社員研修・教育のニーズをどう把握するか
2014年5月23日更新
経営トップの方針、想いや現場の問題を把握し、教育ニーズを発見して、教育を企画していくことは、人事教育・研修担当者の重要な任務です。『実践 社員教育推進マニュアル』よりその具体的な方法をご紹介します。
教育ニーズの把握
自社の教育ニーズの対象となる、期待される資質・能力を探るためには、ヒアリングや調査・診断をするしかない。経営理念や行動指針、経営環境、経営戦略、人事制度、現場の問題などニーズの発生源はたくさんある。
「教育ニーズ」は、次のような10の視点から多角的に把握していただきたい。これらの視点からどのようなニーズがあるのかヒアリング・調査することで遺漏なく進めることができる。
【教育ニーズ10の視点】
1)経営理念
創業者・現在の経営者の想い、夢から会社はどうあるべきか、人材はどうあるべきか?
2)外部環境の変化
経営環境の変化、働く価値観の変化、法令の施行、行政の動きは、経営や教育にどのような影響を与えるか?
3)同業他社の動向
同業他社の経営戦略や人材育成にいかに対抗していくか?
4)ビジョン・経営戦略
経営者のビジョン・戦略を実現するために、どの人材にどんな能力が必要になるか?
5)現場の課題や要望
現場の課題は何か? 管理職・社員は教育に対して何を期待しているか?
6)教育担当者の期待
教育担当者の使命観と問題意識から、どんな人材を育てたいか?
7)組織診断、社員満足度調査の課題
組織風土の診断や社員の満足度調査により改善すべきことは何か?
8)人事データ
人事データや人事評価から、どのような能力を開発すべきか? どのような才能を生かすのか?
9)過去の教育の実績
これまでの人材育成や社員教育から改善すべきことは何か?
10)外部のコンサルタント・アドバイス
外部のコンサルタントや研修講師から見た自社の経営課題・教育課題は何か?
教育ニーズを収集する方法はさまざまあるが、面談によるヒアリングが一番オーソドックスである。個別で実施する場合と、対象者を集めてグループで実施する場合がある。
【教育ニーズの収集法】
・ヒアリング
個別面談とグループ面談があり、具体的にニーズ収集しやすい。正直な回答が得られるかどうか判断が求められる。
・資料調査
社内にある資料・文書、または記載されている内容から教育ニーズを探る。
・アンケート
アンケート用紙を作成し、対象者に記入してもらって回収・集計する。一斉に実施できるが、設問の設定により、回答にレベルの差が出る。
・視察
現場の社員の仕事を観察することで、個別に具体的ニーズをつかみやすい。しかし、手間と時間がかかる。
・診断
外部のコンサルタントに依頼して実施すると客観的にデータが得られるが、コストがかかる。
面接は具体的に意見を聞けるので本質に迫りやすい。経営者と教育担当者との一体感、現場と教育担当者の連携や現場の上司の協力を得られやすいことがメリットである。しかし、質問内容によっては正しい情報が得られるとは限らない。特に現場の人は、自分にとって不利な情報は話さないことが多い。
アンケートも一般的であるが、作成に時間がかかるし、回収して集計するのに時間がかかる。サンプルを掲載するので参考にされたい。
出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)