自分流の質問でコーチング
2012年11月30日更新
コーチングにおける「質問のスキル」について、通信ゼミナール『コーチング実践コース[質問スキル編]』から学ぶシリーズの第2回。自分なりのコミュニケーション・スタイルをつくることについて解説しています。
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フレーズにこだわっていないか
コーチングに取り組んでいる管理職の中には、「質問の仕方を学んだが、実践ではなかなか活かせない」「質問してもコミュニケーションがうまくいかない」と感じている方が少なくありません。それと同時に、「もっといろいろなパターンの質問を教えてほしい」という声も聞かれます。
私自身、これまで、著書やコーチングの研修などで、コミュニケーション能力を向上させるための方法について、さまざまな方法を提案してきました。
たとえば、メンバーに対してメッセージを伝える際、一つの方法ではなく、いくつかのパターンを使い分けられるよう質問のパターンを紹介したり、コーチングのステップに合わせたコミュニケーションの事例を挙げてきました。
しかし、職場や組織の中には、さまざまな人がいて、コミュニケーションのとり方もさまざまです。本コースでも、いくつかの事例を挙げながら、紹介していきますが、これらはあくまでも個人一人ひとりの状況に合わせてバリエーションを増やすためのヒントなのです。
しかし実際には、そうした事例に使われたせりふをそのまま現場で使ったけれどうまくいかなかったという場合もあります。これではコミュニケーションの幅を広げることにつながっていません。
「質問の仕方を学んだが、実践ではなかなか活かせない」「質問してもコミュニケーションがうまくいかない」という声をよく耳にしますが、学んだフレーズをそのまま使っている場合が少なくないはずです。
自分流を見つけて実践することが大事
職場に限らず、質問の仕方がうまいなと感じる人を見かけたことはないでしょうか。しかし、みんながみんな生まれつき、コミュニケーションが上手であったり、問いかけ方がうまいという人とは限りません。経験を積み重ねていき、あとで振り返ってみて、新しい可能性がないかなと考え、試していく中で、問いかける力に磨きがかかるものです。
コミュニケーションのとり方や、コーチングについての本を読むと、確かに、部下とのコミュニケーションをとれるようになるための答えらしきものが書かれているように見えます。しかし、それらすべてが必ずしもあなたに当てはまらないこともあるでしょう。その意味でも、あなた自身に合った答えを導き出すためには、本なども参考にしながら、答えを自分で考え、そして実践することが大切です。また、自分で考え実践することこそが、能力開発の醍醐味と言えるのではないでしょうか。
声の響き、顔の表情などを意識する
自分なりのコミュニケーション・スタイルをつくるために、部下への問いかけ方や具体的なフレーズを本などから学ぶことは、確かに大切です。
しかし、問いかける言葉だけでなく、そのときの動作や表情など、ノンバーバル(非言語)な部分を意識したコミュニケーションは、言葉だけでは伝わらないことを相手に伝える重要な手法です。
同じメッセージであっても、声の響きによって相手の受けとめ方は異なりますし、言葉にはあらわれなくても表情で伝わることのほうが、相手の心理に効果的に作用する場合も少なくありません。
部下の可能性を引き出すためには、TPOに合わせて、さまざまなコミュニケーションの手法を用いたり、提案することも大切です。
本間正人 ほんままさと
NPO法人学習学協会代表理事、帝塚山学院大学客員教授
東京大学文学部社会学科卒。松下政経塾第3期生。
ミネソタ大学で成人教育博士号(Ph.D.)を取得。
米国Coach UniversityのCTP課程を日本人として初めて修了。
教育学を超える「学習学」を研究する一方で、国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ、NPO法人日本コーチ協会理事として、日本でのコーチングの普及を目指す。
著書は『ケーススタディで学ぶ「コーチング」に強くなる本』、『コーチング一日一話』(共著)、『適材適所の法則』(ともにPHP研究所)など多数。
http://www.learnology.co.jp
通信ゼミナール
『コーチング実践コース[質問スキル編]』
管理職・監督職の方を対象にして、コーチングスキルの中でも特に活用の場面が多い「質問のスキル」を中心に、コーチングの考え方やコミュニケーションのとり方を学ぶコースです。培った知識を実践に活かし、自身に合った部下指導のレパートリーを広げることができます。