三段階の目標
2012年3月15日更新
今期業績見通しで、堅調な業績を予想している企業に共通しているのが、顧客志向の経営を徹底していることです。
一口に「顧客志向」と言いますが、その捉え方は時代の流れと共に大きく変化しています。際限なく高度化・多様化し続ける顧客ニーズに対して、従来のCS(顧客満足)では対応しきれず、それに代わってCD(顧客感動)という概念が主流になってきたことは周知の事実です。商品やサービスの提供を通してお客様を感動させることができるか否かが事業存続を左右する時代に入ったのです。
では、どうすればお客さまを感動させることができるのでしょうか。結論から言うならば、一人ひとりが、お客様の期待を大きく上回るレベルの仕事をすることに尽きるのです。そのために大切になってくるのが、「高い目標」と「チャレンジしていく風土」をつくることです。
ここで、目標をそのレベルに応じて三段階に分類してみましょう。
①当たり前レベルの目標
当人の職位、資格としては普通にこなせるレベルであり、支障なく円滑にこなすことのできるもの。達成しても、他者からみれば「当たり前」の範囲の目標
②満足レベルの目標
職位、資格としては達成が難しく、挑戦することに躊躇を覚えるレベルのもの。達成すると、当人および関連する人々に満足を与えるような目標
③感動レベルの目標
職位、資格としては極めて難しいレベルにあり、誰もが達成困難と考えて挑戦を控えるような内容。それだけに、達成した場合は社内外に劇的な変化と感動を与える目標
これら三つの目標のうち、圧倒的に①か、あるいは①と②の中間に位置する目標が設定されることが多いのが現実です。なぜならば、多くの人は失敗するかもしれないリスクを避けたいと考えるからです。しかし、失敗を恐れて挑戦しないところに、感動など生まれるはずなどありません。
従って、上司は部下のチャレンジ意欲を引き出し、設定目標をできるだけ③のレベルに近づけるとともに達成までの道筋を整理してやらねばなりません。もちろん、そのためには上司自身が高い目標に挑む姿勢が求められますし、評価制度の基本理念を減点主義から加点主義へと改め、チャレンジする姿勢を後押しする仕組みを整えておくことも大切です。
こうして、ハード、ソフト両面から、挑戦を促す条件が整ったときに初めて、感動レベルの仕事が現場から生まれてくるのです。まさしく感動の源泉は現場の一人一人のチャレンジ精神から。この一年、上司も部下も共に意欲的な目標に向かって挑戦しただろうか、年度末のこの時期、自組織の現状を振り返ってみてはいかがでしょうか。
的場正晃 まとばまさあき
神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。
現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。
経済産業大臣認定 中小企業診断士