なぜ主体性が大切なのか。引き出すための7つの方法とは?
2024年10月22日更新
主体性は個人の成長につながりますし、主体性をもった人が多いチームは組織のパフォーマンスが高くなります。このように主体性は非常に重要であるにもかかわらず、主体性のある人材は、多くはありません。なぜ、主体性のある人材が少ないのか、またどうすれば主体性のある人材を育てることができるのか、その考え方と具体的な取り組みを考察します。
なぜ主体性が大切か
ビジネスにおいて主体性が重要視される理由は、現代の急速に変化する環境において、個人や組織が成功を収めるために必要な要素だからです。主体性とは、自らの意思や判断に基づき、責任を持って行動する姿勢を指します。この態度は、単なる自己満足ではなく、周囲を巻き込みながら成果を上げるために不可欠です。
まず、主体性はVUCA時代において特に求められます。この不確実な環境では、指示を待つのではなく、自ら考え行動する力が必要です。主体的な人材は、変化に迅速に対応し、リーダーシップを発揮することができます。これは組織全体の適応力を高め、競争力を維持するために重要です。
さらに、主体性を持つことで、自身の成長や評価にもつながります。自分で課題を設定し、それに対して行動することで得られる成果は、社内外からの評価を高め、昇進や新たな挑戦の機会を生む可能性があります。
また、主体的に取り組むことで仕事のやりがいも増し、充実感を得やすくなります。主体性はまた、多様性を活用するためにも重要です。異なる意見や価値観を持つ人々と協力しながら、自分の考えを明確に表現し、建設的な対話を促進する能力が求められます。このような姿勢は、組織全体の創造性や柔軟性を向上させる要因となります。
最後に、リモートワークの普及も主体性が重視される背景の一つです。上司の目が届きにくい環境では、自律的に行動できる主体的な人材が特に評価されます。このような状況下で自分自身を律しながら成果を上げることができる人材は、企業にとって不可欠です。
以上のように、主体性はビジネスにおいて成功するための重要な要素であり、自ら考え行動する力が求められる時代だからこそ、その重要性はますます高まっています。
主体性のない人が増えている背景
昨今のビジネス環境において、主体性の発揮がますます重要になっているにもかかわらず、現実には主体性のない人が増えているといいます。その背景には、社会的要因と個人的要因があるようです。
1.社会的要因
教育システムの影響
日本の教育システムは、長年にわたり正解を求める暗記型の学習を重視してきました。このため、自ら考え行動する機会が限られ、与えられた課題をこなすことに慣れてしまう傾向があります。
過保護な養育環境
核家族化や少子化により、子どもを過保護に育てる傾向が強まっています。親が先回りして問題を解決したり、失敗を恐れて子どもの行動を制限したりすることで、自主性や判断力が育ちにくくなっています。
2.個人的要因
失敗への恐れ
失敗経験やそれに対する厳しい批判により、新しいことに挑戦する勇気を失っている人が多くいます。失敗を避けるために、指示待ちの姿勢になりがちです。
自己肯定感の低さ
自分に自信がないため、自分の意見や判断に確信が持てず、他人の意見に頼りがちになります。これにより、主体的に行動することが難しくなります。
責任回避の傾向
責任を取ることへの不安や恐れから、自ら決断や行動を起こすことを避ける人もいます。指示に従うだけであれば、結果に対する責任を負わなくて済むという考えがあります。
何が主体性の向上につながるのか
前述のように、さまざまな要因が絡み合って、現在の日本社会においては主体性を発揮する人材の育成は難しい状況にあります。しかし、こうした状況を放置しておくと、日本の国際競争力はますます弱体化してしまいますので、何らかの対応が求められます。
そこで、まず、主体性の向上につながる要因を明らかにしましょう。長年、産業界の現場で人材開発の仕事に携わってきた経験知から筆者が考える要因は、以下の4つです。
- 小さな成功体験を積み重ねること
- 失敗を学びの機会として捉える環境をつくること
- 自己肯定感を高めるためのフィードバックを行うこと
- 意思決定の機会を増やすこと
こうした要因を考慮に入れながら、マネジメントの領域で何をするべきか、具体的な施策を考えてみたいと思います。
主体性を引出すマネジメント~上司の7つの取り組み
部下の主体性を引き出すために、上司は以下のような取り組みを行うことが効果的です。
1.適切な権限委譲
部下に役割に応じた仕事を任せることが重要です。常に指示を出すのではなく、ポジションに見合った責任ある仕事を任せることで、部下は自信を持って主体的に行動できるようになります。上司は細かい指示を控え、部下のやり方を信頼して見守る姿勢が大切です。
2.コーチングの活用
コーチングを通じて部下の話をよく聞き、やる気を引き出すことが有効です。日頃から部下とコミュニケーションを取り、期待する役割を伝えたり、良い行動を褒めたりすることで、モチベーションを高め、主体性を育むことができます。
3.決断の機会を与える
「どちらでもいい」という態度の部下には、小さな決断から始めて自ら選択する機会を与えることが効果的です。徐々に判断力を養い、自信をつけていくことで主体性が育まれます。
4.得意分野の伸長
部下の得意分野や好きな分野のスキルを伸ばす機会を提供しましょう。自信がつくことで、主体的な行動につながります。
5.ロールモデルの提示
主体性のある社員と部下をペアにすることで、日々の仕事の中で主体的な姿勢や工夫を学ぶ機会を作ることができます。6.失敗を恐れない文化の醸成
失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整えることが重要です。失敗を学びの機会として捉え、次の行動に活かせるような雰囲気づくりを心がけましょう。
7.多様な選択肢の提供
働き方の選択肢を増やし、部下の裁量を拡大することで、主体性を発揮しやすい環境を整えることができます。
これらの取り組みを通じて、上司は部下の主体性を引き出し、成果を出せるチームを作ることができます。部下一人ひとりの個性や強みを理解し、適切なアプローチを選択することが、効果的なマネジメントの秘訣となります。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。