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松下幸之助経営塾スタッフ放談「10カ月で人が変わる」と評判! 人気講座の魅力を語る

2025年8月 6日更新

松下幸之助経営塾スタッフ放談「10カ月で人が変わる」と評判! 人気講座の魅力を語る

2011年の第1期開始から数度のカリキュラム見直しをへて進化し、今や口コミですぐに受講申し込みが埋まる人気講座となった「松下幸之助経営塾」。今年(2025年)4月に第30期が開講し、毎期12人程度と少人数制の塾ながら、卒塾生は300人を超える。同塾の魅力とは何なのか、講師とファシリテーターが率直に語り合う。

顔写真と名前・肩書き
渡邊祐介
主幹講師
渡邊祐介
PHP理念経営研究センター代表
川上恒雄
講師
川上恒雄
同研究センター首席研究員
的場正晃
ファシリテーター
的場正晃
PHP研究所 経営共創事業本部本部長

2011年の開講から大きく進化

川上 2011年2月に始まった「松下幸之助経営塾」(以下、経営塾)は、今年(2025年)4月に第30期を開講しました。15年目に入り、長く続く講座となりましたね。

渡邊 この間、受講生がなかなか集まらず、「中止も検討する」という話が出た時期もありました。けれども経営塾の内容を見直していくうちに、ある時期から卒塾生の口コミなどで集客に苦労することがなくなり、開催を続けることができたのです。

的場 卒塾された方々が経営塾を紹介してくださったり、卒塾生同士のつながりが広まっているのは、本当にありがたいことです。

川上 経営塾の内容面についても、2011年の開始当初と比べて、かなり変わりましたね。

渡邊 当初は、松下幸之助についての知識を座学で学ぶことが中心でした。今は、受講生同士の対話やケーススタディを増やすなど、実践につながる内容にも力を入れています。

的場 具体的には、第13期からアドバイザリー制度が始まったのが大きい転機でした。経営経験が豊富な方にアドバイザーとして入っていただき、実践的な内容に踏み込んでいけるようになりました。さらに第24期では、カリキュラムを変えました。松下幸之助の考え方や経営の進め方を知るだけでなく、自分の会社の経営にどう応用していくかということが大切なので、学んだことを振り返る時間や、受講生同士で議論する時間を増やしました。

渡邊 受講生が受け身の姿勢で学ぶだけでは駄目ではないかと考えたのです。受講生自身にとって、自ら「気づきを得た、変わった」という手応えがあったほうがいい。

川上 松下幸之助に関して教えるだけでなく、実践に重きを置いた内容に変化していったということですね。特に第24期から、カリキュラム改定の一環として導入したエグゼクティブコーチング(経営者・幹部を対象としたコーチング)は、受講生に好評だと聞いています。

的場 エグゼクティブコーチングを実施するとともに、定期的に受講生を訪問して個別にフォローを行なっていることが、高い評価につながっています。コーチングを通じて学びの整理をしたり、自分を客観視したりすることが、志を固めるうえで役立っているようです。

川上 エグゼクティブコーチングを導入した理由は何だったのでしょうか。

的場 受講生の置かれた環境がそれぞれ異なるので、個別に対応することも必要だと思いました。一人ひとりにコーチをつけようというのがそもそもの発想です。こうした取り組みを評価いただいたのか、卒塾生などの紹介を通じて経営塾に応募いただけることが多くなりました。

人が顕著に変わる。その変化を周囲も見ている

川上 この経営塾の特徴として、受講生の考え方や発言が、10カ月の受講期間を通して大きく変わるケースの多いことがあげられます。

的場 受講する中で、受講生が顕著に変わっていく。そして、その変化を周囲の人が間近に見ています。その効果が口コミで伝わり、先ほど述べたように経営塾の受講を希望される方が非常に増えたと思います。

渡邊 受講生が変化し、社員や家族をはじめ周囲の方もそれを実感するという例が、本当に多くなりましたよね。

的場 お父様が会長を務める土木コンサルタント会社の社長(ご長男)が経営塾を受講されたことがあります。会長と社長で方針が合わず、社内で公然と喧嘩をしていたそうです。しかし、社長が経営塾の第1回に参加された後、すごく変わったと。喧嘩をすることがなくなり、社内が平和な空気に包まれて非常にいい状態になったと。「PHPに救われました」と社長の妹さんが言ってくださり、その妹さんも次の期の経営塾で学ぶことになりました。妹さんに、お兄様である社長が何でそんなに変わったのかを尋ねたところ、「(経営塾の同期である)他の経営者の話を聞く中で、自分がどんなに恵まれているかに気づき、感謝をしなくてはいけない、不平不満を言っている場合ではないことに気づいたのではないか」と仰っていました。このような変化がここ数期で数えきれないくらい出てきています。

渡邊 松下幸之助の考え方からすると、自己観照をする、つまり自分のことを振り返ることで、物事を俯瞰して考えることができるようになったのではないでしょうか。

的場 今はリスキリングがブームですが、その限界があるとも言われています。人の変化や成長は、人とのかかわりの中で得られるもので、多くの企業に見られるように、パソコンの画面上で学ぶだけでは、知識・情報は得られるかもしれませんが、考え方や生き方を変えるところまではいきません。

川上 そういう意味では、経営塾では受講生が全国から京都の会場に集い、相互のかかわりの中で学びを深めることができます。そのためにも、できるだけ受講生同士で議論する時間を多くするカリキュラムになっていますね。

松下幸之助経営塾プログラム

的場 第29期の第3回で、特別講師としてハウステンボス前会長の坂口克彦氏に登壇いただいたのですが、ご講話の後、「受講生の反応が薄いですね」と仰っていました。坂口氏はその後、第5回を聴講されたのですが、受講生が積極的に発言する姿を見て、「数カ月前に会った人たちとは思えない」「人はこんなに変われるのか」と驚いておられました。

川上 受講生に、吸収力の高い若手経営者が増えてきたことも、変化がよく見られるようになった一因かもしれません。

渡邊 立派な創業者のご子息も受講されています。お膝元にいては親の偉大さはわかりませんが、経営塾の場に放り込まれて改めて認識する、そんな効果も明らかに感じます。

受講生同士の交流深く互いの自己開示が進む

川上 地域ブロック別の同志会(卒塾生の集い)を昨年(2024年)から始めましたね。

的場 全国を6ブロックに分けています。たとえば、中部・北陸・甲信月に卒塾生である髙井法博氏(TACT高井法博会計事務所代表)のお話を聞いたり、九州・沖縄ブロックでは5月に「ハウステンボス」と「ジャパネットたかた本社」を訪れたりするなど、精力的に活動しています。知り合いの経営者や社員を連れてきてもいいことにしており、多くの方が参加されました。

川上 地域ブロックの活動は早くも軌道に乗り始めましたね。

的場 卒塾生でなくとも気軽に参加できますし、むしろそこで出会った卒塾生の方々と交流する中で、温かい雰囲気を感じ、いつか自分も経営塾を受講してみたい、と思っていただいているようです。

川上 それがまた、経営塾に対する信頼度や認知度を上げる要素になっているかもしれません。その経営塾は、この第30期からさらにカリキュラムをリニューアルしました。

的場 講座全体のストーリー構成を見直しました。第1回で「志」について学んでいただきますが、志を、普遍性・再現性・共感性といった要素を入れた理念に昇華させなければいけません。志から入って理念へ、つまり松下幸之助と同じステップを追体験するために、第2回で奈良県の天理教教会本部を訪問し、幸之助が産業人の使命を知るきっかけとなった現場を見学する流れにしたのです。一方で、幸之助のPHP活動の拠点であった真々庵の見学を、自然観・宇宙観の学びと併せて後半の第4回に実施することにしました。

渡邊 天理教教会本部に行って幸之助が感じたことを受講生自身が体感し、真々庵でも理解を深めてもらう。実際に見て感じていただくのが大切ということです。

川上 10カ月にわたる経営塾の最終回である第6回では、受講生が自らの志を発表します。今回のカリキュラムの見直しにより、受講生の志がいっそう高まることが期待されます。

的場 開講当初は第6回にいきなり志を発表してもらっていました。ただ、志の解釈を取り違えている受講生もいて、もったいない発表がみられることもありました。だから第5回にプレ発表をしてもらい、軌道修正したうえで第6回の本番に臨んでもらうようにしました。また、志を発表する際には、志を立てる理由やきっかけ、すなわち志の原点にも触れるようにお願いしています。

渡邊 理念をつくればいい、それを組織に浸透させればいい、といったような発表では十分とはいえません。何のために自社は存在するのか、自社の事業の社会的意義は何か、そこまで深く考える必要があるでしょう。

的場 経営塾では回を重ねるごとに、「この人たちだったら自己開示してもいいかな」という雰囲気が受講生間で徐々に芽生えてきます。「自分はこういう考えで経営している」などと語り合う、そこから刺激を受けよい循環が生まれる。10カ月にわたって関係性が熟成され、一生涯の仲間になっていくような人もできる。タイパの時代とは逆行しているかもしれませんが、そこにこそ経営塾の魅力があるのです。

渡邊 こうした受講生同士の交流の深さは、巷の経営者交流会に参加して、名刺交換をしただけで得られるものとは比べものになりません。

川上 経営塾にはこうした魅力がある半面、今後、松下幸之助の名を知らない経営者が増えていくのではないかという懸念があります。

渡邊 この経営塾が松下幸之助の名を冠しているのは間違いないのですが、たとえ幸之助のことを知らなくても、若い人により伝わる流れをつくっていきたいですね。

川上 たとえば、かつての経営塾では、幸之助の薫陶を受けた方に主として特別講師をご担当いただいていたのですが、特別講師も徐々に世代交代し、近年では幸之助と同じような考え方で実践して成功した経営者の実例を学ぶ機会が増えましたね。それによって、若い受講生のニーズにも合ってきたような気がします。

的場 経営塾の圧縮版のような「経営道コース」という2日間の講座があるのですが、そのゲスト講師として、経営塾の卒塾生に登壇をお願いしています。経営塾で学んだことの実践には迫力があり、その実践体験を交えた講話はとても評判がいい。一方で、経営塾で学んで活躍している卒塾生にできるだけスポットライトを当て、世の中に知ってもらいたいという狙いもあります。そういう卒塾生に学ぶ人が増えれば、それだけ世の中の企業経営がよくなると思うのです。いずれは経営塾のゲスト講師として、卒塾生が登壇してもいいのではないかと思っています。

事前の知識は不要。気づきを得ることが価値に

川上 これから受講を考えている方に伝えたいことは何でしょう。

渡邊 自発的に受講されるのではなく、創業者や先代に言われて経営塾に参加する方もおられます。しかしそのような方こそ、大きな学びが得られるともいえるでしょう。経営することがいかに社会的影響力が大きく、トップの振る舞いで従業員やその家族の幸福度が変わってくるかという重大さを認識できるだけでも、受講する意味は非常に大きいと思います。

川上 「周りがすごい人ばかりで、私が参加してもいいでしょうか」と言う若い女性経営者がいました。むしろ経営塾には、そういう人を応援してあげようというカルチャーがおのずと醸成されてきます。松下幸之助についてよく知っている方ばかりが受講されるわけではなく、逆に知らないからこそ学びは大きく、経営者として成長できることでしょう。幸之助が「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」と述べていたように、経営塾では幸之助に関する知識を増やすことよりも、塾での学習を通して経営に関する気づきを得ることに大きな価値が置かれています。

的場 とはいえ、「こんな講座とは思いませんでした」とスピンアウトする人がときどきいます。そんな人に共通しているのは「具体的なノウハウ」を求めていることです。だから、第1回に「抽象的な議論をしますよ、具体的な議論はあまりないですよ。抽象的な議論の背景に経営の原理原則があるのですよ」と伝えることにはしています。そうした中、「海外でMBAを取得するために多額な投資をしたが、経営塾のほうがずっといい。MBAで教わったことは、5年経った今、ほとんど使えない」と述べた受講生がいました。経営塾で学んだことは具体論でなく抽象論だけど、時代が変わっても変わらないものを得たと言うのです。最初は抽象論に戸惑う方も見られますが、後半になるにつれ、皆さんそういうことがわかってくるようです。経営塾で10カ月かけて議論したことは一生残るのではないかと思います。

渡邊 10カ月という長い期間ですが、受講生の方には経営の本質やコツについて、ぜひとも素直な心で気づきを得ていただければありがたいですね。

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本記事は、電子季刊誌『[実践]理念経営Labo』Vol.14から転載したものです。登録不要、全編無料でお読みいただけますので是非ご覧ください。

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