階層別教育のご提案

公開セミナー・講師派遣

通信教育・オンライン

DVD・テキスト他

ネガティブ・ケイパビリティとは? その意義と活かし方を解説

2024年8月16日更新

ネガティブ・ケイパビリティとは? その意義と活かし方を解説

複雑で変化の激しい現代社会において、ネガティブ・ケイパビリティという概念が注目を集めています。本稿では、その意味と重要性、そして具体的なメリットや活用方法について詳しく解説します。

INDEX

ネガティブ・ケイパビリティとは何か

ネガティブ・ケイパビリティの定義と概要

ネガティブ・ケイパビリティとは、簡単に言えば、不確実性や不快感、疑問、矛盾、そして答えのない状況に耐え、受け入れる能力のことです。これは、明確な答えや解決策がない状況に直面したときに、焦燥感や不安に駆られることなく、落ち着いて状況を観察し、思考を深め、新たな視点を得ることを可能にする重要な能力です。

19世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツが初めてこの概念を提唱しました。彼は、詩作において、完璧な理解や説明を求めるのではなく、むしろ、謎や曖昧さを受け入れることで、より深い洞察や創造性を生み出すことができると考えていました。
ネガティブ・ケイパビリティは、単に何も考えない状態や無気力な状態を意味するものではありません。むしろ、答えのない状況に積極的に向き合い、その中で思考を深め、新たな知見や理解を得ようとする積極的な姿勢を指しています。

ポジティブ・ケイパビリティとの比較

ポジティブ・ケイパビリティは、目標達成や、肯定的な思考、問題解決能力などを指す言葉です。一方、ネガティブ・ケイパビリティは、これらのポジティブな側面とは対照的に、不確実性や不快感、疑問を受け入れる能力を指します。

ポジティブ・ケイパビリティが、明確な目標や解決策に向かって進む力であるとすれば、ネガティブ・ケイパビリティは、答えのない状況下で立ち止まり、じっくりと考える力を与えてくれるものです。

どちらの能力も重要な役割を果たしますが、ネガティブ・ケイパビリティは、特に複雑な問題や解決が難しい状況に直面したときに、より効果を発揮するといえるでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティとポジティブ・ケイパビリティのバランス

ネガティブ・ケイパビリティは、ポジティブ・ケイパビリティと対照的な概念ですが、実際には両者は密接に関連しています。ネガティブ・ケイパビリティは、ポジティブ・ケイパビリティをより効果的に発揮するための重要な基盤となります。

例えば、新しいビジネスアイデアを思いつくためには、既存の枠組みや常識にとらわれず、自由な発想でアイデアを膨らませる必要があります。これは、ネガティブ・ケイパビリティによって可能になります。そして、そのアイデアを現実のものにするためには、具体的な計画を立て、実行していく必要があります。これは、ポジティブ・ケイパビリティによって可能になります。

このように、ネガティブ・ケイパビリティとポジティブ・ケイパビリティは、それぞれ異なる役割を果たしますが、互いに補完し合い、より良い結果を生み出すために不可欠な要素です。

なぜネガティブ・ケイパビリティが注目されるのか

現代社会は、情報化やグローバル化、AI技術の発展など、かつてないスピードで変化しており、従来の知識や経験が通用しない場面も多く、不確実性や複雑性がますます増しています。

このような状況下では、明確な答えや解決策を求めるよりも、むしろ、不確実性を受け入れ、柔軟に対応していく能力が求められます。答えを急がずに、じっくりと問題の本質に向き合うことは、とても重要な能力だといえるでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティを持つ人は、変化を恐れずに受け入れ、新しい環境に適応することができます。また、複雑な問題に対しても、焦らずにじっくりと考えることで、より良い解決策を見つけられる可能性が高いといえます。

ネガティブ・ケイパビリティを開発するメリット

リーダーシップを発揮できる

ネガティブ・ケイパビリティは、リーダーシップにも重要な役割を果たします。優れたリーダーは、部下や組織を導くために、明確なビジョンや戦略を持つだけでなく、不確実な状況に冷静に対処し、柔軟な対応ができる能力も必要です。

ネガティブ・ケイパビリティは、冷静さを保ち、多様な意見を聞き入れ、最適な判断を下すことを可能にします。また、部下や組織の潜在能力を引き出し、新たな可能性を切り開くための力となります。

イノベーションを生む

ネガティブ・ケイパビリティは、創造性やイノベーションにも大きく貢献します。既存の枠組みや常識にとらわれず、疑問や矛盾を受け入れることで、新たな発想やアイデアを生み出すことができます。

例えば、新たなサービスを生み出す起業家は、過去の成功体験にとらわれることなく、自由な発想でサービス開発や研究を進めることで、新たな発見を生み出しています。その過程には、困難に直面する場面が必ずあるはずです。そのような状況にも冷静に対処し、思考を深め、最終的に解決に導いていくことは、ネガティブ・ケイパビリティによって可能になるといえるでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティを育てる方法

アートや文学に親しむ

アートや文学は、ネガティブ・ケイパビリティを育むための有効な手段です。小説や詩、絵画、音楽など、様々な芸術作品は、明確な答えや解釈を示すのではなく、むしろ、疑問や矛盾、曖昧さを提示することで、私たちの思考を刺激し、新たな視点を与えてくれます。

芸術作品に親しむことで、答えの出ない状況を受け入れ、立ち止まって思考する能力を養うことができます。また、多様な価値観や考え方を受け入れることで、より広い視野を持つことができるようになります。

デジタルデトックスをする

現代社会では、インターネットやスマートフォンなど、デジタル技術が私たちの生活に欠かせないものとなっています。分からないことはすぐにウェブで検索でき、数十秒のショート動画などのコンテンツが楽しめることは、大変便利です。

しかし、デジタル技術に過度に依存することで、私たちは、情報過多や思考の断片化、集中力の低下などの問題に直面する可能性があります。

ネガティブ・ケイパビリティを育むためには、デジタルデトックスを行い、デジタル技術から離れて、自分自身と向き合う時間を持つことが重要です。デジタルデトックスによって、雑念から解放され、じっくりと考える時間を取り戻すことができます。

内省する

ネガティブ・ケイパビリティを育むためには、自分自身と向き合い、深く考える時間を持つことが重要です。そのためには、内省を習慣化することが有効です。

内省とは、自分自身と向き合い、自分の考えや言動を振り返り、そこから学びを得ることです。過去の自分の経験や言動を振り返ることで、良かった点や反省点が見えてきます。

松下幸之助は、「自己観照」ということばで、自分を客観視することの重要性を説きました。

私は、自分というものを客観的に、いっぺん自分というものから外に出て行って、そして自分を観ると、自己観照をやると。(中略)自分がいっぺん外に出て、松下幸之助のやっていることを、自分が観察すると。だいたい、これだったらよかろうと、これはいかんなと、直さないかんと。そういう自己観照をやらないかんと、私は思っている

松下幸之助

内省を通して、私たちは、自分の思考パターンや行動パターンを客観的に見直し、より深い洞察を得ることができます。また、自分自身の成長や変化を促すことができます。

ネガティブ・ケイパビリティの活用方法

ネガティブ・ケイパビリティの活用方法

ビジネスにおける活用方法

ビジネスにおいて、ネガティブ・ケイパビリティは、イノベーションや問題解決、顧客との関係構築などに役立ちます。

例えば、新しい商品やサービスを開発する際には、既存の枠組みにとらわれず、自由な発想でアイデアを出し、顧客のニーズを深く理解することが重要です。また、競合他社との差別化を図るためには、過去の勝ちパターンや戦略に固執することなく、新たな視点で市場を分析し、顧客に価値を提供する必要があります。

ネガティブ・ケイパビリティは、企業が柔軟に課題に対応し、価値を創造するための重要な能力となります。

研修での応用例

人間の脳は、もともと「不確実性や曖昧さを解消しようとする本能」を持っています。また、仕事においては、不確実で曖昧な状況下においても、「自己認識」「自己管理」を行い、心理的な安定性を保ち、一定の成果をあげることが必要です。

研修という場は、実際の業務とは切り離されている場合が多く、心理的安全性が確保されているため、ネガティブ・ケイパビリティを発揮するのに適しています。不確実性を解消しようとする人間の本能に反し、物事の本質をしっかり見定め、結論を急がず、判断を保留し、分からないことや自分にとって不都合なこともあえて受け入れ、新しい思考や認識が出現するのを待ち続ける。さらには、本質に近づくために立ち止まって考え続けることの重要性の理解と、それを実践するスキルの習得に役立ちます。

Z世代とネガティブ・ケイパビリティ

現代のビジネス環境は、不安定・不確実・複雑・不明瞭で、先行きを予測することが困難であると言われています。

一方、社会で働く新入~若手社員を構成するZ世代の方々を取り巻く状況は、その真逆です。検索したら簡単に情報が収集できるネット社会で生まれ育った彼・彼女らは、すぐに正解や答えを求めたり、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するなどの特徴を持つといわれます。さらに、職場では効率性が重視され、常に即決断、即行動が求められます。

両立することが難しい2つの状況に挟まれ、Z世代の方々は、場合によっては仕事で戸惑いを覚えてしまうことがあるかもしれません。

そんな背景から、ネガティブ・ケイパビリティ、言わば「モヤモヤする力」の、「そんなに急がなくていい。答えはいつか出すけど急がなくていい」というメッセージと、その能力の獲得が、Z世代のような若い方々にも求められているといえるでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティの概念を取り入れた
公開セミナー「新入社員研修」

まとめ: ネガティブ・ケイパビリティを味方につける

ネガティブ・ケイパビリティは、将来の予測がつきにくい現代社会において重要性が増してきた能力です。 対立概念であるポジティブ・ケイパビリティは、ネガティブ・ケイパビリティとは、言わば車のアクセルとブレーキのような補完関係にある能力です。その双方の能力を味方につけ、バランスを取りながら発揮し続けることにより、変化の激しい時代に、課題に効果的に対応し、より豊かな人生を歩んでいけるでしょう。

新着記事企業は人なり~PHPの人づくり・組織づくり

  • 公開セミナー
  • 講師派遣・研修コンサルティング
  • 通信教育
  • eラーニング
  • DVDビデオ教材

×