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職場で起こるコミュニケーションハラスメントとは? コミュハラの原因と対策、事例を解説

2025年1月20日更新

職場で起こるコミュニケーションハラスメントとは? コミュハラの原因と対策、事例を解説

職場におけるコミュニケーションハラスメント(コミュハラ)は、従業員の心身の健康を害し、生産性低下にもつながる深刻な問題です。本記事では、コミュハラの内容から原因、具体的な事例、そして有効な対策までを詳しく解説します。ハラスメントのない、より働きやすい職場環境を目指しましょう。

INDEX

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コミュニケーションハラスメントとは?

コミュニケーションハラスメントとは、職場におけるコミュニケーションのすれ違い、エラーを起因とした問題を指します。これ自体は法律上で定義されていませんが、多くのハラスメント問題のきっかけとなるもので、ハラスメント対策において注目すべき事象です。
コミュニケーションハラスメントは、程度がひどければ精神的な攻撃などのパワハラになったり、セクハラになったりすることもありますが、多くの場合「ただちにハラスメントにはならない程度の違和感」がほとんどです。しかし、その違和感が、人間関係の悪化を招き、ゆくゆくはハラスメントに発展してしまうのです。

ハラスメント対策の義務化により、ハラスメントはあってはならないことであると社会に広く認識されるようになりました。そのため、身体的な攻撃など、あからさまなハラスメントは少なくなりました。しかし、日頃のコミュニケーションの問題がきっかけで、精神的な攻撃、過大な要求、過小な要求などのハラスメントが引き起こされる可能性があることについて理解し、指導の仕方や言葉の選び方には十分注意する必要があります。

パワハラとセクハラのきっかけになるコミュハラ

厚生労働省は、パワハラ(パワーハラスメント)を「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすもの」と定義しています。具体的には、上司が部下に対して能力を超える業務を強要したり、反対に過小な要求をする行為が含まれます。
セクハラ(セクシャルハラスメント)は、「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること」と定義されています。

コミュニケーションハラスメントは、言葉や態度による嫌がらせに焦点を当てていますが、パワハラやセクハラと複合的に発生したり、そのきっかけになったりすることも多く、明確に違いを説明するのは難しいといえます。 例えば、上司が部下に対して人格を否定するようなワードを含んだ発言を繰り返す行為は、パワハラであり、コミュニケーションハラスメントでもあります。一方で、人格否定だと判断されない表現であっても、相手が「人格否定」と受け取るケースもあります。これはパワハラにならなくてもコミュニケーションハラスメントです。

コミュニケーションハラスメントが起こる原因

コミュニケーション不足と誤解

職場におけるコミュニケーション不足は、誤解を生みやすく、ハラスメントが発生する大きな原因の一つです。従業員同士が十分に意思疎通を図れていないと、些細なことでも感情的な対立に発展しやすくなります。
特に、テキストベースのコミュニケーションが中心となるビジネスチャットでは、言葉のニュアンスが伝わりにくく、誤解が生じやすい傾向があります。例えば、短い言葉での指示や、感情を読み取れない文章表現は、相手に不快感を与えることがあります。言葉選びを間違えると、真意が伝わらず、誤解を生んでしまう可能性もあります。 また、忙しい状況下では、相手への配慮が欠け、一方的なコミュニケーションになりがちです。日頃から積極的な情報共有や相談を行い、相互理解を深めることが、ハラスメント防止に繋がります。

上司の認識不足と指導方法

上司が部下への配慮を欠いた指導や、一方的なコミュニケーションを続けることは、コミュニケーションハラスメントの大きな要因です。
上司が自身の指導方法を客観的に認識できていない場合、部下が不快な思いをしていることに気づかないことがあります。
例えば、業務の担当変更などの決定事項を、高圧的な態度で「A社さんの担当、私に戻すことにした。この判断に○○さん(相手)の気持ちは関係ないんだけど」などと一方的に伝えてしまうとどうなるでしょうか。たとえその判断が適切であったとしても、相手の考えを聞かずに一方的に伝えてしまうと、相手がパワハラだと思うきっかけになりかねません。上司は部下に指示命令を与える権利がありますが、言葉や態度も含めて注意をはらい、相手の納得感を引き出すことが重要です。
適切な指導方法を学ぶことで、部下との信頼関係を築き、ハラスメントのない職場環境を作ることが求められます。

職場風土と企業文化

ハラスメントを助長するような企業文化や、風通しの悪い職場風土も、コミュニケーションハラスメントが発生する要因となります。
例えば、上意下達の風潮が強く、部下が自由に意見を言えない職場では、ハラスメントが表面化しにくい傾向があります。
また、従業員のストレスが高い状態が続くと、些細なことで感情的な対立が起こりやすくなります。長時間労働や過度なノルマも、ハラスメントのリスクを高める要因です。
オープンなコミュニケーションを促進し、従業員が安心して意見を言えるような環境作りが必要です。具体的には、定期的なアンケート調査や面談を通じて、職場環境の問題点を把握し、改善に取り組むことなどが挙げられます。また、ハラスメントに関する相談窓口を設置し、従業員が安心して相談できる体制を整えることも不可欠です。
また、それらに加えて、挨拶や目を見て話す、身体を相手の方に向けるなど、ごく当たり前と思われるようなマナーやコミュニケーションを徹底することも、風通しの良い職場風土をつくるためには大変重要です。

コミュニケーションハラスメントの具体的な事例

人格否定や見下す発言

人格否定や見下す発言は、コミュニケーションハラスメントの典型的な例です。
例えば、「だからお前はダメなんだ」「そんなことも分からないのか」といった発言は、相手の自尊心を傷つけ、精神的な苦痛を与えます。これらの発言は、相手の能力や人格を否定するものであり、職場での信頼関係を大きく揺らがします。
また、このような発言が繰り返されると、被害者は自己肯定感を失い、仕事に対するモチベーションを著しく低下させ、メンタルダウンを引き起こす可能性があります。このような発言は、単に口が悪いという問題ではなく、ハラスメントとして認識されるべきです。
発言者は、自身の言葉が相手に与える影響を深く理解し、発言内容に責任を持つべきです。このような発言が職場全体に広がると、ハラスメントを容認する風土が形成され、さらに深刻な問題に発展する可能性があります。 職場の仲間に思いやりを持って働くことが大前提です。自分がされて不快なことは、相手にもしないという基本を、一人ひとりが守ることが大切です。

一方的な指示と強制

一方的な指示やコミュニケーションの強制も、コミュニケーションハラスメントの代表的な事例です。 例えば、「私の言う通りにやれ」「質問するな」といった命令口調での指示や、相手の意見を聞かずに自分の考えだけを押し付ける行為は、ハラスメントに該当します。このような行為は、相手の自主性や主体性を奪い、萎縮させてしまいます。
また、業務時間外の連絡を強要したり、プライベートな時間を無理に拘束する行為も、ハラスメントとみなされる可能性があります。
一方的なコミュニケーションは、相手の意見や感情を無視する行為であり、信頼関係を築く上で大きな障害となります。職場でのコミュニケーションは、お互いを尊重し、対等な立場で行われるべきです。

無視や仲間外れ

意図的に特定の人物を無視したり、仲間外れにする行為も、コミュニケーションハラスメントの一種です。例えば、会議で特定の人物の発言を遮ったり、意見を無視したり、業務上の情報を意図的に伝えない行為が該当します。 また、職場の飲み会で、特定の人を仲間外れにする行為も、ハラスメントとみなされる可能性があります。このような行為は、対象者を孤立させ、精神的な苦痛を与えます。
特に、職場での仲間外れは、組織全体の人間関係を悪化させ、業務の遂行にも悪影響を及ぼす可能性があります。無視や仲間外れは、直接的な攻撃ではないため、見過ごされがちですが、その影響は見えないところで深刻化していきます。
ハラスメントは、言葉や態度だけでなく、非言語的なコミュニケーションを通じて行われることもあります。例えば、会話中に目が合わなければ、相手は無視をされているように感じるかもしれません。ちょっとした動作、姿勢などにも意識を向け、相手を不快にさせない態度が重要です。

コミュニケーションハラスメントを防ぐための対策

アサーティブコミュニケーションの実践

アサーティブコミュニケーションとは、自分の意見や気持ちを率直に、かつ相手を尊重しながら伝えるコミュニケーション方法です。職場全体でアサーティブコミュニケーションを実践することで、相互理解を深め、ハラスメントを未然に防ぐことができます。
例えば、自分の意見を主張する際に、相手の意見を尊重し、相手を攻撃するような言い方を避けることが重要です。また、意見が対立した場合は、感情的にならずに、冷静に話し合い、お互いの妥協点を探ることが求められます。 アサーティブコミュニケーションは、単に自分の意見を言うだけでなく、相手の意見をしっかりと聞き、理解しようとする姿勢が重要です。このコミュニケーション方法を身につけることで、職場での人間関係が円滑になり、ハラスメントを抑制する効果が期待できます。

ハラスメント研修の実施と意識改革

ハラスメント研修は、従業員がハラスメントに対する正しい知識を身につけ、意識を改革するために不可欠です。定期的な研修を実施することで、ハラスメントの種類や具体的な事例、そしてハラスメントが与える影響について学ぶことができます。
座学だけではなく、その業界や会社におけるよくあるハラスメント事例を扱ったり、ハラスメント事案に管理者としてどう対応するかのロールプレイングを取り入れ、ハラスメント対策を自分事として捉えられる工夫をするとよいでしょう。
研修を単発で実施するのではなく、年に一度は必ず実施するなど、継続的に行うことが従業員の意識改革を促し、ハラスメントのない職場環境作りに繋がります。

ハラスメント研修は、動画教材(DVD)を使うと効果的です。部下指導や、飲み会でのコミュニケーションなど、ハラスメントが生まれやすい場面があります。そんな時、どのような言動がハラスメントにあたる可能性があるのか、テキストだけではなく、ケースドラマ動画を見ながら客観的に考えることができるのが動画を使った研修の利点です。また、動画教材(DVD)があれば、講師が何度も同じ説明をしなくても、動画を使って全従業員に同じ質の研修を実施できることもメリットだといえるでしょう。

相談窓口の設置と周知

従業員がハラスメントに遭った際に、安心して相談できる窓口の設置は、ハラスメント対策において非常に重要です。社内の相談窓口は、担当者の研修や秘密保持の徹底が必要不可欠です。
また、相談者が安心して相談できるように、匿名での相談も可能な仕組みを検討する必要があります。 相談窓口の設置だけでなく、従業員への周知も徹底する必要があります。相談窓口の場所や連絡先を社内全体に告知し、ハラスメントに困った際は、遠慮なく相談するように促すことが大切です。相談窓口があることを周知することで、従業員は「何かあったら相談できる」という安心感を得ることができ、ハラスメントの早期解決にも繋がります。

社内コミュニケーションの活性化

職場での雑談や意見交換により、社内コミュニケーションの機会を増やすことは、相互理解を深める上で重要です。業務以外の雑談を通じて、お互いの人となりを知ることで、親近感が湧き、コミュニケーションが円滑になります。
また、気軽に意見交換ができる場を設けることで、多様な意見やアイデアが生まれ、業務の改善にも繋がります。例えば、ランチタイムや休憩時間に、従業員同士で自由に話せるランチ会を設けたり、定期的に懇親会を開催するのも有効です。

ただし、雑談を盛り上げようと、プライベートを話題にし「○○さん(相手)って今年35歳だっけ?そろそろ結婚とか考えているのかな」など何気ない一言にも注意が必要です。 プライベートな会話を楽しむのはかまいませんが、興味本位で聞かれるのを快く思わない人もいるため、会話の内容は慎重に判断する必要があります。会話する相手との信頼関係や距離感を考え、周囲の人々が不快にならないよう配慮しましょう。
雑談や意見交換の場を持つことで、職場全体が風通しの良い雰囲気になり、コミュニケーションハラスメントが発生しにくい環境を作ることができます。雑談や意見交換は、ハラスメントを未然に防ぐだけでなく、従業員のモチベーション向上にも繋がります。

1on1ミーティングの導入

上司と部下が定期的に1対1で話し合う1on1ミーティングは、部下の悩みや課題を早期に把握し、信頼関係を築く上で非常に有効です。
1on1ミーティングでは、業務に関する進捗状況や課題だけでなく、キャリアプランや個人的な悩みについても話し合うとよいでしょう。上司は、部下の話に耳を傾け、適切なアドバイスやサポートを行うことで、部下の成長を促すことができます。
6か月から1年に1回行われる人事評価面談とは別に、週に1回、月に1回など、短いスパンで部下と1on1ミーティングを設定し、自主的なコミュニケーションをとることもおすすめです。1on1ミーティングを通じて、部下は「上司は見てくれている」と安心感を得ることができますし、上司と部下間のコミュニケーションが密になり、信頼関係が深まることで、ハラスメントの発生を抑制する効果も期待できます。1on1ミーティングは、形式的な面談ではなく、部下が安心して話せる場であることが重要です。
上司は、部下の意見や感情を尊重し、否定的な発言は避けるように心がける必要があります。フィードバックが必要な場合は、人となりを評価するような表現は避け、仕事の行動といった事実に焦点を当てることが大切です。1on1ミーティングは、コミュニケーションハラスメントの予防だけでなく、部下の育成にも繋がる重要な取り組みです。

ビジネスチャットの適切な活用

ビジネスチャットは、便利なコミュニケーションツールですが、誤解が生じやすい側面もあります。テキストのみのコミュニケーションでは、言葉のニュアンスが伝わりにくく、感情的なやり取りが発生しやすいため、注意が必要です。
例えば、短い言葉での指示や、冷たい印象を与える文章は、相手に不快感を与える可能性があります。ビジネスチャットを活用する際は、丁寧な言葉遣いを心がけ、絵文字やスタンプを適度に利用することで、テキストだけでは伝わりにくいニュアンスを補うことができます。ビジネスチャットの言葉遣いを考えるあまり、生産性が下がってしまう場合は、「ビジネスチャットで相手の感情や印象を判断しない」など、チーム内でのルール・心構えを共通認識として持っておくという方法もあります。
また、長文でのやり取りや、複雑な内容については、直接会って話すか、電話で補うなど、状況に応じて適切なコミュニケーション方法を選択することが重要です。
ビジネスチャットは、あくまでもコミュニケーションを円滑にするためのツールであり、その利用方法によっては、ハラスメントの原因にもなり得ることを理解しておく必要があります。適切な利用を心がけ、円滑なコミュニケーションを実現しましょう。

まとめ:コミュニケーションハラスメントのない職場環境へ

コミュニケーションハラスメントは、決して他人事ではありません。すべての人が当事者意識を持って、この問題に取り組むことが重要です。健全な職場環境を築き、従業員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できるような環境を目指しましょう。
そのためには、ハラスメント研修を実施したり、日ごろからチームでコミュニケーションをとったりと、継続的な努力と従業員全員の協力が必要です。より良い未来のために、共に取り組んでいきましょう。

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