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サム・ウォルトン「ウォルマートがいい買い物をした時には、お客さまにもいい買い物をしてもらおう」~名経営者の人材育成

2016年10月18日更新

サム・ウォルトン「ウォルマートがいい買い物をした時には、お客さまにもいい買い物をしてもらおう」~名経営者の人材育成

世界一の小売業ウォルマートの成功を支えたのは、創業者サム・ウォルトンの熱い志であり、1ドルを大切にする姿勢でした。ウォルトンの言葉と人材育成論を解説します。

「毎日が安売り」――低価格戦略を徹底するウォルマート

「お客さま第一」は単なるかけ声ではなく、具体的な行動で示さなければならない。それも一時的なものではなく、長く続く地道な行動であるほど価値を持つ。

一つの見本が世界一の小売業ウォルマートだ。ウォルマートの成功を支えたのは、EDLP(everyday low price)つまり、「毎日が安売り」という徹底した低価格戦略だ。チラシを使った特売日を目玉にする日本の小売業とは戦略に違いがあるが、低価格へのこだわりという点では同じであり、この「毎日が安売り」がウォルマートを世界ナンバーワンへと成長させることになった。

創業者サム・ウォルトンの1ドルを大切にする姿勢

創業者サム・ウォルトンは1945年にバラエティストアを始め、1962年に大きなディスカウントストアをつくろうとウォルマート1号店を始めている。

ウォルトンの特徴は「ウォルマートがいい買い物をした時には、お客さまにもいい買い物をしてもらおう」という考え方だ。たとえば定価2ドルの品を50セントで仕入れたとすると、ウォルトンは50セントに30%を上乗せして65セントで売った。「定価2ドルならもっと高くても」という声に従うことはなかった。

こうした考え方によりウォルマートは順調に成長したが、どれほど大きくなろうとも変わらなかったのが、ウォルトンの1ドルを大切にする姿勢だった。こう言った。

「私たちの使命はお客さまに価値を提供することだが、その価値には品質やサービスばかりでなく、お客さまの支出を節約することも含まれる。ウォルマートが1ドルを浪費すれば、それはお客さまの懐に直接響くのである。逆に私たちが1ドル節約するたびに、他社との競争で一歩先んじることになる」

創業者の熱い志を守り続ける

ウォルトンは1985年、『フォーブス』で「全米一の金持ち」と報じられたほどの資産家である。今でもビル・ゲイツが「世界一の金持ち」なら、ウォルトンの末裔たちは間違いなく「世界一の金持ち一族」だ。

しかし、ウォルトンもウォルトン一族も質素な生活を好むのは、ウォルマートの1ドルを大切にする文化を守りたいと願っているからだ。ウォルトンは自らも質素倹約を心がけ、社員にもこう言い続けた。

「贅沢に捉われると、もっとも大事なこと、つまりお客さまに仕えるということに集中できなくなる」

「わが社の業績が伸びているのは、私たちが賢いからでも、大企業だからでもなく、お客さまが支持してくれるからだ」

「お客さまに奉仕する者、また、そうする人々をサポートする者以外、わが社は必要としない」

企業規模が大きくなると創業の精神を忘れ、「俺たちは大企業だ」と思い上がる人が出てくるが、ウォルトンは自分たちの成功は一店一店で日々努力している成果だと絶えず強調し続けている。ウォルトンは自分が亡くなった後、子どもや孫が贅沢に走ったら化けて出ると言っていたが、同様にウォルマートが大企業病に陥ったらきっと化けて出るつもりだったはずだ。

企業の成功には創業者の熱い志と、その志を守り続けることが何より大切なのだ。

参考文献 『私のウォルマート商法』(サム・ウォルトン著、渥美俊一・桜井多恵子訳、講談社+α文庫)、『運が開ける!名経営者のすごい言葉』(桑原晃弥著、PHP研究所)

桑原晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。
著書に『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(以上、PHPビジネス新書)、『スティーブ・ジョブズ名語録』『サッカー名監督のすごい言葉』(以上、PHP文庫)、『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』『天才イーロン・マスク 銀河一の戦略』(以上、経済界新書)、『ジェフ・ベゾス アマゾンをつくった仕事術』(講談社)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)などがある。

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