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松下幸之助のレジリエンス~困難に負けない精神力の高め方

2024年1月 9日更新

松下幸之助のレジリエンス~困難に負けない精神力の高め方

ストレスフルな生活環境や職場環境に身を置き続けるうちに、精神的不調を訴える人が増えています。困難な出来事に直面しても、負けない心やタフな精神力を維持するためにはどうすればいいのでしょうか。昨今、注目を集める「レジリエンス」の観点から、松下幸之助のエピソードとともに、そのポイントを考察したいと思います。

INDEX

希望を見出しにくい時代

2024年の幕開けと同時に、大地震や航空機の事故、大火災、等々、悲惨で厳しい出来事が続きました。被害に遭われた方がたが置かれている過酷な状況や、悲しみ、不安、あせりといったやるせない心情は、察するに余りあります。
ここ数年、大規模な自然災害の発生が常態化したり、戦争・紛争が勃発・長期化するなどの影響で、私たちの日常生活にも大きな支障が出始めています。こうした状況がいつまで続くのか、いつになったら楽になるのか、先の見通しのつかない現代は、前途に明るい希望を見出しにくい時代なのかもしれません。

このような状況は、仕事をする際にも大きなプレッシャーとなってビジネスパーソンの精神的な負荷を増幅しています。厚生労働省の調査(※1)によると、現在の仕事や職業生活に関して「強い不安、悩み、ストレスを感じることがある」と回答した労働者の割合が82.2%(前年調査53.3%)に達することが明らかになりました。
強いストレスと向き合いながら仕事をしなければならないがゆえに、それに負けない精神力、すなわちレジリエンスを私たちは高めなければならないのです。

※1 令和4年「労働安全衛生調査」。調査対象者18,000人

レジリエンスとは

レジリエンス(resilience)とは、もともとは物理学の用語で「外力による歪みを跳ね返す力」という意味でしたが、それが後に、精神医学の領域で「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と定義づけられるようになりました。
レジリエンスの高い人は、不利な状況でも現実を直視することができ、また、それらに柔軟に対処できるので、勇気をもって冷静に困難に向き合っていけるのです。

参考記事:レジリエンスとは? 意味や高める方法を解説│PHP人材開発

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松下幸之助のレジリエンス

94年の生涯で何度も難局に直面した松下幸之助(パナソニック創業者、PHP研究所創立者)。彼のレジリエンスの高さが垣間見えるエピソードをご紹介します。

こけたら立たなあかんねん

昭和9年9月21日、四国、近畿地方を中心に、気象観測所始まって以来の大型台風「室戸台風」が吹きあれた。その爪痕は深く、死者・行方不明者3,000人、家屋の全半壊は88,000戸というすさまじい災害であった。
前年、大阪・門真に本社、工場を移転したばかりの松下電器(現・パナソニック)も大打撃を受けた。本社一部損壊、乾電池工場全壊、配線器具工場全壊......。
折悪しく、幸之助は、夫人が風邪をこじらせて入院中で、病院から工場へ駆けつけたのは、ようやく風もおさまりかけていた昼近くであった。
「あっ大将、ご苦労さんです」と、出迎えた工場長に対して、幸之助は言った。
「きみなあ、こけたら立たなあかんねん。ちっちゃい赤ん坊でもそうやろう。こけっぱなしでおらへん、すぐ立ち上がるで。そないしいや」
そう言い残すと、工場の被害状況などどこ吹く風といった様子で、一瞥もくれることなく立ち去った。
幸之助の言葉のもと、即日再建のための活動が始められた。その数日後、幸之助は幹部を招集した。
「今はきみたち個人も会社も被害を受けてたいへんだが、同様にお得意先の問屋さん、販売店さんも無事であったとは思えない。ついてはお見舞金をお届けしたいと思う」
全壊、半壊、床上浸水等々、その被害状況に応じて見舞金を用意する。幹部をはじめ従業員たちは泥海と化した市内に散っていった。

出典:『エピソードで読む松下幸之助』PHP新書

このエピソードが物語るように、現実を直視し、事態を打開するためにとにかく行動するのが松下幸之助流の思考・行動パターンでした。こうしたレジリエントなスタンスが数々の難局を乗り越える原動力になったのです。

レジリエンスを築く10カ条

レジリエンスを高めるための方法論についてはさまざまな議論がなされていますが、ここではアメリカ心理学会が提唱する「レジリエンスを築く10カ条」(※2)を引用します。

1.周囲の人と良好な関係をつくる
2.危機やストレスに満ちた出来事でも、ポジティブにとらえる
3.変えられない状況を受容する
4.現実的な目標を立て、前進する
5.不利な状況であっても、決断し行動する
6.失敗の後には、自分と向き合い、要因を分析する
7.自信をもつ
8.長期的な視点に立って、さまざまなリスクを検討する
9.希望的な見通しを維持し、視覚化する
10.定期的に運動し、心身の健康を維持する

ストレスに負けない精神的な強さや、目の前で起きる出来事に的確に対処する柔軟性は、これからを生きるビジネスリーダーには必須のコンピテンシーと言えます。自分に合ったやり方で、日ごろから自身のレジリエンスを高めておくことは、リスキリングと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な取り組みかもしれません。

※2 American Psychological Association. (2014). The Road to Resilience を参考に文章を一部加筆修正

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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