳翁は言いたかったのでしょう。ぼくもその通りだと思います。(『PHP』 昭和60年12月号)

 

管理職こそプラス思考であれ

実践する思想家だからこそ、ポジティブなのでしょうか。松下幸之助もよく人から、「苦労されたでしょう」ということを言われたり、「一番苦労されたのは何ですか」という質問を受けたりしていました。

ところが、そうしたときいつも困っていたというのが現実でした。というのは、実際、不思議なことに幸之助にはあまり苦労したという実感がなかったのです。船場での奉公時代の過ごし方にヒントがあったと幸之助はみずから述べています。

船場での小僧時代には、寒風吹きすさぶ冬の朝に冷たい水で雑巾がけをしたり、ご主人からビンタをはられたりしたこともありました。しかし当時、ご主人や先輩から、常に、「苦労してこそ一人前になれるんや。苦労というものはお前の身になるのや」と言われ続けたといいます。幸之助はそれを信じて、一瞬、“つらいな”と思っても、次の瞬間には“いや、これは自分のための苦労だ”と思い直していた。そうすると、苦労が苦労でなくなり、むしろ喜びに変わってきたというのです。

おそらく、最近の打たれ弱い若手社員の人生経験とは一線を画する体験だったことでしょう。もっとも、打たれ弱いのは若手のみならず最近の管理職にも同じ傾向があるとか……。自分の上司がさまざまな状況においてネガティブ思考であるならば、部下としてもついついモチベーションが下がりがちになるものです。尊徳や幸之助のように、実践する思想家である必要はないにせよ、物事をポジティブにとらえ、常に危機を打開できるエネルギーをもつ管理職・リーダーでありたいものです。

 

部長研修

 

渡邊祐介(わたなべ・ゆうすけ)

1986年、筑波大学社会工学類卒業。同年、PHP研究所入社。普及部門を経て、88年5月に出版部に異動。多くの単行本制作に携わる。95年10月に研究本部に異動、松下幸之助関係書籍の編集プロデュースを手がける。98年4月より3年間、紀要『松下幸之助研究』を企画編集。2001年4月、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程(日本経済・経営専攻)に留学。03年3月、同大学大学院博士前期課程修了。修士号(経済学)取得と同時に復職。松下理念研究部主任研究員、研究部長、研究出版事業部長、研究企画推進部長を経て、現在、経営理念研究本部次長。経営哲学学会理事。企業家研究フォーラム幹事。


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