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研修効果が上がらない3つの原因とは?

研修効果が上がらない3つの原因とは?

(2020年1月16日更新)

 
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人材育成の重要性を認識し、お金と時間と労力を投下して社員研修を実施しているにも関わらず、なぜ期待した研修効果が得られないのでしょうか。

 

 

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人材育成に力を入れる企業が増えている

人手不足や、働き方改革の推進、コンプライアンスの更なる強化などを背景に、人材育成に力を入れる企業が増えてきました。また、内閣府が発表した「平成30年度年次経済財政報告」(経済財政白書)によると、企業が人材投資を1%増やすと労働生産性が0.68%上がるとの推計が示されています。

人材育成が今後の企業経営の方向性を決めるカギとなりそうですが、その具体的な手段の一つである研修が「効果を上げていない」と認識している経営者・人事担当者が多いのも事実です。なぜ、研修効果が上がらないのか、その要因を考えることで、逆説的に成功の要因を明らかにしたいと思います。

 

なぜ期待した研修効果が上がらないのか?

人材育成の重要性は誰もが認識していますが、今問われているのは人材育成の取り組みが効果を上げているかどうかです。米国では、機関投資家が企業の人材育成の取り組みとその効果を注視し、それを判断材料にして投資先を決める動きが本格化しています。いずれ、日本においてもそうした傾向が強まり、単に研修を実施しているだけではなく、それがどのような効果をあげているかが問われる時代になるでしょう。

仕事柄、企業の経営者・人事担当者にお会いする機会が多いのですが、自社で実施している研修について問うと、「期待した効果が上がっていない」という回答が返ってくるケースがほとんどです。

誰もが重要性を認識し、お金と時間と労力を投下して研修を実施しているにも関わらず、なぜ効果が上がらないのか? その原因を3つの観点から説明いたします。

 

1.単発研修の限界

研修が効果を上げない理由の一つが、企業・団体で実施している研修の大半が、単発研修で終わっているということです。新しい知識や情報を得るような学習、例えば、「ハラスメント予防」「メンタルヘルスマネジメント」「コンプライアンスマネジメント」などをテーマにした講演・講義などは単発でもいいかもしれませんが、「経営マインドの醸成」や「人を育てるスキルの修得」など、受講者の意識変容・行動変容を目的とした研修は単発では限界があります。

したがって、効果を上げるためには、研修と職場実践を数回繰り返す「積み上げ形式」の研修を実施することをお奨めします。時間的・予算的制約があって、何度も社員を集められないという場合には、一日ないし半日の「フォローアップ研修」を組み込むだけでも研修効果は飛躍的に上がります。東洋思想家の田口佳史氏が、「教育の基本は繰り返しである」と述べているように、人の意識と行動は継続的・反復的な学習によって変わっていくのです。

 

2.受講者の実態に合っていない研修の限界

どんなにプログラムの品質が高く、それをリードする講師のインストラクションスキルが秀逸だとしても、その内容が受講する人たちの実態に合っていないと、研修効果は上がりません。例えば、IT企業の新任マネジャーを対象にした「マネジメント研修」で、製造業の管理職の事例をケーススタディとして取り上げると、「こんな事例はうちの会社にはないよな」というつぶやきが受講生の内面で起き始めます。そうなってしまうと、「こんな研修、受けても無駄」というネガティブな感情が生まれ、適当にやり過ごそうという態度につながってしまいます。

そういう状況に陥らないためには、受講者が抱えている仕事上の課題や職場の問題をリアルな題材として取り上げ、それらを解決するための手法や理論を学ぶようなスタイルの研修をデザインすることが大切です。つまり、受講者が研修内容にリアリティを感じ、学びを「自分ごと化」できれば、研修効果は上がりやすくなるのです。

 

3.個人だけに焦点を当てた研修の限界

研修は、受講対象者を職場から切り離して一定期間実施するものです。受講者が、研修でいろいろな気づきや学びが得てやる気満々で職場に戻ったとしても、そこの風土は変わっていませんので、「朱に交われば赤くなる」如く、意識と行動が元に戻ってしまいます。

個人の成長を目論むのであれば、個人だけに焦点を当てるのではなく、その人がいる職場にも焦点を当てる必要があります。すなわち、個人の能力開発と組織開発を同時に追求するのです。具体的には、研修で学んだことを職場のメンバーにも伝えて「研修転移」を図ると同時に、職場実践を職場ぐるみで取り組んで、職場風土を変えていくのです。個人の意識変容→組織(職場メンバー)の意識変容→組織の行動変容という連鎖が起きるような仕組みを構築することが研修効果の極大化につながります。

 

経営を取り巻く環境の変化は一層スピードを増していくでしょう。変化に対応するためには、的確な人材戦略の構築は不可欠です。だからといって、教育研修を実施しさえすればいいというものではありません。繰り返しになりますが、今問われているのはその効果なのです。

次年度の教育研修の構想を練っている企業も多いと思いますが、改めて自社の教育研修の効果を検証し、改善の余地があるならば、本稿で述べた3つの観点から改善策を検討してみてはいかがでしょうか。

 


 

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的場正晃(まとば・まさあき)

PHP研究所 人材開発企画部部長

1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。


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