DJポリスに学ぶ伝え方【コラム】~國弘隆子
2013年8月22日更新
皆さん「DJポリス」という言葉をお聞きになったことはおありでしょうか。サッカー日本代表がサッカーワールドカップ出場を決めた夜、渋谷のスクランブル交差点でユーモアを交えた話術で誘導にあたった警視庁機動隊員に対する愛称です。
講師として、周囲を巻き込む伝え方、部下のモチベーションを上げる伝え方等をお伝えする立場にある私も、当日SNS上へ投稿されたDJポリスの発言の巧みさに感動しました。
「怖い顔をしたお巡りさんも、心の中ではW杯出場を喜んでいます」
「お巡りさんもこんな良き日に怒りたくはありません。ゆっくりと駅へ進んでください」
「皆さんは、12番目の選手です。チームワークをお願いします」
「日本代表チームの選手たちはルールを守りますよね。12番目の選手の皆さんもルールを守って安全に帰ってください」
など、相手の立場に立ち、心を捉える一言を発しています。
上のふたつの文章は、自分自身を主語にして自己の思いを伝える「Iメッセージ」が効果的に用いられています。
「暴れないでください」「信号を守ってください」という相手を主語にしたYouメッセージを発していた時には起こらなかった拍手や、「は~い」という肯定的な返答を得ています。
声の掛け方により、人の反応が変化する良い例です。
下の2文は、サッカー日本代表と同じユニフォームを着用し、サッカー日本代表を愛する人々が必ず「Yes」と言える表現を用いています。
私たちは機動隊員ではありませんが、この視点は職場で応用できそうです。
Iメッセージを用いて自分の思いを示せば、相手は違う反応を示すでしょう。目の前の人たちの立場に立った言葉を選択すれば「Yes」という心境を導き出せるでしょう。
ただ、巧みな話術だけに目を奪われていてはいけない気がします。
人々がこのお巡りさんの言葉に従おうと思ったのは、嘘が感じられなかったからではないでしょうか。日本代表を応援する気持ち、目の前の人の安全を願う気持ちに偽りがないことが目の前の人に伝わったから、人々はこのお巡りさんのことを称賛したのでしょう。
私心なく、相手の立場に立ち伝える大切さを再確認させてもらったエピソードでした。
【講師プロフィール】
國弘隆子 くにひろ たかこ
1984年、大阪大学医学部神経薬理生化学教室 教授秘書として勤務。退職後、94年、フリーアナウンサーとして活動を開始。98年、研修講師として独立し、翌年、(有)Office Creationを設立。現在、PHPゼミナール講師。
PHPビジネスコーチ(上級)、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、NLPマスタープラクティショナー。
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