「やりがい」や「誇り」の醸成を
2012年4月27日更新
皆さん、職場の若手社員の顔を思い浮かべてください。仕事に対する「やりがい」や「誇り」をもっているでしょうか?毎日、明るく元気に働いているでしょうか?
メンタルヘルスの問題を抱えている企業が急激に増えています。特に、若い社員がメンタルヘルスに問題を抱え、休職や退職をしてしまうというケースが多いようです。なぜ、そのような人が増えてしまっているのでしょうか。
以前に比べ、若手社員のストレス耐性が低くなってしまい、ストレスに押しつぶされやすい人が増えたというのも一つの原因だといえます。しかし、職場におけるストレスを完全に消し去ることは不可能です。一つを対処したら、すぐに次の問題が生まれてくる。それが、今の職場の現状です。
前回のコラムでストレスに負けない力SOCを紹介しました。繰り返しになりますが、SOC(Sence of Coherence)は「首尾一貫感覚」と訳され、認知・行動・動機づけの3つの側面をもつストレスに対処する力のことです。そして、このSOCは次の3つのセンスで構成されています。
◎わかる感(把握可能感)
自分のおかれている現状を理解し、今後の状況を予測できるという感覚
◎できる感(処理可能感)
自分にはストレスに対処するために、必要な資源があるから、なんとかなるという感覚
◎やるぞ感(有意味感)
ストレスを対処することに意味や、やりがいを見出せる感覚
また、そこでは、社員一人ひとりの仕事に対する「やりがい」や「誇り」を高めていくことが、メンタルダウンする人を生まないために大切だと考えられています。「やりがい」や「誇り」は仕事をするうえでの心の拠り所となるものです。それがあれば、ストレスを感じることがあったとしても乗り越えていけると考えられています。
しかし、「やりがい」や「誇り」は自然発生的に生まれてくるものではありません。上司や先輩とのコミュニケーションのなかで育まれるものです。スピード感が求められる時代。多忙な日々の業務のなかで具体的な指示や指導はできても、じっくりと話をするという時間がなかなかとれないという現状もあると思います。
だからこそ、「やりがい」や「誇り」を高められるような仕組みを組織で作ってしまおうというのです。たとえば、業務連絡の場だった朝礼を夢や目標を語る場に変える。月に1回、30分の面談の場を作る――最初は、強制的でもかまいません。続けていく習慣がつけば、いつしかそれが当たり前になり、風土になります。
職場環境、風土はSOCを高めていくための大事なポイントになります。SOCを高める職場、低めてしまう職場に見られる共通点をそれぞれ以下に紹介します。
<SOCを高める職場の共通点>
・組織の理念や目標、行動規範を明確に示し、浸透させている。
・社員同士が支え合う風土がある。
・成功体験を繰り返す仕組みがある。
・職務保障が充実している。
・仕事の要求度と裁量度のバランスが取れている。
・社員同士が刺激し合い、成長できる仕組みがある。
・仕事の意味を感じさせるための工夫をしている。
・組織の一員であるという誇りやモチベーションを維持・向上する仕組みがある。
<SOCを低めてしまう職場の共通点>
・組織の理念や目標が浸透していない。
・仕事の役割が場当たり的で明確になっていない。
・お互いに無関心である。
・失敗した人に次のチャンスを与えない。
・職務保障の制度が整っていない。
・仕事の要求度と裁量度のバランスがとれていない。
・仕事の意味を実感させるための工夫がない。
・社員同士が刺激し合い、成長できる仕組みがない。
・組織の一員であるという誇りやモチベーションを維持・向上する仕組みがない。
(DVD『メンタルヘルス 職場を元気にするコミュニケーション』「活用の手引き」より)
さて、みなさんの職場はいかがでしたでしょうか? もし「SOCを低めてしまう職場の共通点」にあてはまるところがあれば、DVD『メンタルヘルス 職場を元気にするコミュニケーション』を参考に、ぜひ改善に向けて動き出していただきたいものです。
教育出版局 企画制作部 海野翔太
DVD
部下の“わかる感”“できる感”“やるぞ感”を育て、ストレスに強い人づくり、上司と部下とのコミュニケーションや元気な職場の仕組みづくりの具体的な方法を紹介します。