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OJTの前提は部下の存在を認めること

2013年9月25日更新

OJTの前提は部下の存在を認めること

OJTの前提は部下の存在を認めること。まず、人を育てる立場にある管理職や人事教育担当者は、まず、この点を確認しておく必要があります。

 

【ポイント】

・知識や技術だけでなく、学ぶことの意味や楽しさを語れる上司になる

・部下の「自己肯定力」は、上司が部下の存在を認め、可能性を信じることから生まれる

・小さな成功体験の積み重ねを通じて、自主性や積極性を培わせよう

 

育成に必要な忍耐

「馬を水飲み場に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」と故事にも語られるように、最後に行動するか否かは、本人次第である。

自分の行動を決定づけるのは、唯一、自らの意思のみであり、それは「学び」も同じである。しかし、「育む」側として、「最後は本人次第」と手をこまぬいているのは、委任ではなく、ただの放任である。

大切なのは「なぜ、水を飲まないのか」を考えることである。飲みたくても「飲めない事情」があるのかもしれない。飲み方が分からないのかもしれない。もしかすると、自分の喉が渇いていることを知らないのかもしれないし、喉が潤う心地よさを知らないのかもしれない。「教える」とひと言で言っても、その意味はさまざまである。

・学ぶことの意味を教える

・学び方を教える

・学ぶことの楽しさを教える

・学んだ先にあるものを教える

知識や技術の伝達に終始して、「教えた」気になってはいないだろうか。「何を」教えるのかを履き違えず、そして、自らも学び続ける存在であること。「育む」とは、そういうことではないだろうか。

 

まずは存在の承認を!

ある職場に、ひとりの部下が配属された。現場の上司は何から始めればよいだろうか。

まずは、ありのままに受け入れること、存在を認めることである。

具体的には「よく来たな!」と居場所があることを伝える、「きみはチームの一員だ」というメッセージを送るなど、チームに欠かせない存在であると意思表示をすることから始めてもらってほしい。

なぜなら、人は存在を認められると自分の可能性に自信を持てるようになるからである。認められないと可能性を信じることができず、主体的な行動が抑制されてしまう。上司が部下の可能性を信じれば、部下自身が、自らの価値を信じることができるのである。自らの価値や能力を信じることができない部下に対し、あなたがいくら育成的指導を提供しても、それは下を向いたコップに水を注ぐようなもので、いっこうに水は溜まらないのである。

 

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成功体験を積み重ねる

周囲や他人からの期待は、「自己重要感(自分には価値がある)」や「自己有能感(自分には能力がある)」などの「自己肯定感」を生み出す。そして、それらが「自己効力感(自分は周囲に影響を与えられる)」につながる。そうすると、部下たちは自ら主体的に動き始めるのである。

小さくても成功体験を積み重ね始めると、その成功体験が、また次の「自己効力感」を生み出す。プラスの連鎖が始まるのである。

「自分はどうせ、やってもできない」などと思う部下が、成果を出せるはずがない。部下の「学ぶ」力を左右するのは、上司の考え方、上司の「育成力」次第なのである。

「配属時の正しいスタート点検表」を挙げた。各項目につき担当者を明確にし、チェックしていただきたい。

 

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 ※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

 


 

【著者プロフィール】

茅切伸明  かやきり のぶあき

慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。その後、(株)日本エル・シー・エー入社。平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計3,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

 

松下直子 まつしたなおこ

株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。人事部門では、採用、育成、人事制度設計と運用、労務管理と幅広く人事業務に携わる。独立後は学習塾の経営や大学講師の経験を経て、現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修依頼は年間200本を超える(2011年実績)。人材育成を生涯のライフワークと決意し、社会人教育に意欲的に向き合うかたわら、士業家の独立支援事業、文化教育事業にも取り組み、幅広く人材育成に携わっている。 

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