OJTの課題と進め方
2011年11月 7日更新
上司にとってOJTは目の前にある仕事に即して指導ができ、ときには手本を示すことも可能です。一方、指導を受ける部下にとっても、不明な点や納得できない点があれば、その場ですぐに相談できるというメリットがあります。
OJTとはつまるところ“現場で人を鍛えること”といえます。
また、OJTは上司と部下のコミュニケーションそのものであり、職場のモチベーションや人間関係、さらには仕事の成果そのものにも影響を及ぼすものです。
OJTには次の6つの基本ステップがあります。
ステップ1:育成方針の提示
「育成方針の提示」とは、上司が中心となって決めた方針を部下たちに提示することです。この育成方針というのは、階層や職種に応じて会社が個人に求めている能力・スキルレベルのことです。
ステップ2:育成ニーズの検討
部下の経験年数、現在もっているスキルや能力、ここ1年(半年)の成果、適性、意欲などは、一人ひとり異なっています。したがって、OJTの推進に当たって上司は、部下一人ひとりの個別育成ニーズを検討する必要があります。そして、その個別育成ニーズは部門の育成方針とリンクしたものでなければなりません。
ステップ3:個人面談の実施
上司なりに個別育成ニーズの検討が終われば、次に部下一人ひとりと面談に入ります。まず一緒に昨年(半年)の仕事ぶりを振り返り、成果や反省点などの意見交換を行います。このとき、昨年(半年前)に作成したOJT推進計画表などを参考にするとよいでしょう。
次に上司の考える今年の育成ニーズや重点課題などを話し、それに対する部下の考えを聞きます。そのとき、上司の考えを一方的に押し付けるのではなく、部下の希望や要望、疑問点にも耳を貸し、二人の考え方をすり合わせ、お互い納得して、これから1年間(半年間)の育成の方向性や重点課題を明確にしていきます。
ステップ4:実施計画の立案
実施計画については、まず部下自身に目標プランを提出させます。そのプラン内容には、「重点課題」「具体的内容」「目標レベル」「現状レベル」「具体的な達成方法」「スケジュール」などを漏れなく記入させます。それを詳細に検討し、話し合い、最終的な実施計画を部下自身に作成させます。
ステップ5:指導と記録
計画がいくら立派でも、中身が伴わなければOJTの効果は上りません。OJTは“気がついたとき、すぐにその場で”とも言われていますが、これは場当たり的な指導でよいということではありません。仕事ぶりをみるためのチェックリストなどを作成し、効果的に活用することによって、“気がついたとき、すぐにその場で”も、より実践しやすくなります。
また、このようなチェックを続けることによって、OJTに対する自覚が高まるとともに、指導スキルの向上にもつながります。
ステップ6:成果の相互確認
私たちが仕事をするうえで、PDCAサイクルを意識せよといわれます。この管理サイクルを意識しながら回していくことで仕事が円滑に進み、業務遂行能力も向上していくのです。
このPDCAサイクルは、上司がOJTを推進するときにも役立ちます。つまり、しっかりと育成の計画を立てて根気よく実践し、途中でチェックを行いながら期間が終了した時点で振り返るという流れです。
PDCAサイクルのなかでもっとも重視したいのが、Check・Actionの段階です。一定の期間が終わったあと振り返りをしっかりと行うことによって、部下は成長します。またOJTを実践する上司にとっても自らが成長する機会となります。まさに「共育」なのです。
「何の能力が、どれくらい向上したか」「目標レベルに到達したものは?」「目標レベルに達しなかったものは?」「達しなかった原因は何だろう?」といった点を振り返りながら意見交換します。そして、そこで出てきた課題・問題点などを次のOJ推進計画表を作成するときに役立てます。
ステップ1~6を着実に実践していくことで、部下の成長を促すとともに、上司自らも新たな気づきや指導スキルの向上を図れるよい機会となります。まさにOJTは部下育成の基本でありながら、「共育」ともなり得るのです。
株式会社PHP研究所 教育出版局編集長 平井克俊