包容力をもつ~松下幸之助「人を育てる心得」
2015年12月13日更新

指導者は自分に敵対する者をも受け入れる大きな度量をもちたい
群雄が割拠した中国の春秋時代において、随一の覇者と目されているのは斉の桓公だが、その成功は宰相である管仲の力によるところが大きいといわれる。ところが、この管仲は以前に斉の国の公位継承争いの際、桓公に敵対し、その命をも狙った人間である。そこで桓公は、即位に際して管仲を処刑しようとしたのだが、家臣の「天下に覇を唱えようと望むなら管仲を用いるべきです」との忠言を入れ、これを宰相に登用した。そして管仲もその知遇にこたえ、大いに手腕を発揮し、富国強兵の実をあげ、桓公をして天下の覇者たらしめたのである。
もし桓公が、自分に敵対した者は許せないという小さな考えで、部下の忠言を受け入れていなかったら、彼の成功はあり得なかったかもしれない。それを許しただけでなく、いわば政治の実権を与えるというほどに思い切って用いた桓公の度量の大きさ、包容力といったものが、成功に結びついたわけである。
秀吉が、「信長公はまことに立派な方だが、ただ、一度敵対した者は徹底して憎み、非常にきびしく報いた。そうしたことが光秀の反逆を生む原因ともなったのだと思う。だから自分は、いったん敵対しても、降参してきた者は従来の家臣同様にねんごろに迎えている。それで早く天下を平定できたのだ」という意味のことをいっているが、これなども同じことだと思う。敵対した者は許さないとなれば、「しょせん助からないなら徹底的に戦おう」というような気持ちになるが、「降参すれば優遇する」ということなら、無益な戦いはやめようと考えるだろう。
そうした敵対するとかしないとかいうことだけでなく、自分の好ききらいとか、あるいは主義主張といったようなことにとらわれて、人を受け入れたり、しりぞけたりすることも当然好ましくないわけである。
そうした小さな考えや感情にとらわれずに、すべてのものを受け入れ、用いるべきところに用いるという、大きな包容力を指導者はもたなくてはならない。そういう人のもとには、おのずといろいろな人が集まってくるだろうし、またそれぞれが適所について生かされるということにもなりやすいと思う。"大将の器"というようなことばもあるが、どれだけの人を受け入れることができるか、といったいわば心の広さ、度量の大きさといったことも、その器であるかどうかを決める大事な条件だといえよう。
【出典】PHPビジネス新書『指導者の条件』(





































































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