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社員の主体性を高めるマネジメント

2023年5月23日更新

社員の主体性を高めるマネジメント

やらされ感ではなく、自分の意志で仕事をすることは本人のやりがい向上や成長促進につながり、仕事上のパフォーマンスも上昇します。人材育成の究極の目的は、主体性をもって考え行動できる人をつくることです。
では、どうすれば主体性を高めることができるのでしょうか。本稿では、そのポイントを具体的な行動レベルで考察いたします。

INDEX

「主体性」とは?

昨今、企業の採用・育成担当者の間でよく使われることばの一つに「主体性」があります。経済産業省が2006年以降提唱している「社会人基礎力」の構成要素に主体性が入っていたり、経団連が実施した調査(※1)で、「学生に期待する資質」として企業からの回答が最も多かったのも主体性でした。こうした事象が契機となって、産業界で主体性が注目されるようになったのです。

主体性は、一般的には「自分の意志・判断に基づいて行動すること」とされていますが、PHPゼミナールではもう一歩踏み込んで
「自分の仕事を『自分が経営している』という感覚のもと、成果を出すために、自らの意志で工夫しながら行動し続ける態度」
と定義づけています。

自分が経営している感覚とは、「自営業者の感覚」という表現をしたほうがわかりやすいかもしれません。自営業者は、今何をするかを自分で考え、仕事の結果を自ら負う覚悟で仕事をしています。

そうした感覚は、企業の中では経営者以外の人にはもちにくいかもしれません。しかし、その感覚をもとうと努力することで、やりがいが感じやすくなりますし、自立心や責任感が高まり、自らの成長が加速するのです。

※1 『高等教育に対するアンケート』一般社団法人日本経済団体連合会(2018年)

企業の成功事例:日本レーザーに見る「圧倒的な当事者責任意識」

社員の主体性を高めることに成功している企業として、レーザー専門商社である株式会社日本レーザーが注目されています。
同社には、ノルマという概念がありません。この会社では、経営状況や自身のキャリア開発等の観点から上司と部下が対話を繰り返しています。そのことで、一人ひとりがどんな業務目標を達成すべきかが明確になりますし、そうしたプロセスを経て設定された目標は「自分ごと化」されていますので主体的に行動することができます。その結果、26年連続黒字という素晴らしい業績を達成しているのです。

同社の営業部員のある男性社員は次のような発言をします。
「正直に言って、私は商品を日本レーザーのブランドでは売っていません。そういう気持ちは、まったくないです。それにそもそも、日本レーザーの看板で商売ができるほど、この業界は甘くありません。私を含め、当社の社員は一人ひとりが自分というブランドを持っていて、その上で、日本レーザーの社員として仕事をしている感じがします」(※2)

この男性社員に代表されるように、同社の社員はみな「圧倒的な当事者責任意識」(同社の近藤宜之会長のことばを借りれば「自営業者的」意識)をもっていて、それが主体的に発想し行動する源泉となっているのです。

※2 出典:『社員に任せるから会社は進化する』近藤宜之著(PHP研究所)

当事者責任意識の高め方

米国の組織社会学の専門家であるS.バッコルツとT.ロスは共著(※3)の中で、「当事者責任は、従業員が"業績目標"と"期待される行動"の両面から、自分は何を求められているかをはっきり理解している場合に生じる」と述べ、[当事者責任=業務目標×期待される行動]という方程式を明らかにしました。
業績目標とは、「売上〇億を達成すること」とか「不良率を〇%低減すること」といった具体的な指標のことであり、それがあることによって社員は何を達成するべきが明確になります。

一方で、当事者責任を高めるためには、業務目標だけではなく、期待される行動も伝えないといけないとされています。そして、期待される行動には、「成果に焦点を当てた行動」と「価値観に焦点を当てた行動」の二種類があるのです。

業務目標が明らかになっていても、それを達成するための行動の指針がないと、「成果さえ出せば何をやってもいい」という意識が芽生えてしまいます。昨今、不祥事を起こした企業を見ても、期待される行動、特に価値観に焦点を当てた行動に関する言及がなされていないので、コンプライアンス上の問題につながっていることがわかります。

※3 『成長企業が失速するとき、社員に"何"が起きているのか? 仕事に「働きがい」と「エネルギー」を取り戻す方法』S.バッコルツ、T.ロス著(日経BP)

主体性を高めるための10のアイデア

社員の主体性を高めることは、企業・個人の双方にメリットがあります。産業界で主体性が注目される理由はここにあります。
では、どうすれば主体性を高めることができるでしょうか。日々の生活や仕事で実践できる具体的なアイデアには下記の10項目があります。

主体性を高める行動・態度

(1)明確な目標をもつ
(2)日単位、週単位、月単位の計画を立てる
(3)自分で考える癖をつける
(4)一日の終わりに、振り返る時間をもつ
(5)感謝する
(6)ポジティブに考える
(7)ポジティブなことばづかいを心がける
(8)主体性を発揮している人の行動をまねる
(9)人の気持ちを察する
(10)人から感謝されるような言動を意識し、実践する

主体性の高い職場風土をつくる

上記「主体性を高める行動・態度項目」の中から自分に合うものを一つか二つ選んで実践すれば、自らの主体性が徐々に高まります。こうした取り組みを個人から組織全体へ広げ、職場で一人ひとりが実践することができれば、職場全体の主体性が向上するでしょう。

そして、職場の主体性が高まると、後からその組織に入ってきた人も「朱に交われば赤くなる」ように主体性の高い発想・行動ができるようになるはずです。

厳しさを増す経営得環境のもとで、個人の成長、組織としての成果向上を実現するカギは、一人ひとりが主体性を発揮する「全員経営」の状態をつくることです。現場を預かるリーダーが中心になって「主体性の高い職場風土」をつくることが、今後、より一層、重要性を増してくるでしょう。

組織風土変革プログラム「5つの原則」はこちら

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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