人づくりの喜び【コラム】~松村二郎
2013年7月18日更新
先日、京都大学の研究グループの発表があり、「赤ちゃんが弱い立場の側に同情を示すことが実験の結果判明し、人間は本来、善人である可能性を示している」との報道がありました。
この報道に接し、多くの方が、なぜかほっとする温かいものを感じたのではないかと思います。私はその思いとともに、松下幸之助氏の次の言葉を思い浮かべました。
「人間はダイヤモンドの原石のように、光り輝く本質をもっている。そのことにお互いが気づいて、個々に、あるいは協力してその可能性を磨いていくならば、人間本来の持つ特質、よさが光輝くようになっている。そこに世の中の繁栄も、平和も、人間の幸福も実現されてくると思う」。
本来人間は善なるが故に人間には無限の可能性がある、と喝破していたことに、改めてその凄みを感じます。
地球上で最も堅いダイヤモンドを磨くのは、ダイヤモンドしかないそうです。人間がダイヤモンドなら、そのダイヤモンドを磨くのは、やはり人間でしかないということになります。私は38年間の実業の世界を卒業して、現在PHPゼミナールの講師や企業の人材育成アドバイスなどの仕事をしていますが、人材育成という仕事において、研修生と講師とが共有する時間、空間を本当に大切にしなければいけない、と感じています。
先日ある研修で、厳しく叱ることが必要か否かが話題となり、大いに議論になりました。私の体験から失敗や成功を話し、研修生同士が現実に即して議論をし、最後は全員が「今後は自信をもって叱るべき時に叱れる」となりました。原理原則を学ぶ研修の中で、いかに現実に即した納得を得てゆくか、講師として最も大切にしなければならない点だと感じています。
「凡の中より非凡が生ずる」といいます。常に工夫をこらし、日々新たな気持ちで、人づくりに貢献してゆく……その喜びと楽しさを、もっともっと味わってゆきたいと思っています。
松村二郎 まつむら・じろう
1974年4月、松下電器産業(株)(現・パナソニック(株))入社。事業部門において、商品企画、商品開発、経営企画、営業、マーケティング等の幅広い業務に精通するとともに、数多くのプロジェクトリーダー、組織責任者を歴任。1999年からは、販売会社社長、開発製造会社副社長、ロジスティクス会社社長を務める。経営者として数々の修羅場を、経営理念に基づく経営推進で克服するとともに、後継人材育成に邁進する。2012年3月、パナソニック(株)退職。
現在、パナソニック(株)客員。PHPゼミナール講師