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「裁量労働制」をポイント解説~対象業務は? 導入手続きはどうなる?

「裁量労働制」をポイント解説~対象業務は? 導入手続きはどうなる?

(2018年4月 5日更新)

 
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人事労務を担当する方が押さえておきたい「裁量労働制」。どのような制度なのか、対象業務、導入手続きについて、わかりやすくポイント解説します。

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裁量労働制とは

昨今、国会における働き方改革関連法案の議論への関心が高まりを増していますが、各種報道等でも取り沙汰されている裁量労働制にかかる法改正については、長時間労働を助長する要因になるとの意見や政府の不適切データの問題等を受けて、今年の3月上旬に今国会に提出予定の法案から削除されることが発表されました。また、一定の年収以上かつ高度専門職に就く労働者に対して労働時間ではなく仕事の成果で報酬を決定する「高度プロフェッショナル制度」についても、野党から「残業代ゼロ法案」などと強い批判を浴びています。

そこで、今回から数回にわたって裁量労働制の概要や当初法案の内容、さらには高度プロフェッショナル制度のポイントや課題等について見ていきたいと思います。まず初回となる今回は、「裁量労働制」とはどのような制度なのか、その概要や対象業務、導入手続きについて見てみましょう。

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2種類がありますが、これはすべての業務や事業場で自由に利用できるものではなく、一定の導入要件を満たすとともに所定の手続きを行う必要があり、対象業務についても範囲が限定されている点に注意が必要です。

 

専門業務型裁量労働制の対象業務と導入手続き

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者に委ねる必要があるため、これらの決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令および厚生労働省告示で定める以下の対象業務に就かせた場合に、労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度をいいます。

 

<対象業務>

1 新商品、新技術の研究開発の業務

2 情報システムの分析、設計の業務

3 新聞、出版、放送における取材、編集の業務

4 衣服、工業製品、広告等の新たなデザイン考案の業務

5 プロデューサー、ディレクターの業務

6 コピーライターの業務

7 システムコンサルタントの業務

8 インテリアコーディネーターの業務

9 ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

10 証券アナリストの業務

11 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

12 大学における教授の研究の業務

13 公認会計士の業務

14 弁護士の業務

15 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務

16 不動産鑑定士の業務

17 弁理士の業務

18 税理士の業務

19 中小企業診断士の業務

 

また、本制度を導入するにあたっては、就業規則において、労使協定の締結により裁量労働を命じることがあること等について定めるとともに、導入する事業場ごとに、対象業務、みなし労働時間数、健康・福祉を確保するための措置、苦情処理に関する措置等について労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

企画業務型裁量労働制の対象業務と導入手続き

企画業務型裁量労働制とは、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者を、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するためにはその遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、これらの決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に就かせた場合に、労使委員会で定めた時間労働したものとみなすことができる制度をいいます。そして、本制度は、本社・本店等一定の事業場で行われるもので、次の4つの要件すべてに該当する業務に限られることとされています。

 

<対象業務>

1 事業の運営に関する事項についての業務であること

2 企画、立案、調査および分析という相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容とする業務であって、部署が所掌する業務ではなく、個々の労働者が担当する業務であること

3 業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること

4 業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

 

また、本制度を導入するにあたっては、対象となる事業場ごとに労使委員会(賃金、労働時間その他労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対して意見を述べることを目的とする委員会)を設置し、同委員会の5分の4以上の多数で、対象業務や対象労働者の範囲、みなし労働時間数、健康・福祉を確保するための措置、苦情処理に関する措置等について決議するとともに、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

なお、上記決議をした場合でも、対象労働者に本制度を適用するにあたっては個人の同意を得なければならないことに留意が必要です。また、決議が行われた日から起算して6ヵ月以内ごとに1回、所轄労働基準監督署長へ定期報告を行うことが義務づけられています。

 

裁量労働制には運用ルールが必要

ここまで見てきたように、裁量労働制は、業務遂行の手段や方法、時間配分の決定等に関して、大幅に労働者の裁量に委ねることで、業務効率や生産性の向上が期待される反面、使用者は実際の労働時間を把握せず、労使協定や労使委員会で決議した時間数労働したものとみなす制度です。このため、導入する場合には一定の手続きをとることが求められており、対象業務も限定されています。

今後、国会等であらためて裁量労働制の適用業務の拡大が議論される際には、同制度が不適切に運用されることを防ぐための運用ルールを設け、働き方改革に資する制度となるよう議論が尽くされることが期待されます。

 

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藤原伸吾(ふじわら・しんご)

特定社会保険労務士。社会保険労務士法人ヒューマンテック経営研究所 代表社員。東京都社会保険労務士会理事。

M&Aにかかる人事労務面からの総合支援やIPO支援、トータル人事制度の企画・立案、諸規程の制改定など人事労務全般にわたるコンサルティングを手がけている。『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』(経営書院)、『人事労務管理 解決ハンドブック』(日本経済新聞出版社・共著)など著書多数。


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