雑貨店から広がる"女性の心の教育"~「共育」の力で一隅を照らす人を育み「心を磨く学校」を全国へ
2025年8月28日更新

オシャレな外観と温かみのある内装。250坪もの広い店内には可愛らしい雑貨が並び、女性客を中心に賑わっている。「手に届く暮らしの幸せ」をコンセプトに10府県34店舗の大型雑貨店を展開するアミングは、低迷する小売業界において躍進を続け、一目置かれる存在だ。代表取締役社長の西江あきよ氏によると、その要因は「人づくり」。スタッフの99%が女性という中、どのように人材育成に取り組んでいるのか、その秘密と今後の夢に迫る。
株式会社アミング 代表取締役社長 西江あきよ(にしえ・あきよ)

ライフスタイルショップ「Aming(アミング)」を運営。1984年石川県金沢市の郊外に15坪の小さな雑貨屋として創業。現在は約250坪の大型ライフスタイルショップを、北信越、北関東、愛知、滋賀、京都などロードサイドを中心に34店舗展開する。スタッフ"共育"に力を注ぎ、自ら毎月「心の勉強会」を開催。仕事を通して心を磨き、「人に喜ばれる自分になる」ことを全スタッフと志し、共に学ぶ仲間を求めて日本全国100店舗展開を目指す。2014年に船井総合研究所主催「サステナグロースカンパニーアワード」において顧客感動賞を受賞。著書に『心を磨く学校――自分を輝かせたいすべての人たちへ』(ディスカヴァービジネスパブリッシング)。
株式会社アミング
本社:石川県金沢市/創業:1984年/事業内容:キッチン雑貨・食品・インテリア雑貨・ベビーキッズ服・洋服・ファッション雑貨・バッグ・アクセサリー・ハウスウェア・リラクゼーション・化粧品・化粧雑貨・文具・ラッピング・ガーデン雑貨などの販売
心を育みお客様に癒しの時間を
アミングには、生活必需品はほとんど置いていません。けれど、だからこそ「ふらっと立ち寄って、見るだけでも楽しい」「なんだか癒される」「ウキウキする」と言っていただける場所になっているのだと思います。そんな言葉をいただくたびに、本当に嬉しくなりますし、また来ていただけるように、心を込めてお店づくりをしていこうと思えます。私たちのお店は、外観も内装もすべてみずからでプロデュースしています。そのために国内外のお店を見てまわり、たくさんの学びを重ねています。商品選びも、「これをお客様に届けたい!」と心から思えるもの、そして私自身がワクワクするものを真剣にセレクトしています。流行っているからといって、自分の心が動かないものは仕入れません。
そして、どんなに建物が素敵でも、品揃えがよくても、スタッフの対応が感じが悪かったり、不愛想だったら、また来たいとは思っていただけませんよね。だからこそ、アミングが一番大切にしているのは「人づくり」です。
「自分がどんな人であれば、お客様に心地よく感じてもらえるか」
「お客様に喜ばれる人って、どんな人だろう?」
そうしたことを考えながら、思いやりや利他の心を育んでいけるよう、日々学んでいます。お互いを高め合う"共育"の文化を通して、私たちはお客様にも、スタッフ同士にも、温かい心で向き合える場所をつくっていきたいと思っています。
アミングは、郊外にお店を展開しているため、ご来店くださるのは地元に暮らす方がほとんどです。創業から40年が経ち、かつて小学生だったお子さんが中学生、高校生になり......と、お客様の成長を見られるのも、私たちの大きな喜びの一つです。
子どもの頃から長年通ってくださっているお客様が、大人になり結婚し、ある日、「赤ちゃんが生まれたんです!」と、抱っこして見せにきてくださったときは......もう、嬉しすぎて胸がいっぱいになりました。
こんなお話を届けてくださった方もいました。そのお客様は金沢に嫁ぎ、双子を出産されたばかり。知り合いもいない中、慣れない育児で心が塞ぎ、産後うつのような状態だったそうです。毎日、ベビーカーを押してお店の前を通るだけの日々。そんなある日、私が「ちょっと入っていきませんか?」と声をかけたことを、今でも覚えていてくださって──。
「2人の赤ちゃん連れで迷惑になるかも......と思いながらも、心が温かくなったんです。あのときの声かけが忘れられなくて。私は一生、アミングさんのファンです」と言っていただけたんです。私のほうこそ、ありがたくて、胸が熱くなりました。
こうしてお客様に支えていただきながら、私たちもまた成長させていただいている。アミングは、お客様と一緒に育ってきたお店なんだな、と感じています。

アミングは店舗によってデザインが異なり、いずれも西江社長ご夫妻みずからプロデュースしている。そのために製図を勉強したり、世界各国の多種多様なお店から学びを得ているという
"お母さん"から経営者へ。15坪の雑貨屋に込めた夢
もともと私は保育士でした。3年間勤めたのち、結婚と転居を機に退職。在職中は、公務員という枠の中で、自分の理想とする幼児教育ができないもどかしさを感じていたのですが、辞めてみると未練が残り、保育園の近くを通るたびに寂しい気持ちになったことを覚えています。子どもも授かって幸せいっぱいなのですが、「このまま"お母さん"としてだけ生きていくのか......」と、なんだか物足りない気持ちでいました。
そんな気持ちが後押ししてくれたのだと思います。子どもが1歳になった頃、義父が営んでいた漁網会社の工場移転に伴い、跡地を分割して貸し出すことにしたものの、15坪の一区画だけがまだ借り手がついていないというのです。義父から「何かやってみないか」と声をかけられ、反射的に「やります!」と答えていました。「何をやるのか」と聞かれて、「今から考えます」と答えたときの義父の驚いた顔──今でもよく覚えています(笑)。
あれこれ考えて、「子どもたちが集うファンシーショップをつくろう!」と決めました。高校時代によく通っていたお気に入りのお店のことが思い浮かんで、あんなふうに、子どもたちが毎日通いたくなるキラキラした夢の国のようなお店を、私もつくってみたいという思いがあふれてきたのです。
店の名前は、義父の漁網会社「Ami」に進行形の「ing」をつけて「アミング(Aming)」としました。当時、義父の会社は漁網だけでなく陸上用のネットも扱い始めており、"海から陸へ"と歩き出すタイミングでした。私たちがその流れをさらに進め、もっと発展させていこうという決意を込めた名前でもあります。
何も知らないって、ある意味すごいことですよね。私はまさに"ズブのド素人"。業界の常識もタブーもまったく知らないまま、大手の問屋さんにいきなり取引をお願いして玉砕したり、店内の什器ひとつ選ぶにも、何が正解なのかわからず......。今振り返ると、恥ずかしくなるくらい初心者丸出しのお店でした。
そんな中での唯一の取り柄といえば、当時は珍しかった「朝10時から夜10時まで」の長い営業時間、年中無休の営業、そして店舗前にフリーで停められる駐車場があったことくらい。
毎日勉強、七転八倒の日々を過ごしていました。中でも嬉しいことは、学校から帰った子どもたちが、毎日のようにお店に来てくれたこと。友だちが友だちを呼んで、どんどん広がっていって──。向かいにあったファミリーレストランのお客様が、食事の後に立ち寄ってくださり、お客様はだんだんと増えていきました。
「子どもたちが毎日集まってくるお店をつくりたい」。そんな私の最初の夢は、思っていたよりも早く、形になっていったのです。
幼稚園からシフトチェンジ。"働く女性のための学校"へ
幼児教育への思いはずっと心の中にあり、いつか幼稚園をつくりたいという夢を抱き続けていました。子どもたちにとって、保育園や幼稚園は初めて社会とふれ合う場所。その時間が温かく、楽しいものであれば、豊かな心が育ち、やがて社会全体にもよい影響をもたらす──そんな思いを持っていました。アミングを経営していく中で、たくさんの人と出会い、ふと気づいたことがありました。どんなに素晴らしい幼児教育があっても、母親の心がやさしくなければ、子どもは本当に健やかに育つことは難しいのではないか──。母親は子どもにとって最初に接する大人であり、一番身近な存在。その母親自身が笑顔でいることが、子どもの健やかな成長につながる。そう考えたとき、幼児教育だけでなく、母親自身が"輝ける場所""学ぶ場所"をつくることが、よりよい社会づくりにつながるのではないかと思うようになりました。
アミングのスタッフは99%が女性。子どもたちのために、私がすべきことは、子どもたちの心を育む環境をつくること。それは、"女性の心を育む"環境をつくることだと考えるようになりました。
「人に喜ばれる人」「人に愛される人」「一緒にいて心地よい人」とはどういう人なのか──その答えを探求し、心を育てる場をつくりたい。そんな思いから、アミングを"心を磨く学校"として、働くスタッフの学びと、心を育む会社へと進化させていく決意を固めました。
目指したのは、机上の学びではなく、仕事を通じて実践し、日々の経験を通して心を磨くこと。そのために、月に一度の「心の勉強会」を始めました。スタッフ全員が参加し、自分自身を振り返る機会を持つことで、日々の業務が単なる仕事ではなく、「人として成長する場」となっていくことを目指しています。
勉強会の後には、「自分と向き合う」ためのレポートを提出してもらいます。その内容にはすべて目を通し、スタッフの思いや悩みに寄り添う機会を大切にしてきました。今ではスタッフ一人ひとりが自分を磨き、互いに支え合いながら働ける文化が根付いてきました。
アミングでは「共育」が大前提です。誰かから学ぶだけではなく、共に学び合い、高め合う──。そんな文化を通して、お客様にも温かい心で接し、人が集い、成長していく場所をつくりたい。その思いは、今も変わることなくアミングの根幹にあります。

月に一度の「心の勉強会」では、共に学び合い、高め合う「共育」を実践
心の鍛錬を続ければ外見もキラキラと輝く
アミングでは、大切にしたい心のあり方を「11の理念」にまとめています。

理念をつくろうと思ったきっかけは、松下幸之助さんの本との出会いでした。夫婦で商売を始めた頃、義父がたくさんの本を渡してくれたのです。何冊も読み進めるうちに、企業には「正しい経営理念が必要だ」という言葉が深く心に響きました。当時は「理念」という言葉さえ馴染みがなく、毎日必死に本を読みながら学びました。
そうして最初に決めた理念が「あいさつ、掃除・整理整頓、笑顔、元気、感謝」。お客様が入店したときに「このお店、感じがいいな」と思うのは、スタッフのあいさつです。スタッフ同士も気持ちよくあいさつを交わせば、自然とお互いに頑張ろうと思える。これは「笑顔」にもつながる部分ですが、一人でも不機嫌な人がいると、店の空気はすぐに変わってしまい、お客様にも伝わってしまうものです。
次に「掃除・整理整頓」。お店はいつ訪れても気持ちよく過ごせる空間であるべき。だからこそ、整理整頓や掃除を徹底し、お客様に心地よい時間を提供できるようにしています。そして、日々心も美しく磨くことです。
「素直であること」。幸之助さんの『素直な心になるために』を何度も読み返す中で、その重要性を強く感じました。素直な心とは、単に人の意見に従順になることではなく、異なる考えにも一度耳を傾け、「そういう見方もあるんだな」と受け入れること。仕事でも家庭でも、そうした姿勢を持つことで成長できると実感し、理念に組み込みました。

お客様に心地よい時間を提供できるよう、アミングではあいさつ、掃除・整理整頓、笑顔など「11の理念」を大切にしている
そして何より、「感謝の心」です。朝目が覚めること、健康で働けること、そうした日常のすべてが当たり前ではなく、奇跡の連続なのだと考えています。筋肉を鍛えなければ強くならないように、心も磨き続けなければ美しくはなりません。毎日意識し、行動し続けることで、10年後には内面も外見も変わるのです。アミングのスタッフも、年を重ねながらも以前よりキラキラと輝いてきています──心を磨くことが、外見にまで影響を与えるのだと感じています。
私の夢は、そのような「心を磨く学校」を全国各地につくること。多くの女性に、少しでもアミングの理念を学び、自分自身を輝かせてほしい。一隅を照らす人が増えれば、集まった光はさらに強くなる。最澄の言葉「一隅を照らす 此れ則ち国宝なり」のように、そんな人たちが増えていけば、まさに"国宝"ですね。そう胸を張って誇れる会社をつくっていきたい──それが、私の使命だと思っています。
取材・構成:長尾梓 写真提供:アミング
本記事は、電子季刊誌『[実践]理念経営Labo』Vol.14から転載したものです。登録不要、全編無料でお読みいただけますので是非ご覧ください。





































































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