人の組合わせ~松下幸之助「人を育てる心得」
2016年3月28日更新
指導者は適切な組合わせにより人を生かすことが大事である
武田信玄は、生涯自国に城というものを築かず、"人は石垣、人は城"という考えに徹して、人を重視し、人を最大限に生かして地歩を築いたが、人を使うについて、こういうことをいっているという。
「自分は部下に釣合ということを考えている。たとえば馬場信房は寡言で気位が高い。だから、よくしゃべりものごとをテキパキとやる内藤昌豊と組ませる。山県昌景は性急で、敵を見ると自分の軍勢だけでも攻めかかるようなところがある。そこで、高坂昌信のように、まずじっくり考えてから行動する者と一緒に働かせる。強情な者には柔和な者を組ませれば、水と火とが物を煮るようにうまくいくものだ」
つまり、人を使うにあたっては人の組合わせということが大事だというわけである。これはその通りだと思う。よく適材適所ということがいわれる。それぞれの人をそれぞれに適した場所に用いることによって、人も生き成果もあがるということで、これはきわめて大事なことであるが、その際に、適所というものを仕事それ自体とともに、人の組合わせといった面もあわせて考える必要があると思う。
人にはそれぞれに長所短所がある。だからその長短補いあうような組合わせをすれば、それによってどちらもより生きてくるだろう。また、そのようにはっきりしたものでなく、なんとなくウマが合わないといった微妙な問題もある。もちろん、そういうものはそれぞれが努力してある程度は解消していくことが望ましいが、やはり人の組合わせよろしきを得て、それをなくしていくということが大切であろう。
実際、世間にはそういう実例を見ることが多い。三人の人に仕事をさせていたが、それぞれに優秀な人なのにどうもうまくいかない。それで思い切って、その中の一人を他のところに移して二人でやらせてみたら、わずかの間でこれまでの倍以上の成果があがるようになり、その一人の人も、新しいところで非常な活躍をしている。そういったことが、お互いの経験の中に必ずあると思う。
立派な人、賢い人ばかりを集めたからといって必ずしもものごとがうまくいくとはかぎらない。反対に平凡な人たちでも組合わせよろしきを得れば、非常な成果があがる。そうした人の組合わせの妙というものを指導者は知らなくてはならないと思う。
松下幸之助著『指導者の条件』より