育休復帰の女性社員の力を最大限に引き出すかかわり方【コラム】~大野久美子
2015年8月19日更新
女性活躍が進み、第一子出産後の就業継続率は約53%になっています。また、介護休暇取得者も増加し、その約4割近くが男性です。今後、女性に限らず、多様な働き方をする人は、ますます増えていくことが予想されます。
リーダーは、多様な働き方をするメンバーがいるチームを纏め、成果を上げることが求められています。
育休復職者セミナーを担当すると、上司から「なんで、時短を3人も抱えなくてはいけないのか、運が悪い」「今の人手不足の中、介護休暇者がいても求められる成果は変わらず、メンバーの負担が大きすぎる」という声を聞きます。なかでも、子育て中の女性は、時短を活用する、子どもの病気で突然休む、残業が出来ない等の制約も多く、マネジメントには困難と大変さが伴います。
しかし、彼女たちは10年近くの経験、知識、スキルを持ち、長期的にみるとコアになって活躍する貴重な人財です。だからこそ、制約がある中でも能力を発揮し、組織への貢献意識を高め、意欲的に働く環境を創ることが上司には求められています。
では、上司は、どのようなかかわり方が必要なのでしょうか? 復職後どのように関わり、どのようなコミュニケーションを取ればよいのかに悩む上司は多いものです。もちろん、復職後の対応は重要ですが、復職前の準備不足が目立ちます。双方にとって働きやすい環境を創る準備のポイントは2つ、育休中の関わり方と復職前面談です。
育休中は、仕事から離れることで知識やスキルが遅れるという心配があり、「復職したら必要な存在と思われるだろうか」等、不安や孤立感に襲われるものです。会社からの連絡は、不安を軽減し、復帰に向けて前向きな気持ちを高めます。しかし上司は「忙しい中、連絡しては悪いのでは」「かえってプレッシャーになっては」と躊躇しがちです。ですから、育休前に定期的な連絡を取る事を合意し決めます。またお互いの現状報告だけになりがちですが、育休者の気持ちも聴く、メンバーが温かな気持ちで待っている等、双方向の思いや気持ちも共有しましょう。メールでのやり取りが基本ですが、何回かに1回は電話で話すことも決めておきましょう。声を聴くことで安心感はさらに高まります。
2つ目の復職前面談は、事務的な事柄、仕事の内容だけに留まりがちです。目の前の事をきちんと行う事も大事ですが、復職後の両立は想像以上に困難を伴います。今の頑張りが将来の活躍にどの様につながるのかが分かる事で、モチベーションも上がり困難を乗り越えることが出来ます。ですから、面談時には3年後、5年後どの様に働きたいのか、習得したい知識やスキル、それを使ってどの様な活躍や貢献をしたいのかも引き出す事が重要です。その際、できる、できないではなく、本人が心からこうありたいと思う未来像を明確にする質問をします。そのために、復職3か月前位に、面談で明確にしたい内容の設問シートを送り、ゆっくりと考えられる時間を取れるようにしてあげます。最大の協力者であるパートナーと話し合う機会も創れ、お互いの思いを共有する事で、妻が働くことへの理解も進み、家庭でもより働きやすい環境が整うという副次効果も得られます。
また、同じ体験を持つ人に相談でき、共感してもらえる事もモチベーションアップにつながります。上司が男性である場合は全て自分で相談に乗ろうとせず、両立体験者の合意を得て、いつでもコミュニケーションが取れるよう、復職前面談時に引き合わせネットワークを創ってあげることも大切です。
私も3人の子どもを育てながら仕事をしてきました。今は独立し其々仕事をしています。振り返ると子育ては社会貢献だと思えます。育った子どもたちが日本の未来を担っていくからです。上司も子育てを部下個人の問題として捉えるのではなく、社会貢献という大きな枠組みで捉えることにより、物理的負担は同じでも心理的負担は軽減します。
子育てしながら働く女性のサポートは、より強い組織とより元気な日本を創ることにつながると信じています。
【講師プロフィール】大野久美子(おおの・くみこ)
1974年、日本航空株式会社(現・(株)日本航空インターナショナル)入社、国際線スチュワーデスとして勤務。1977年に退職。1991年より企業研修講師として活動を開始。1994年、(有)エム・ケイプレイス設立 代表取締役社長 就任。現在、PHPゼミナール講師。PHPビジネスコーチ(上級)。