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アンガーマネジメントで職場風土の改善を!~まずは「怒り」の本質を理解しよう

2019年4月12日更新

アンガーマネジメントで職場風土の改善を!~まずは「怒り」の本質を理解しよう

仕事をしていると、理不尽なことや理解不能な事態が発生し、感情がかき乱されることがあるものです。しかし、そのたびに怒りを爆発させていたら、よりよい職場風土はつくれません。そこで昨今、多くの企業で導入がはじまっている「アンガーマネジメント」では、まず「怒り」の本質を理解し、それに対処するスキルを学んでいきます。

アンガーマネジメントとは?

「アンガーマネジメント」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。アンガーとは「怒り」であり、マネジメントとは「管理」のこと。つまり「怒りの感情」と上手に付き合っていくための心理的な教育であり、心理トレーニングもそこに含まれています。

重要なのは、「決して怒らないようにひたすら自己鍛錬をする方法ではない」ということです。怒りを全面的に否定して、それを100%消し去ることを目的としているのではありません。むしろ怒る必要性がある場合には、上手に、適度に、状況が改善するように怒りをコントロールします。同時に、怒る必要性がない場合には、無駄に怒ったりしないですむようにトレーニングして、よりよい人間関係を築いていくのです。

アメリカで生まれたアンガーマネジメント

アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたとされています。当初は、犯罪者の矯正プログラムとして使われていましたが、非常に内容が優れていたことから、企業研修、医療福祉関連、青少年の教育、アスリートのメンタルトレーニングなど、幅広い分野で活用されるようになりました。日本でも「一般社団法人日本アンガーマネジメント協会」が設立され、企業研修やファシリテーターの育成などが行われています。

怒りを制御して状況を好転させる

企業研修・社員教育において、アンガーマネジメントを導入するのは、非常に有効だと考えられます。なぜなら、日々の仕事の中で、誰にでも多かれ少なかれ「怒り」を感じる場面があり、これが仕事に悪影響を与えることも少なくないからです。これを上手にコントロールできれば、仕事の質、ひいては職場風土を改善していくことにつながります。

怒りは、自分の腹に収めて我慢したり、何らかの方法で憂さを晴らしたりできる場合もあれば、顔の表情や態度に表してしまったり、怒りの言葉を発してしまったりして、職場や取引先等でトラブルを誘発することもあるでしょう。やり場のない怒りが積もって、体調を崩したり、気持ちが切れて会社を辞めてしまったりするケースもあり得ます。

怒りをうまく「マネジメント」し、状況を好転させることが職場単位で行えるようになれば、素晴らしいチームづくりにつながるのではないでしょうか。特にこれからの活躍が期待される若手社員や、職場の要となるチームリーダーが修得すれば、よりよい職場風土づくりにつながることは間違いありません。

怒りの仕組みを理解する

日本アンガーマネジメント協会が監修したPHP通信ゼミナール『「アンガーマネジメント」実践コース』のテキストでは、はじめに「怒りの仕組み」について解説されています。

ここでは、そもそもなぜ怒りのコントロールが難しいのかといえば、怒りについて自分で分析したことも、人から教えられたこともないからだと指摘されています。

私たちが怒りをうまく扱えない理由のひとつは、これまで怒りについての教育を受けたことがないからです。どれだけ怒る回数を重ねても、怒りの感情の扱い方が間違っていれば、怒り方は上達しません。

私たちはこれまで、親や上司といった身近な誰かが怒っている様子をまねる以外に、怒りを表現する方法を学ぶ機会がありませんでした。

もちろん、怒りという感情を知っているだけでも、怒ることは可能です。

しかし、怒りを正しく理解できていなければ、怒りの感情を抱いたときにより良い対応はとれません。

たとえば、テニスのルールを正しく知らなくても、ボールにラケットを当てれば、ボールは前に飛ばせます。しかし、試合に勝ちたければ、テニスのルールを理解したうえで、練習を繰り返さなくてはいけません。

怒りの感情も同じです。練習すれば、誰でもある程度はテニスが上達するように、怒りの仕組みを理解し、怒りをコントロールするためのトレーニングを繰り返すことで、怒りの感情を正確に表現できるようになります。

例えば大学で心理学を専攻していたとか、宗教や哲学、あるいは自己啓発に関心があって、関連書物を何冊も読んだ経験があるような人を除けば、多くの人は「怒り」について深く考えたことはないでしょう。ということは、怒りについてきちんと学べば、多くの人が怒りをコントロールできるようになる可能性があるということです。

怒りとは「防衛感情」である

テキストでは、続いて「怒り」という感情の「正体」について解説されています。怒りとは、目の前の「敵」から「自分の身を守る」ために湧いてくるものであり、これは人間だけでなく動物にも備わっているとのことです。

そもそも、なぜ怒りの感情が人間に備わっているのでしょうか。怒りの感情は、専門用語で「防衛感情」と呼ばれます。その言葉どおり、怒りの感情は、目の前の脅威や敵から自分の身を守るために存在するのです。

怒りの感情は、人間だけでなく動物にも備わっています。動物は身体がリラックスしていると、目の前に天敵が現れて襲われそうになったとしても、とっさに身を守ることができません。そこで怒りの感情を使うのです。

脳にある扁桃体が命の危機を感じ、怒りの感情が生まれると、副腎からアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは心や体外からの刺激によって、身体にさまざまな反応を引き起こすホルモンです。

アドレナリンが作用すると、心拍数や血圧は上がり、呼吸は浅く速くなります。また、瞳孔が開いて筋肉が緊張します。その結果、天敵の動きを注視して襲いかかる、あるいは飛び跳ねて逃げることが可能になります。つまり、動物は怒ることで、自分の身を守る態勢を整えようとするのです。

このように「怒り」の本質を理解することは、その感情と上手に付き合うためのスキルを身につける第一歩となります。特に、チームリーダーなどの立場にある人は、クレームやパワハラ、叱り方など、怒りにつながる出来事に対処するテクニックを学び、「怒りにくい職場」をつくるリーダーシップを身につける必要があります。また、これからの活躍に向けて、日々「人間力」を磨くことも欠かせません。そのために、アンガーマネジメントは一つの有効なスキルといえるでしょう。この「アンガーマネジメント」、貴社の社員教育にも取り入れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はPHP通信ゼミナール『「アンガーマネジメント」実践コース』を抜粋・編集して制作しました。

通信ゼミナール「アンガーマネジメント」実践コースはこちら

森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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