階層別教育のご提案

公開セミナー・講師派遣

通信教育・オンライン

DVD・テキスト他

レジリエンスとは? 意味や高める方法を解説

2023年8月 4日更新

レジリエンスとは? 意味や高める方法を解説

レジリエンスとは、仕事のストレスや困難などをはね返し、立ち直る力のことです。ここでは、その意味や身につける方法、高め方を解説します。

INDEX

レジリエンスが注目される背景

レジリエンスが注目される背景

厚生労働省の調査によると、働く人たちの約6割が、仕事の質や量、対人関係、仕事の失敗、責任の発生等によって、職場で何らかのストレスや不安、悩みを抱えて働いていることがわかっています。(平成30年 労働安全衛生調査(実態調査))
この「仕事の質」ということであれば、金銭を扱う仕事、人命にかかわる仕事、時間に追われる仕事、ミスや遅れが許されない仕事は、緊張がともないストレスがたまりやすい仕事の代表といえるでしょう。また、「対人関係」では、上司との関係が与える影響が大きく、悪化してしまうと、本人には大きなストレスとなります。

さらに、コロナ禍を経て、私たちの働き方は大きく変わりましたが、このような「変化」もストレスの大きな要素といえるでしょう。たとえば、これまでは上司や同僚、あるいは得意先と、対面でコミュニケーションが取れるというのが当たり前でした。それが「Zoom」などのビデオ会議ツールを使って画面越しにコミュニケーションをとることが多くなり、その対応に追われるという人もいるでしょう。仕事のやり方を変えざるを得なくなったことで、いままで当たり前にできていなかったことができなくなったり、試行錯誤を重ねたりすることが、心身への大きな負担となることもあります。

このように考えてみると、目まぐるしく変わる現代の社会・経済状況で働く人にとって、どんな職業、職種であろうと、仕事をする限りストレスはつきものであるといえるでしょう。

レジリエンスの意味・定義

現代のストレスフルな環境で働く人には、困難に直面しても、その環境に適応して再起する力が求められています。その力が「レジリエンス」です。まずは、全米心理学会が定めたレジリエンスの意味・定義をご紹介しましょう。

逆境やトラブル、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス

レジリエンスのある人は、高い自己認識があり、自己の強みを生かせる土俵で仕事を選択し、感謝の念や仲間とのつながりを大切にし、自分らしい働き方をします。合理的に物事をとらえる。しなやかに困難に対応する。たくましさをもって逆境を乗り越える。そしてつらい体験から価値ある何かを学び、そのたびに成長する。そうした彼らの姿は、働き方を模索している人たちにとってよきロールモデルとなります。
長く健康で働き続け、仕事で着実な成果をあげたいと考える人にとって、レジリエンスを学ぶことは大きな力となってくれるはずです。

講師派遣「レジリエンス向上研修」はこちら

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には次のような特徴があるとされています。

(1)回復力
困難に直面しても、すぐに元の状態に戻ることができる、心のしなやかさをもっています。柔軟な心は、レジリエンスの高さの証です。

(2)弾力性
予想外のショックやストレスに対して、弾力性をもって耐えられる精神を持っています。人から批判され、嫌なことを言われても、傷とならずに心を守ることができます。

(3)適応力
予期せぬ変化に抵抗するのではなく、それを受け入れて合理的に考え、対応することができます。

このように、レジリエンスは決して「特殊能力」ではなく、多かれ少なかれ誰もが持っている力だといえます。ただし人によって、失敗経験や過度なストレスなどが原因で減退している場合もあるでしょう。しかし、「回復力」も「弾力性」も「適応力」も、いわば「心の筋肉」のようなものですから、年齢性別関係なく鍛えることが可能です。

レジリエンスを高める3つの姿勢

レジリエンスを高めていくうえで、次の3つの姿勢を持つことが非常に重要です。

(1)現実を直視する
(2)物事をしなやかに柔軟にとらえる
(3)合理的な思考を持つ

「失敗を恐れる」とは?

レジリエンスは失敗から立ち直る力であるわけですが、では「失敗を恐れる」とはどういうことか、まずはそこから考えてみましょう。あなたが仕事上で嫌だなと感じる場面を思い浮かべてみてください。「この仕事をやってくれないか」と頼まれて「無理です」と答える。「きみならできる」と励まされても「無理です」。「新規の顧客開拓のために電話をしなさい」と指示されても「無理です」。

このように、新しい試みや仕事に対して「無理」と言いながら行動回避する人の内面には、ある共通した心理があります。それが、「失敗に対する恐れ」です。「失敗は悪だ」「面倒なトラブルに直面したくない」という心理が、失敗につながるリスクを避けようとするのです。行動を回避したくなる気持ちは誰の心にもありますが、それを「癖」にしてはいけません。

「失敗への恐れ」は、私たちから積極性を奪います。しかし、恐れ、不安、心配といった「ネガティブな思考や感情」は必ずしも悪いものではありません。それは、ネガティブな感情がポジティブな役割を果たすケースもあるからです。

不安があるから私たちにはやる気が出て、それが達成につながるのです。失敗が怖いから私たちは真剣に学ぼうとするのです。そして、正しい憤慨は、ときに偉大な成果をあげる原動力となります。

無意識のうちにネガティブ感情に支配されない

大切なことは、無意識のうちにネガティブ感情に支配されて悪循環に陥らないことです。そのため、レジリエンスを鍛える過程では、先述の3つの姿勢を重視しているのです。

不安や恐れ、怒りなどのネガティブ感情にとらわれた心理状態は、失敗体験や不運な出来事を大げさにとらえ、自分ではどうすることもできないと、問題解決をあきらめてしまう結果になりがちです。

そうではなく、現実を正確に理解し、創造的に柔軟に対応策を考え、合理的な思考をもって行動する。そうした姿勢で向き合い困難を乗り越えた体験を積むことで、レジリエンスは鍛えられ、高められていくのです。

レジリエンスを高める3つのステップ

上図のN字は、仕事で大きな失敗をしてドン底まで精神が落ち込みつつも、なんとか立ち直り、意欲を取り戻すようすを示しています。こうした逆境体験を通して、「自分は失敗することはあるが、そのたびに再起することができる」という自信が身につき、新しい仕事にも臆せずチャレンジすることができるようになります。

こうした逆境体験は、以下の3つのステップから成り立っています。これらのステップを踏むことで、本来もっていたレジリエンスの力を取り戻すとともに、新たな心の筋肉を鍛えることができます。

(1)精神的な落ち込みを「底打ち」する
困難や失敗に直面すると、心が疲れ、精神的に落ち込みやすくなります。その原因は、不安や心配、憂鬱(ゆううつ)感や罪悪感などのネガティブな感情です。そのネガティブな感情の連鎖を断ち切り脱出する方法を学ぶことで、心の落ち込みを底打ちさせることが第1ステップです。

(2)スムーズな「立ち直り」を図る
次は、元の心理状態に回復するステップです。そのためには、心の筋肉であるレジリエンスを鍛えることで、障害を乗り越え前進する力を得ることが必要となります。

(3)逆境体験を「教訓化」する
困難を克服したあとに、過去の逆境体験を振り返り、次につながる意味を学ぶ内省が第3ステップです。ただし、体験後すぐに行う必要はありません。心の痛みが薄れるのを待ち、気持ちに余裕ができてから行うのが適切です。

この3つのステップを実践し繰り返すなかで、逆境から立ち直る力が強化されていきます。その結果、失敗したり対人関係の問題が起こったりしても、そのたびに気持ちが落ち続けることはなく、すぐに立ち直る能力を発揮できるようになっていくのです。

そして、「どんなことがあっても再起できる」という自信がつくと、経験のないことに対しても、一歩踏み出して行動できるようになります。保守的で臆病だった自分から、新しいことにもチャレンジできる自分へと変わるのです。

レジリエンスを高める7つの技術

前項で、レジリエンスには3つのステップがあることを述べましたが、それぞれのステップで効果的な技術を身につけることで、より実践的にレジリエンスを鍛えることができます。各ステップで使う技術は次のとおりです。

STEP1 精神的な落ち込みを「底打ち」する
(1)ネガティブ感情の悪循環から脱出する
(2)役に立たない「思い込み」を手なずける

STEP2 スムーズな「立ち直り」を図る
(3)「やればできる」という自信を科学的に身につける
(4)自分の「強み」を活かす
(5)心の支えとなる「サポーター」をつくる
(6)「感謝」のポジティブ感情を高める

STEP3 逆境体験を「教訓化」する
(7)痛い体験から意味を学ぶ

第1のステップ「底打ち」は、精神的な落ち込みから抜け出し、下降を底打ちさせるプロセスです。ここでは2つの技術を使います。私たちは、失敗をするとストレスを感じ、精神的に落ち込みます。すると不安や心配といったネガティブな感情が生まれ、行動が後ろ向きになっていきます。(1)は、このときに精神的な落ち込みを食い止め、ネガティブな感情が生まれる根本原因を解消する技術です。

第2のステップ「立ち直り」は、逆境をバネに飛躍するためのプロセスです。人は一度落ち込むと、元の状態に戻るだけでも難しいものです。そこからさらに飛躍するには、重力に逆らって上昇するための筋力が必要となります。(3)で自信を科学的に身につけ、(4)では自分の強みを見つけて活かす。そして(5)で心の支えをつくり、(6)でポジティブ感情を高める。これらの技術は、心理的なたくましさの源となるとともに、ストレス度の高い体験から心や自尊心を守る緩衝材としての役割も果たします。

第3のステップは「教訓化」です。失敗や逆境から意味を学び次の困難に備えることは、成長のための大切なプロセスです。(7)の技術によって、過去の体験をその後困難に出合ったときのチャレンジに活かすことができるようになります。

どれもシンプルで、仕事などでですぐに取り入れることができるものです。ただ、心の筋肉を鍛えるには、本を読んで知識を蓄えるだけでは不十分です。心の筋肉も、体の筋肉と同じように、トレーニングをすることでこそ鍛えられるのです。

参考記事:新入社員や若手社員がレジリエンスを高めるには?│PHP人材開発

強みを活かせばレジリエンスが高まる

強みを活かしてレジリエンスを高める

上記の7つの技術のうち「(4)自分の「強み」を活かす」について考えてみましょう。レジリエンスを高めるには、「自分の強みを活かすこと(=ストレングス・ユース)」が不可欠です。強みを活かして結果を出していくことで、何よりも強い「自己肯定感」を得ることができます。自分の強みを新しい用途で用いるとき、その人は「幸福感」を体験します。さらに強みを自分のためだけでなく、周りの人や地域社会のために活かすことで大きな「やりがい」が生まれます。これらすべてが相まって、レジリエンスがどんどん高まっていくのです。

自分の強みを見つける方法

強みを活かすためには、自分がどんな強みを持っているのかを見つけて、それを伸ばしていかなければなりません。強みを見つける3つの方法を紹介します。

(1)自分自身に質問をする

次の5つの質問を自分自身に投げかけて、じっくりと考えてみましょう。
・今までで最も「うまくいった」と思うことは何か
・自分に関して、最も好きな点は何か
・何をしているときに最も楽しいと感じるか
・どんなときに自分らしいと感じるか
・自分がベストだと感じるのはどんなときか

(2)自分のまわりの人にきく

自分の強みが見えにくいのは、多くの場合、それが自分にとって「当たり前」だと感じているからです。自分の強みは、自分よりもむしろまわりの人たちのほうがよく見えている可能性があります。そのため、自分にどんな強みがあると思われているのか、周囲の人に質問をしてみるのもいい方法でしょう。

(3)診断ツールを利用する

インターネットで公開されている「診断ツール」を利用して、自分の強みを見つける方法もあります。PHP通信ゼミナール『レジリエンスの高め方入門コース』では、アメリカのVIA研究所が提供している無料診断ツールが推奨されています。「創造性・誠実さ・思いやり・公平さ・寛容さ・審美眼」など24種類の人格としての強みが設定され、そのうちどの項目により当てはまるかによって、自分の強みを知ることができます。

これらの方法によって自分の強みを自己認識した後は、それを仕事に活かすことを習慣にしていきます。どのように活かすか、方法を考え、チャレンジしていくことが大切です。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『レジリエンスの高め方入門コース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

PHP通信ゼミナール『レジリエンスの高め方入門コース』はこちら

PHP研究所の人づくり・組織づくり

森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

新着記事企業は人なり~PHPの人づくり・組織づくり

  • 公開セミナー
  • 講師派遣・研修コンサルティング
  • 通信教育
  • eラーニング
  • DVDビデオ教材

×